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ニックネーム

「高血糖はそう思うぞ」

 同僚が常務の口振りを真似して言った。

「おい、やめろよ。常務に聞こえるだろ」

「やっぱ、駄目かな。しかし常務は時代錯誤な所があるよな」

 同僚はニヤニヤと笑った。


 先週から、常務は何に感化されたのか、社員にニックネームを付け始めたのだ。

 しかし、それが「ネクタイ」「横分け」「ワイシャツ」「革靴」等だった為、常務が誰かを呼ぶ度に、皆自分の事だと思って振り向いた。

 混乱する私達に常務は諭す様に言った。

「それでいい。個性的な者など風紀を乱すだけだからな。没個性こそ会社員の美徳なんだよ。会社員なんて、何度会っても『はじめまして』と言われて一人前なんだ。高血糖はそう思うぞ」


 常務は自らを「高血糖」と呼んでいた。

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