信号待ち
ランチ帰りに課長と横断歩道の前に立っていると、ドサッと音がして課長の横に人が落ちてきた。
「お、ホモ・プランタだ」
課長がそう言うと、その人は恥ずかしそうに信号機を登っていった。
「課長、お互い怪我が無くて良かったですね」
見上げると、信号機の上にはホモ・プランタの四人家族がいた。落ちてきたのは、どうやら父親で、家族から怒られていた。
ホモ・プランタとは、進化の過程で木の上に戻った人類である。
それは電柱や街灯の上にもおり、電線を上手く伝って移動した。
見上げると彼らの足の裏が見える為、彼らには足の裏という意味のプランタという名前が付いていた。
課長が言った。
「今月、二人目だよ。落ちてくるの」
「ホモ・プランタは、上から私達のつむじを見ている内に、目を回して落ちるらしいですよ」
「俺のつむじ、そんなに渦巻いてるかな」
「課長がハゲてない証拠ですよ」
「そうかな」
「そういえば、最近のホモ・プランタはマンション住まいも増えてるらしいですね」
「2階以上なら、問題ないらしいからな」
「まぁ、悪い事とは思わないですけど、信号機や看板の上からホモ・プランタがいなくなるのは、何だか寂しいですよね」
「そうだな。昔ながらの景色が無くなっていくな」
そう言って、課長は自らのつむじをポリポリと掻いた。
信号が青に変わった。
四人家族の足の裏が青く照らされるのを見てから、私達は横断歩道を渡り始めた。




