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ウソつき賢者の領地再建 ―クスッと笑える!?、勘違い領主コメディ(復讐から始まったはずなのに……)―  作者: 秋月心文


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領主、落とし穴を量産する

 疫病が発生した町へ向かう。


 場所は一番下流の町。

 よりによって一番遠い。


 症状は激しい下痢と嘔吐。

 咳はない。


 うん。

 中世ヨーロッパで、水道が未整備だった頃に流行した伝染病っぽい。

 水を介して感染するタイプだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 領主の体は、早馬の経験もあるらしい。


 馬をガンガン飛ばせる。


 いいね。


 エリナは怖くないのかな。


 すやすや眠っている。


 安心してくれているのかもしれない。


 ◇ ◇ 問題のあった町 ◇ ◇


 数日かけて現地へ到着した。


 町のあちこちから、ひどい悪臭が漂っている。



 町の人が道端で立ち止まり、そのまま用を足し始めた。


 家にトイレがなく、道端で済ませているらしい。


 うわぁ……。



 きれい好きな人は川で済ませているようだ。


 ……って、おまえら、飲み水もその川からじゃないんかい!



 川まで行ってみると、こちらも悪臭がひどい。


 案の定、水も汚れていた。



 これ、伝染病が起きるべくして起きてるよな。


 根本的な対策が必要だ。


△.きれいな飲み水の確保

□.清潔なトイレの設置

〇.トイレで用を足す習慣を広める

×.排泄物の処理方法を確立する


 必要なのは分かる。


 でも、具体的にどうすればいい?


 しかも、習慣づけまで必要とは予想していなかった。


 今すぐ何とかできる話でもない。


 まずは応急処置だ。


 きれいな飲み水も大事だ。

 だが、それより先に病人を助けなければならない。


 病気そのものへの対処から考えよう。


 うーん……。



「この領内では、どんな病気もすぐ治る」


 澄んだ音が脳内に響いた。


 成功だ。


 すぐにリキャスト音も鳴った。



 なら、もう一丁。


 病気は治せた。


 次は原因を断たなきゃならない。


「領内の全ての家庭に、井戸がある」


 澄んだ音が脳内に響いた。


 成功だ。


 これで、飲み水には困らない。



 そう思った矢先、悲鳴が聞こえた。


 急いで駆けつける。


「どうした?」


「急に変な穴ができて、母さんが落ちた!」


 え?


 各家庭の前に、大きな穴ができていた。


 えぇ?



 石を落としてみる。


 ポチャン。


 水の音がした。


 あぁ、これが井戸か。


 俺の知っている井戸には囲いがあったんだけど……。


 まずは村人たちと協力して、落ちた人を助け出した。



 穴の底には、きれいな水がある。


 ここから水をくんで使うんだ。


 そして、穴の下には、きれいな水がある。


 ここから水を汲んで使うんだ。



「これは井戸だ」


「イド?」


 そこからかぁ……。


 桶にひもを付けて投げ込み、水をくむ様子を見せる。


「おぉ……」


 歓声が上がった。


「川まで水をくみに行かなくていいのか」


「汚れた水もここへ捨てられるね」


「ここで用を足せば家もきれいになる」


 ちょっと待てぇぇ!



 水を汲む場所 = 汚水を捨てる場所


 っていう、変な常識がついてるみたい。


 これは、困った。



 こりあえず村人には、


 ・ここは、水汲み専用。


 ・汚水を捨てちゃダメ。

 

 ・用を足すのも禁止。


 と説明した。



 一応、納得してくれたようだけど、ちょっと怖い。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 領主館に戻ると、至急、代官たちを呼び寄せました。


 ① 領主が各家庭に井戸を作った。


 ② 桶とひもで水をくむこと。


 ③ 井戸には汚水を流さないこと。


 ④ 用を足さないこと。


 それを、


 代官→近くの村長→遠くの村長


 という流れで伝えてもらう。


 識字率が低いので、口伝えしか方法がない。


 ……だが、人づての伝言を甘く見ていた。


       ↓


 ① 領主が各家庭に危ない落とし穴を作った。


 ② 穴の底には水がある。


 ③ 何かを落とすと罰せられる。


       ↓


 ① 領主が危険な落とし穴を作った。


 ③ 何かを落とすと罰せられる。


       ↓


 ① 領主が各家庭に落とし穴を作った。


 最終的に伝わったのは、


「領主が各家庭に落とし穴を作った」


 ……それだけだった。


 なんでだよ。


 俺、ただの悪者じゃん。


 実際に落ちた人もいるから、完全には否定できないんだけど。


 俺の悪名は、また一段と高まった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 さらに代官たちには、各町や村へ公衆トイレを設置し、費用は領主館へ請求するよう伝えていた。


 その公衆トイレが、なぜか大好評らしい。


「領主様のおかげで毎日スッキリです!」


「ありがとうございます!」


「みんなで使わせてもらってます!」


 なぜか男性からの評価だけ異様に高い。


 あまりの好評ぶりに視察へ向かった。


「領主様には、おすすめしません」


 止められた。


 なんで?


 制止を振り切って中へ入る。


 おぉぅ……。


 小便器に、俺の顔が描かれていた。


 俺の顔を狙って用を足すのが、大人気なんだそうだ。


 どうやら住民との距離は縮まったらしい。


 いろんな意味で。

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※※ 次回 6/24 21:00 公開 ※※

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