97話 短縮授業
教室へ入ると、クラスメイトたちが特別授業の予定について話していた。
「俺、今日の特別授業、中止になったんだよ」
「いいなあ……じゃなくて、残念だったな」
「全然よくないよ。楽しみにしてたのに」
別のクラスメイトも携帯の画面を見せながら、ため息をついた。
「俺なんて来週に延期だって。先生が急に体調不良になったらしい」
「特別授業って、決まった時間割じゃないのか?」
主人公が尋ねると、クラスメイトは首を横に振った。
「担当の先生の都合で、けっこう変わるらしいぞ。会議とか出張とか、体調不良とか」
「へえ……中止になることもあるんだな」
主人公は少しだけ期待した。
自分の特別授業も、突然中止になるかもしれない。そうなることを期待した。
主人公の携帯端末に、こども家庭庁のおねいさんからメールが届いた。
『本日の特別授業は、時間を30分に短縮します』
「よっしゃあ!」
主人公は思わずガッツポーズした。
毎日長すぎる特別授業が、今日は短い。これほど喜ばしい知らせはない。
ところが、指定された部屋へ行ってみると、おねいさんは机に突っ伏し、お腹を押さえていた。
「うう……来たわね」
「めちゃくちゃ体調悪そうですけど。今日は休みにしましょうよ」
「他の人なら休みにするところだけど、あなたは特別よ」
「そんな特別扱い、いりません!」
主人公が即座に断ると、おねいさんは顔を上げた。
「文句を言わない!」
「体調悪そうな人に休んでくださいって言っただけなのに、なぜ怒られるんですか!」
「あなたは特別だからよ。」
「だけど今日は体調がよくないから、特別授業は三十分だけよ」
担当のおねいさんは、いつもより青い顔でそう告げた。
今日は手と口だけよ。特別授業が始まってしばらくすると、主人公は彼女から細いヒモのようなものが見えていることに気づいた。
どうやら生理用品の一部らしい。
主人公も過去の世界で、生理のつらさに苦しめられたのだった。
「無理しないで、今日は休んだほうがいいんじゃ……」
心配して声をかけたのだが、おねいさんは眉をつり上げた。
「余計な気を回さない! 授業に集中しなさい!」
「心配しただけなのに!?」
結局、特別授業は予定どおり三十分で終了した。
「今日はここまで。もう帰っていいわ」
「お大事にしてください!」
主人公は心配そうな顔をしながら家を出た。
そして扉が閉まった瞬間――。
「三十分で終わった! やったー!」
廊下で小さくガッツポーズした。
心配は心配。
それはそれとして、授業が短いのはうれしかった。




