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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
転生したら男でした。

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96話 職権乱用

主人公の嫌な予感は、見事に的中した。


特別授業は、想像していた以上の地獄だった。


初回の説明を終えた先生は、スケジュールを主人公の携帯に送ってきた。


「基本的には、毎日二時間ね」


「毎日?」


「進み具合が悪ければ三時間」


「学校の授業が終わったあとに?」


「もちろん」


先生は、何を当たり前のことを聞いているのかという顔をしていた。


しかも、授業が行われる場所は学校ではなかった。


先生の自宅だった。


放課後になると、主人公は電車に乗り、先生の家まで通わなければならなかった。


幸い先生の家は駅の近くだった。


だが、到着するころには夕方である。


そこから二時間、長い日には三時間。


授業が終わって家に帰るころには、すでに夜遅くなっていた。


学校の宿題もある。


試験勉強もしなければならない。


風呂に入り、夕食を食べ、翌日の準備を終えるころには、日付が変わりそうになっていた。


「これ、本当に毎日続けるんですか?」


「国家試験に合格したくないの?」


「そういう問題じゃなくて、体力がもちません!」


「若いんだから大丈夫よ」


大丈夫ではなかった。


一週間もすると、主人公は授業中に居眠りするようになった。


担任に注意され、事情を説明しても返ってきた言葉は冷たかった。


「特別授業も学校教育の一環です。自分で時間を管理してください」


「一日の時間を増やす方法を教えてください!」


当然、そんな方法はなかった。


さらに恐ろしいことに、学校の連休前には、お泊まり授業まで用意されていた。


金曜日の放課後から先生の家へ行き、そのまま泊まり込みで授業を受けるのである。


「晩から朝まで勉強できるわね!」


先生は楽しそうに言った。


主人公は青ざめた。


「連休って、休むためにあるんですよね?」


「特別授業を集中して進めるためにあるのよ」


「この世界では連休の意味まで違うのか……」


お泊まり授業の日程表には、夕方授業、夕食、深夜授業、復習、確認試験、朝食と、隙間なく予定が書かれていた。食事は先生が作ってくれた。


自由時間は、食前、食後、入浴前の各三十分で、確認試験まで終わると先生と大きいベットで寝ることができるのであった。


しかも先生は、授業以外でも主人公を頻繁に呼び出した。


休日の朝、主人公がようやく眠れると思っていると、携帯が鳴る。


「今から買い物に行くから、駅前に集合ね」


「今日は特別授業の日終わったばかりですよね?」


「買い物の中にも学ぶことはあるの」


「何を学ぶんですか?」


「荷物の持ち方とか」


「それは授業ではなく、ただの荷物持ちです!」


別の日には、遊園地へ連れていかれた。


「今日は人の多い場所での実地学習よ」


「先生が遊びたいだけでしょう!」


「観察力を鍛える大切な授業です」


そう言いながら、先生は主人公に飲み物と荷物を持たせ、自分は楽しそうにアトラクションの案内表を眺めていた。


主人公が断ろうとすると、先生は決まって同じ言葉を使った。


「参加しないなら、国家試験の受験許可を出せないかもしれないわね」


その一言を出されると、主人公は何も言い返せなかった。


国家試験を受けられなければ、特別授業を修了したことにはならない。


この世界では、将来の進学や就職にも影響し、合格できなければ神の世界に行くことになり断ることができなかった。


つまり先生は、主人公の将来を人質に取っていた。


「それ、脅迫ですよね?」


「指導よ」


「言い換えても脅迫です!」


先生の呼び出しは、曜日も時間も関係なかった。


学校から帰る途中。


夕食を食べている最中。


ようやく眠ろうとしている夜。


携帯に先生の名前が表示されるたび、主人公の心臓は大きく跳ねた。


しかも、主人公には彼女との時間も必要だった。


特別授業の予定が入っていない僅かな空き時間には、彼女とのデートが待っている。


「今週こそ、ゆっくり会えるよね?」


彼女からそう聞かれ、主人公は予定表を確認する。


土曜日の午前中は学校。


その後、先生の自宅でお泊り特別授業。


そのまま一緒に日曜日の朝から昼に先生と買い物。


夕方から彼女とデート。


月曜日からは、また学校と特別授業だった。


「夕方からなら会える」


「また夕方だけ?」


「ごめん……」


「最近、先生との予定ばかりじゃない?」


彼女の声には、明らかに不満が混じっていた。


主人公だって、彼女と過ごしたかった。


しかし、授業を休めば国家試験を受けられないと脅される。


彼女との約束を断れば、二人の関係が悪くなる。


どちらを選んでも、主人公の精神が削られていった。


学校。


特別授業。


先生からの呼び出し。


彼女とのデート。


宿題。


試験勉強。


主人公の予定表には、一つの空白もなかった。


以前は、放課後に家でのんびり過ごす時間があった。


休日には、昼まで眠ることもできた。


だが今は、一人で何もせずに過ごす時間が一分もない。


ある日の昼休み。


主人公は机に突っ伏し、動かなくなっていた。


「大丈夫か?」


クラスメイトの男子が心配そうに声をかける。


「昨日は何時間だった?」


「三時間……」


「俺は一時間だったぞ」


「一時間?」


主人公はゆっくりと顔を上げた。


周囲の男子たちに話を聞くと、ほとんどの生徒は月に二、三回、一回一時間程度しか授業を受けていないという。一回30分というクラスメイトもいた。


泊まり込みの授業など、一度もないらしい。


買い物や遊園地に呼び出されている生徒もいなかった。


主人公は震える手で、自分の予定表を机の上に広げた。


それを見た男子たちは、一斉に黙り込んだ。


「……これ、本当に授業なのか?」


「俺も最近、分からなくなってきた」


「先生、お前を担当したとき、ものすごく喜んでいたよな」


「思い出させるな……」


くじ引きの日の、先生のガッツポーズが頭に浮かぶ。


あのとき先生は、宝くじにでも当たったかのように喜んでいた。


主人公は、ようやく理解した。


自分は大外れのくじを引いたのではない。


先生にとって、自分こそが大当たりだったのだ。


その日の放課後。


主人公の携帯に、先生から新しいメッセージが届いた。


『今週末は一泊二日の特別集中授業です。着替えを忘れないように』


主人公は無言で画面を見つめた。


続いて彼女からもメッセージが届く。


『今週の日曜日、一日中デートできるよね?』


主人公は二つのメッセージを交互に見た。


そして、机に額を打ちつけた。


「俺の休日は、いったいどこに消えたんだ……」


教室に、主人公の悲痛な声が響いた。


特別授業が始まって、まだ1か月。


国家試験までは、最低でも1年以上残っていたが、1年たっても受けさせてもらえるか不安だった。

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