↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
謎の世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/164

74話 この世界の歴史(2)

歴史書の続きを読んだ。


そこに記されていた宇宙人による支配は、想像を絶するほど残酷なものだった。


人類が降伏した直後、宇宙人は各国政府に最初の命令を下した。


――六十歳以上の人間を、すべて差し出せ。


拒否すれば、都市ごと消滅させる。


そう脅された各国政府に、抵抗する力は残されていなかった。


政府は命令に従い、六十歳以上の人々を集めた。


家族と無理やり引き離された高齢者たちは、指定された場所へ連行され、そのまま宇宙人によって殺された。


だが、それで終わりではなかった。


次に宇宙人が要求したのは、重い病気を抱えている者だった。


さらにその次は、犯罪者。


世界中の刑務所から囚人たちが連れ出され、宇宙人へ引き渡された。


一度引き渡された者が、帰ってくることはなかった。


そして次に、宇宙人は障害を持つ者まで差し出すよう命じた。


各国政府が拒否すれば、罪のない市民が暮らす都市を攻撃すると宣告された。


人々は恐怖した。


あまりにも苛烈な宇宙人の支配に、世界各国の政府も黙っていることはできなかった。


人類は宇宙人を倒すため、軍隊を再整備した。


兵士を徴兵し、徴兵されなかった者たちは武器や兵器の製造に従事した。


こうして人類は、大規模な軍備を整え、宇宙人との再戦に備えた。


そしてついに、人類は宇宙人への反撃を開始した。


戦いが始まった直後は、人類側が優勢だった。


武装していない宇宙人には、それまでに人類が開発してきた兵器が十分に通用したのだ。


人類は次々と宇宙人を倒し、勝利を確信した。


しかし、宇宙人が本格的に武装すると、状況は一変した。


人類が持つあらゆる兵器が、まったく効かなくなったのだ。


それでも人類は戦い続けた。


だが、圧倒的な戦力差を覆すことはできなかった。


次第に戦況は悪化し、人類の軍隊は各地で壊滅。


世界中の戦線が次々と崩壊していった。


人類は、再び宇宙人に敗れた。


もはや、宇宙人の命令に従うしかなかった。


やがて、さらに異様な命令が下された。


――十八歳以上で、結婚していない女性を、指定した人数だけ差し出せ。


理由は、未婚であること。


ただそれだけだった。


女性たちは家から連れ出され、宇宙人へ引き渡された。


対象者を選ぶ際には、仕事をしていない者、学歴が低い者、収入が低い者、太っている者、容姿が良くないと判断された者などが、優先的に選ばれたという。


当然、必死に逃げようとする者もいた。


そして、この命令が出された直後、世界中で異様な現象が起こった。


女性たちが、必死になって結婚相手を探し始めたのだ。


結婚している女性は、宇宙人に差し出される対象から外された。


そのため、女性たちは一斉に男性を求めるようになった。


もはや、相手の年齢や職業、収入、容姿などにこだわっている余裕はなかった。


少しでも結婚できる可能性があるのなら、それだけで十分だった。


女性たちは、身近な男性に次々と声をかけた。


友人。


同僚。


近所の住人。


これまでほとんど話したことのなかった男性にまで、突然結婚を申し込む女性が現れた。


お見合いも、かつてないほど盛んになった。


結婚相談所には女性が殺到し、男性の前には長い順番待ちができた。


男性一人に対して、何人もの女性が結婚を申し込むことも珍しくなくなった。


中には、恋愛感情などなくても、とにかく籍だけを入れようとする者も大勢いた。


実際には別居しており、夫婦としての実態がほとんどない。


それでも、法律上結婚していれば、宇宙人から狙われることはなかった。


女性たちは、それだけで自分の命が守られると信じていた。


しかし、それでも結婚できない女性は、かなりの数に上った。


結婚したくても、相手が見つからない。


どれほど必死になって探しても、結婚できない。


