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団子屋

 散歩がてら団子屋に来た。


 客と団子屋の亭主が話していた。

「不本意なんですよ。でも、僕は犬なんです」

「…お客様が犬?」

「ほら、ここ見てくださいよ。犬のページ」

 男は亭主に『動物図鑑』を開いて指さした。

 亭主は首を傾げてから、老眼鏡を掛けた。

「あ、コリーの隣の図は確かにお客様ですね。…えーと、50歳前後、足のサイズが27.5cm、慢性アレルギー性鼻炎があって…」

「ほら、そこに書いてるホクロの位置も同じですし、そもそもその図は社員旅行の時の僕の写真ですから」

「なぜ、こんな事に?」

「犬の定義が変わったんですよ。ほら、紀州犬の隣も人ですし。…まぁ、今となっては犬ですけど」

「全く、世の中どうなってしまったんでしょうね。しかし、お客様が犬なら店に入られては困りますよ」

 客は首を横に振って、亭主に『犬の玩具大百科』を開いて見せた。

 亭主はそのページをジッと見て、溜め息をついた。

 そして亭主は右手を客に咥えられながら、店を出ていった。


「最近、よくあるんですよ」

 団子屋の奥さんが私に言った。

「どういう事ですか」

「定義が変わったとか言って、店をサボるんです」

「…そうなんですか」


 私はショーケースをノックした。

 草団子の隣にいる近所の浪人生は、黙って私を見上げるだけだった。

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