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社員証

 整髪料と櫛を持ったまま妻に尋ねた。

「どうかな?」

「んー、悪くないけど、まぁ限界があるわよね。あなたナスの揚げ浸しじゃないんだから」


 社員証が更新され、顔写真も新しくなった。

 しかし、作成時の手違いか心霊写真か分からないが、私の頭の上半分が、なだらかにナスの揚げ浸しになっていたのだ。

 眉の少し上に飾り包丁が入っており、そこから先には鰹節としっとりとしたナスのヘタがあった。綺麗な紫色で照りも旨そうだった。


 私は総務に苦情を言ったが、『それは、あなたのカルマです』と突き返されてしまった。

 色々と思案したが、結局、私自身が社員証に近付くしかないという結論に達したのだ。


 妙な髪型の私は肩を落として家を出た。

 通勤の電車内を見渡すと、切り干し大根や筑前煮みたいな髪型のサラリーマンがいた。皆、同じ事情なのかも知れない。


「おたくもカルマですか?」

「ええ、カルマです。お互い大変ですね」

 私は隣で吊り革を持つ鯵の南蛮漬けの男と朝から慰め合った。

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