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パン

 午後の会議まであと15分。

 同期入社が会議資料で口元を隠しながら小声で言った。

「経理部長が入院したらしいぜ」

「何で?原因は?」

 私も慌てて口元を隠した。

「パンだよ」

「パン!?『ジャムを肴に食パンをチビチビやるのがいいんだよ』って言ってたから、パン好きなのは知ってたけど、そこまでとは…」

「毎晩一斤は食べてたらしいぜ」

「そりゃ、多いよ」

「パン癖も悪かったらしいんだ。実際、『パンさえ食べなければいい人なのに』っていうのが周囲の評価だったらしい」

「パンは恐ろしいな」

「最近では朝から焼き立てパン臭かったらしいぜ」

「何でそんな事になっちゃったんだろうな」

 同期が更に顔を寄せた。

「ここだけの話、奥さんが浮気して離婚したんだよ。それからパンの量が増えたらしい」

「浮気で離婚?それは気の毒だな。何かパンに逃げる気持ちも分かるわ」

「だよな。きっと離婚の傷を乗り越えるのは、並大抵の事じゃないんだろう」


 会議の後、私達は経理部長のお見舞いの計画を立てた。

 差し入れは美味しいご飯に決めた。

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