8話 最後の戦い
人類を襲った十隻の巨大宇宙船。
主人公たち五人の戦士は、命懸けの戦いの末、そのうち九隻を撃破した。
強力な敵のほとんどは主人公が倒したのだが……。
最後に残った一隻だけは、これまでとは明らかに違っていた。
宇宙船の中央部がゆっくりと開き、一人の異星人が姿を現す。
黒い鎧。
赤く光る瞳。
その周囲だけ、空気そのものが震えている。
主人公は思わず息をのんだ。
「……こいつが、ボスか」
異星人は静かに口を開く。
「よくもここまで、我輩の部下たちを殺してくれたな」
そして、怒りを押し殺したような声で告げた。
「だが――そこまでだ。貴様らには、ここで死んでもらうッ!」
次の瞬間。
ドンッ!!
見えない衝撃波が地面をえぐった。
主人公はとっさに防御するが、そのまま数十メートルも吹き飛ばされる。
「ぐっ……!」
今までの敵とは比べものにならない力だった。
それでも主人公は何度も立ち上がった。
必殺技を放つ。
剣で斬りかかる。
拳を叩き込む。
しかし――。
ボスは、そのすべてを片手で受け止めた。
「遅い」
たった一言。
直後、主人公の身体は再び地面へ叩きつけられた。
その圧倒的な光景を見ていた四人の仲間たちは、青ざめた顔でひそひそと相談を始める。
「……勝てない」
「こんなの無理だって!」
「リーダーに任せて逃げよう!」
「おい!!」
主人公が叫ぶ。
「待て! 逃げるな!」
しかし、四人はすでに走り始めていた。
「しかも全部リーダーに押しつけるな!」
主人公は必死に叫ぶ。
「だから来るなって言ったのに!!」
だが、四人は振り返ることなく戦場から全力疾走で逃げ去っていった。
戦うときより明らかに速かった。
その逃げ足には、敵の兵士たちですら少し感心していた。
しかも――。
「……あれ?」
主人公は周囲を見る。
いつの間にか、小さな女の子までいなくなっていた。
戦闘が始まったときには確かにいたはずなのに、影も形もない。
「……あいつまで逃げたのかよ」
主人公は深いため息をついた。
そして、目の前のボスを見据える。
「……仕方ない」
ボロボロの身体で、再び武器を構えた。
「一人でも戦う」
それから何十分もの間、激しい戦いが続いた。
主人公の身体は傷だらけになっていた。
ステッキは砕け、衣服は破れ、全身から血が流れている。
それでも主人公は倒れなかった。
最後の力を振り絞り、ボスへ向かって突撃する。
「うおおおおおっ!!」
しかし――。
ボスは静かに腕を振った。
たった一撃だった。
主人公の攻撃は完全に止められ、その身体は力を失ってゆっくりと地面へ崩れ落ちる。
「……ここまでか」
主人公は地面に倒れたまま、夜空を見上げた。
そして、小さく笑う。
「みんな……地球を頼む……」
その言葉を最後に、主人公は静かに息を引き取った。
――一方、その頃。
逃げ出した四人は、森の中を必死に走っていた。
「はぁ……はぁ……!」
「ここまで来れば大丈夫でしょ!」
「助かった……!」
四人が安堵した――その瞬間だった。
ガサッ。
周囲の茂みから、異星人の兵士たちが次々と姿を現す。
前。後ろ。右。左。
完全に囲まれていた。
「……え?」
「しまっ――」
抵抗する間もなかった。
四人はあっという間に捕まり、最後の宇宙船へと連行されてしまった。
牢屋へ放り込まれた四人は、震えながら助けを待った。
「だ、大丈夫……」
「きっとリーダーが助けに来てくれる……」
「そうだよ。あの人、めちゃくちゃ強いし……」
「絶対来てくれるって……」
しかし――。
いくら待っても、主人公は現れなかった。
当然だった。
その主人公は、すでに命を落としていたのだから。
やがて牢屋の前に、ボスがゆっくりと姿を現した。
四人は息をのむ。
ボスは冷たい目で彼女たちを見下ろした。
「仲間を置いて逃げた者に、生きる価値はない」
「えっ」
「ちょっと待っ――」
処刑は、あっけないほど早く終わった。
四人は最後までまともに反撃することさえできず、その命を落とした。
そして――。
なぜか、あの小さな女の子もすぐに捕まっていた。
しかも、四人より先に処刑されていたらしい。
一体どこへ転移したのだろうか。
逃げることだけなら誰よりも得意なはずなのに。
結局、小さな女の子も反撃することなく命を落としていた。
こうして――。
主人公。
逃げた四人の戦士。
そして、小さな女の子。
地球を守っていた五人の戦士と、その案内役だった少女は、全員倒れた。
地球を守る者は、もう誰もいない。
夜空には、最後に残った一隻の巨大宇宙船だけが、不気味なほど静かに浮かんでいた。
世界中の人々は、突然途切れたテレビ中継の画面を呆然と見つめている。
誰も言葉を発することができなかった。
そして世界中の人々は、テレビ中継の途切れた画面を見つめながら、人類史上最大の敗北を悟るのだった。




