前へ目次 次へ 62/63 背中 取引先の部長が、ネクタイを緩めた。 「しかし暑いな」 そう言うと、部長は振り向いてジャケットを脱ぎ、椅子の背もたれに掛けた。 『あっ!』 私は見逃さなかった。 部長のワイシャツの背中が汗で張り付き、下に着ているTシャツが透けているのを。 そして、そのTシャツには大きく“係長”とプリントされているのを。 そう、それは紛れもなく係長Tシャツだった。 『この人は部長じゃない…係長だ!!』 風が吹いた。 どこかで風鈴の音がした。 今年の夏は、もうすぐそこまで来ている。