そうした女性たちは、宇宙人に差し出されていった。


一度連れていかれた女性が、帰ってくることはなかった。


しかも宇宙人は、人類の個人情報をほぼ完全に把握していた。


誰が結婚しているのか。


誰が独身なのか。


どこに住んでいるのか。


そうした情報のほとんどを把握していたという。


やがて、成人したばかりの若い女性まで連れていかれるようになった。


そうなると、相手を探し始めるのが中学や高校になってからでは遅かった。


いつしか人々は、小学生の頃から将来の結婚相手を探すようになった。


早いうちから相手を見つけ、いわば「キープ」しておかなければ、成長した頃には結婚相手が残っていないかもしれなかったからだ。


競争は激しかった。


高校生になる頃には、ほとんどの男子に恋人がいる。


そんな社会が出来上がっていった。


恋愛を楽しむ余裕などなかった。


とにかく、宇宙人に「未婚」と判断されないこと。


それだけが、多くの女性にとって最優先事項になった。


そして、さらに残酷な命令が下された。


――未婚の男性も、指定した人数だけ差し出せ。


ついに男性も対象となった。


だが、状況は女性の場合とは大きく異なっていた。


当時、女性人口は男性人口を大きく上回っていた。


そのため、男性たちは女性ほど必死になって結婚相手を探す必要がなかった。


一方、女性たちの焦りは、さらに強くなった。


「結婚できなければ、連れていかれる」


その恐怖を抱えながら、女性たちは限られた男性を求めて競い合った。


男性一人をめぐって、複数の女性が結婚を申し込むことも珍しくなくなった。


年齢も、職業も、収入も、容姿も関係ない。


とにかく結婚できればいい。


籍さえ入っていればいい。


そう考える女性が、次第に増えていった。


こうして結婚は、恋愛や家庭を築くためのものではなく、宇宙人から生き残るための手段へと変わっていった。


しかし、男性の数には限りがある。


すべての女性が結婚できるわけではなかった。


結婚できなかった女性たちは、次々と宇宙人に連れていかれた。


そして、未婚男性もまた、宇宙人に差し出されていった。


やがて制度は、さらに厳しくなった。


それまで存在していた「指定人数」という制限そのものが撤廃されたのだ。


条件に該当した者は、人数に関係なく全員が宇宙人に連れていかれるようになった。


こうして、世界の人口は恐ろしい速度で減少していった。


かつて最盛期を迎えていた世界人口は、半分以下にまで落ち込んだ。


それでも、減少は止まらなかった。


最終的には、世界人口は最盛期の三分の一以下にまで減少したという。


そして、ついにはこんな命令まで出された。


――子供のいない三十歳以上の夫婦を、指定した人数だけ差し出せ。


今度は、結婚しているだけでは助からなくなった。


人々は必死に子供を作ろうとした。


それでも、子供を持てない夫婦は存在した。


そうした夫婦も、宇宙人に連れていかれた。


また、それまで宇宙人から逃れるためだけに籍を入れ、実際には別々に暮らしていた男女も多かった。


当然、子供を作ろうとしない夫婦も少なくなかった。


そうした夫婦も対象となった。


さらに、対象となる年齢は徐々に引き下げられていった。


三十歳。


二十八歳。


そして最終的には、二十五歳。


こうした政策によって、当初は人口が急激に減少していった。


しかし、生き残った人々が必死に結婚し、子供を作ったため、やがて人口は再び増加へと転じた。


ところが、人口が増加に転じると、宇宙人による選別の条件はさらに厳しくなった。


五十歳以上の男女は、一部の例外を除き、宇宙人に連れていかれるようになった。


さらに、中学校を卒業しても恋人のいない男女まで、容赦なく対象となった。


そして、この時代には、もう一つ大きな社会変革が行われていた。


男女平等政策である。


歴史書によれば、きっかけは人類側の女性たちから上がった声だったという。


当時の社会には、男女によるさまざまな格差が残されていた。


女性たちは、それを是正してほしいと宇宙人政府に訴えた。


宇宙人たちは、その要求をあっさり受け入れた。


