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変身

「商品開発部のスズキ部長、退職して湘南の海に行ったらしいぜ」

 スズキ部長が置いて行ったサーフボードを見つめながら同僚が言った。


 スズキ部長は人から魚に変身した上司だった。

 若い頃は口元が魚に似ているだけだったが、それを気に入って魚を意識し続けたところ、徐々に尾ビレや背ビレが生えてきたのだと、以前スズキ部長が話してくれた。


「俺達が入社した時は、まだウェットスーツを着てたから三魚人ぐらいだったな。時が経つのは早いもんだ」

「そうだな。一番世話になったのは確か四魚人…否、半魚人の頃だったかな」

「俺が先週見た時は、もうピチピチ跳ねてたから、ありゃあ九魚人も終盤で、いよいよって感じだったよ」

「…スズキ部長は夢を叶えたんだな」

「そうだよ、だってスズキ部長は今が旬だろ」

「うん、一番脂が乗ってるタイミングで湘南の海へ行きたいってずっと言ってたもんな」

「憧れるよ、セカンドライフ」

「そうだな、ホント羨ましい」


 そうは言ったが、私にはまだ自分のセカンドライフの事など想像も出来ないのだった。

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