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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
転生したら男でした。

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94話 初めてのデート

転生後、主人公は初めて彼女とデートすることになった。


待ち合わせ場所へ向かうと、彼女はすでにベンチに座って待っていた。


主人公を見つけるなり、ぱっと笑顔になる。


「遅い!」


「まだ待ち合わせの十分前だろ!」


「彼女より後に来た時点で遅刻なの」


「そんな独自ルール聞いてない!」


いきなり理不尽だった。


彼女は楽しそうに笑うと、主人公の隣に並び、じっと顔を見上げた。


「それにしても……」


「なんだよ」


「やっぱり顔だけはいいよね」


「だけって何だ、だけって!」


「背も高いし」


「お、珍しく褒めたな」


「だから遠くからでも見つけやすい」


「目印扱いかよ!」


彼女は満足そうに笑い、そのまま主人公の腕に抱きついた。


主人公は一瞬、固まる。


前世の記憶はあっても、この身体になってから彼女とデートするのは初めてだ。


どう反応していいのか分からない。


すると彼女がニヤニヤしながら顔を覗き込んできた。


「何? 緊張してる?」


「してない」


「顔、赤いよ?」


「暑いだけだ!」


「今日、そんなに暑くないけど」


「じゃあ急に気温が上がったんだよ!」


「主人公の周りだけ?」


「局地的異常気象だ!」


「便利な言葉ねえ」


完全に遊ばれていた。


最初に向かったのはショッピングモールだった。


彼女は服屋を見つけるたびに主人公を連れ込んでいく。


そして数分後。


「これ、かわいいよ。着てみて」


差し出された服を見て、主人公は固まった。


「……待て」


「何?」


「なんで俺にそれを渡す?」


「似合いそうだから」


「女性物じゃねえか!」


「細かいこと気にしないの」


「売り場からして完全にレディースなんだよ!」


「大丈夫。あんたなら似合う」


「大丈夫の意味がおかしい!」


当然、試着は断った。


すると彼女は残念そうに服を戻す。


「絶対かわいいのに」


「俺にかわいさを求めるな!」


「じゃあ次はこれ」


「それスカートだろ!」


「気づいた?」


「気づくわ!」


彼女は朝から絶好調だった。


その後、二人はカフェへ入った。


主人公がメニューを眺めていると、彼女は何の相談もなく携帯を操作し、勝手に注文を済ませてしまった。


この店では店員を呼ぶのではなく、各自の携帯から注文するのが一般的らしい。


「ちょっと待て。俺、まだ何も決めてないんだけど」


「大丈夫。もう注文したから」


「何が大丈夫なんだよ!」


しばらくして運ばれてきたのは、予想をはるかに超える巨大なパフェだった。


「でかっ!」


主人公は思わず声を上げた。


「お前、そんなに食べるのか?」


「あんたが食べるんだよ」


「お前も食えよ!」


「私はダイエット中だから」


「注文した本人が逃げるな!」


「記憶喪失になる前は、甘いもの好きだったでしょ?」


主人公は黙った。


今の主人公は、周囲には記憶喪失ということになっている。


そのため、以前の自分の細かな好みまでは分からない。


「……そうだったのか?」


「うん」


「本当に?」


「たぶん」


「たぶんかよ!」


結局、巨大なパフェは二人で食べることになった。


食べ終わるころ、彼女が何でもないことのように言った。


「今日はわたしがおごるわ。ちょうど今月分の補助金が出たばかりだし」


「補助金?」


主人公が聞き返すと、彼女は当然のように答えた。


「交際補助事業よ。通称――『デート代補助』」


「なんだよ、それ」


「恋人同士の交際を支援する制度よ。毎月五千円まで、二人で利用した飲食代や遊びにかかった費用、それに宿泊料なんかにも使えるの」


「そんな制度まであるのか……」


「あるわよ。携帯に恋人を登録しておけば、自動的に適用されるわ」


彼女は自分の携帯を見せながら説明を続けた。


「さっき、お店の入り口で携帯をタッチしたでしょ?」


「ああ、したけど」