なぜなら、宇宙人の社会では、男女をほとんど区別しないことが当たり前だったからだ。


仕事。


教育。


軍隊。


法律。


社会制度。


宇宙人たちは、自分たちの社会と同じ基準を、そのまま人類にも適用し始めた。


だが、それは人類が想像していた「男女平等」とは、あまりにも違っていた。


宇宙人には、人間社会に存在する文化や慣習、身体的な違い、家庭内での役割分担などを考慮するという発想がほとんどなかった。


男だから特別扱いしない。


女だから特別扱いしない。


すべて同じ条件。


すべて同じ義務。


すべて同じ待遇。


それこそが、彼らの考える男女平等だった。


その結果、人類にとって極端ともいえる政策が、次々と実施された。


特に、それまで女性向けの保護や例外が設けられていた分野では、大きな混乱が起きたという。


女性たちは抗議した。


「こんなことを望んでいたわけではありません!」


「元に戻してください!」


「私たちが求めた平等は、こんなものではありません!」


ついには、多くの人々が宇宙人政府に押しかけ、制度を元に戻してほしいと訴えた。


宇宙人たちは困惑した。


そして、最後には激怒したという。


「男女平等にしてほしいと言ったのは、お前たちだろう!」


「男と女を同じように扱えと言ったから、その通りにしたんだ!」


「それなのに、どうして今度は元に戻せと言うんだ!」


宇宙人には、人類の言っていることが理解できなかったらしい。


結局、人間社会に合わせる形で制度の一部は元に戻された。


だが、この出来事は、人類と宇宙人の価値観が根本的に異なることを象徴する事件として、歴史書に大きく記録されていた。


宇宙人は、本当に容赦がなかった。


高齢者が消えた。


重い病気を持つ者が消えた。


障害を持つ者が消えた。


犯罪者が消えた。


十八歳を過ぎても結婚していない者が消えた。


そして、多くの若者までもが消えていった。


人類は生き残るため、宇宙人の決めた条件に従って生活するしかなくなった。


もちろん、すべての人間が黙って従ったわけではない。


軍は壊滅してしまった。


それでも、世界各地で生き残った軍人、研究者、市民たちが集まり、宇宙人に対抗するためのレジスタンスを結成した。


目的はただ一つ。


宇宙人を倒し、愛する家族を守ることだった。


彼らは地下施設に武器や物資を集め、宇宙船への攻撃計画を立てた。


かつて宇宙人と戦った五人の少女が残した武器や資料も、世界中を探し回って集めたという。


しかし、その抵抗も長くは続かなかった。


宇宙人は、人類の通信網を徹底的に監視していた。


レジスタンスの拠点は次々と発見された。


発見された基地には、宇宙船から容赦なく攻撃が加えられた。


地下深くに築かれた施設でさえ、一瞬で破壊されたという。


生き残った者たちも捕らえられ、組織は壊滅した。


こうして、人類最後の大規模な抵抗組織は崩壊した。


その後、宇宙人に正面から逆らおうとする者は、ほとんどいなくなった。


主人公は、本を持つ手に力を込めた。


この世界で、高齢者をほとんど見かけない理由。


重い病気を抱えた人や、障害を持つ人を見かけない理由。


そして、誰もが幼い頃から恋人を作り、若いうちに結婚しようとする理由。


これまで胸の奥に引っかかっていた違和感が、一つの線につながっていく。


少子化対策などではなかった。


昔から続く文化でもなかった。


人々が望んで作り上げた制度ですらない。


すべては――宇宙人に殺されないためだった。


恋人を作ることも。


結婚することも。


子供を作ることも。


この世界では、人生を豊かにするための選択ではない。


生き残るために必要な条件だったのだ。


主人公は、ゆっくりと歴史書を閉じた。


ようやく分かった。


この世界の異常な社会制度は、人々が望んで作ったものではない。


宇宙人による選別の中で、人類が生き残るために作り上げざるを得なかった仕組みだったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。