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砂漠

 私はいつもの様にラクダに跨った。


 この町は2丁目だけ満遍なく砂漠なのだ。

 私は毎朝通勤の為、砂漠の2丁目を越えて、駅のある1丁目へ行かなければならない。

 勿論、徒歩で行く事もできるが、そんな事をすると革靴の中が砂だらけになり、現実的ではない。


「あ…」


 砂漠の中に出勤の身支度をする部長が浮かび上がった。

 その姿は私の幻覚などではなく、遠く隣町の自宅にいる部長が光の屈折で、すぐそこに見えているだけなのだ。

 2丁目において、それは取り立てて珍しい現象ではない。

 つまり、部長は蜃気楼だった。


 そして、見るつもりは無かったが、部長の右の靴下の親指の所に穴が空いているのを私は見てしまった。

 今晩、部長には接待の予定が入っている。確か、店は座敷のはずだ。

「…これは不味い事になったぞ」

 私は部長に靴下を履き替える様に伝えないといけないが、蜃気楼とはいえ、プライベートを覗き見たとはとても言えない。

 どうするべきか。

 私はラクダに揺られながら考えていた。


 駅のある1丁目が近付いて来た。

 未だ妙案は出ない。

「どうすればいいんだ!」

 私はラクダのコブに顔を埋めた。


 獣臭くて、頭がおかしくなりそうになった。

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