「あれで誰と一緒に入店したか確認されるの。恋人として登録されている相手と一緒なら、会計のときに補助金が自動的に適用される仕組みよ」


「へえ……便利だな」


そこで主人公は、ふと疑問に思った。


「でも俺、恋人なんて登録した覚えないぞ?」


「あら?」


彼女は何でもないことのように笑った。


「あんたの携帯なら、前にわたしが設定してあげたわよ」


「勝手に登録したのかよ!」


「いいじゃない。おかげで今日は安くなるんだから」


「よくないだろ……」


彼女は主人公の抗議など気にも留めず、満足そうに笑った。


「というわけで、今日はわたしのおごりね」


「……なんか納得いかないな」


「じゃあ次は、あんたのおごりね」


「ちゃっかりしてるな!」


その後、二人はゲームセンターへ向かった。


彼女はクレーンゲームの前で立ち止まり、中にあるぬいぐるみを指さした。


「取って」


「簡単に言うなよ」


「彼氏なら取れる」


「彼氏に特殊能力でも備わってるのか?」


「愛の力で」


「クレーンのアーム強度は愛じゃ変わらねえよ!」


それでも主人公は挑戦した。


一回目、失敗。


二回目も失敗。


三回目も失敗。


横を見ると、彼女がものすごく楽しそうに笑っていた。


「下手」


「うるさい!」


「もう千円使ってるよ?」


「誰のせいだ!」


「あんたの技術不足」


「お前が取れって言ったんだろ!」


結局、かなりのお金を使って、ようやくぬいぐるみを取ることができた。


主人公のデート代補助金は、このクレーンゲームだけですべて使い切ってしまった。


主人公がぬいぐるみを渡すと、彼女は嬉しそうに抱きしめた。


「ありがとう。大事にする」


「……おう」


その瞬間だけは、主人公も少し嬉しくなった。


だが――。


「主人公より大事にする」


「俺より上なの!?」


「冗談、冗談」


「一瞬、本気に聞こえたぞ!」


その後、彼女に連れられてプリクラを撮ることになった。


撮影が始まると、彼女が主人公の肩を引き寄せる。


「ほら、もっと近づいて」


「近いって!」


「恋人なんだからいいでしょ」


「限度がある!」


何枚か撮影したあと、今度は加工画面へ移った。


彼女は楽しそうに主人公の顔を加工し始める。


「ちょっと待て。何してるんだ?」


「加工♪」


まず、主人公の目をこれでもかというほど大きく、ぱっちりとさせる。


さらに髪型を女性らしいロングヘアへ変更した。


「おい、もう別人になってないか?」


「まだまだ」


「まだやるの!?」


今度は唇をぷっくりさせ、頬を赤く染め、アイシャドウや口紅まで追加していく。


そして仕上げとばかりに、主人公の周囲を大量のハートマークで埋め尽くした。


さらに最後には、プリクラの端へ――。


『自慢の彼氏♡』


という文字まで付け加える。


「完成!」


満足そうな彼女が画面を見せてくる。


主人公は数秒、黙り込んだ。


「……これ、もう俺じゃないだろ!」


「かわいいじゃん」


「俺はかわいさを求めてない!」


彼女は完成したプリクラをスマホに保存すると、嬉しそうに言った。


「これ、スマホの待ち受けにしよっと」


「やめろ! こんなの待ち受けにするな!」


「みんなに『私の彼氏です』って自慢するんだ♪」


「自慢するな! というか、それを見ても誰も俺だって分からないから!」


夕方になり、二人は公園を歩いていた。


朝から散々いじられ続けて疲れた主人公だったが――不思議と嫌ではなかった。


むしろ、こうして誰かと一日中遊び回るのも悪くないと思い始めていた。


すると彼女が突然、主人公の顔を見上げた。


「今日、楽しかった?」


「ああ。まあな」


「『まあ』はいらない」


「……楽しかったよ」


「よろしい」


「なんで採点されてるんだよ」


彼女は楽しそうに笑いながら、主人公の手を握った。


「じゃあ、またデートしようね」


主人公も、その手を握り返す。


「次はもう少し普通のデートにしろよ」


「分かった」


「本当か?」


「次は主人公の女装コーデを選ぶデートにする」


「何も分かってねえ!」


彼女の楽しそうな笑い声が公園に響く。


こうして、転生後初めてのデートは――。


主人公が一日中ツッコミ続けるという、なんとも騒がしく、それでいて楽しい一日になった。

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