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ヘッドハンティング

 喫茶店の端の席で、国土交通省の男は切り札を出した。

「うちの一級河川に来てもらえれば、副河童のポストで活躍して欲しいと考えています」

「いきなり副河童ですか…」

「あなたが今の会社を愛している事は十分に分かりました。しかし、悪い話ではないでしょう」

 確かに副河童となれば、次期河童の最有力候補である。


 私は人生の岐路に立っていた。


「一応、確認ですが、副河童も頭に皿を乗せるんでしょうか?」

「ああ、それなら心配には及びません。頭に皿を乗せて甲羅を背負うスタイルなんて、日本人がちょん髷で着物の時代の話です。もう、そういうのありませんから。…あ、逆に乗せたいですか?」

「いえいえ」

「ただ、副河童も河童に準ずる形で、くちばしと水掻きはあります。しかし、何の不自由もありませんよ」

「…私は以前、くちばしになると髭剃りに酷く手こずるという週刊誌の記事を読んだ事があるんですが…」

「それはその…」

 男は急に口籠り、残りのコーヒーを飲み干した。


 結局、私は誘いを断った。

 実のところ、副河童の重責に耐えられる自信がないというのが本音だった。


 喫茶店を出ると、外は雨になっていた。

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