62話 高校受験と今後の生活
この世界では、男性は一月、女性は二月に高校入学試験を受けるのが一般的だった。
男性の進学先が先に決まり、そのあと女性が、将来一緒に暮らす男性の住む地域に合わせて学校を選ぶためだ。
彼氏は、自動車の整備や開発について学ぶ自動車高校に合格した。
そして主人公は、その高校から通える医療学校を受験し、無事に合格した。
本当は、彼と同じ町にある学校へ通えると思っていた。
ところが、合格通知と一緒に届いた案内を確認すると、主人公の通学時間は片道一時間もかかることが分かった。
「一時間……?」
主人公は机の上に広げた路線図を見つめた。
電車を二回乗り換え、最後は学校の送迎バスに乗らなければならない。朝の授業に間に合わせるためには、毎日六時前に起きる必要があった。
隣で路線図を見ていた彼氏も、困ったように腕を組んだ。
「思ってたより遠いな」
「遠いなんてもんじゃないよ。往復二時間だよ?」
「でも、医療学校はそこが一番いいんだろ?」
「そうだけど……」
主人公は頬を膨らませた。
彼の自動車高校は、新しく住む家から自転車で十五分ほどだった。朝も比較的ゆっくりできるらしい。
それに対して主人公は、暗いうちに家を出て、彼がまだ朝食を食べているころには駅のホームに立っていなければならない。
「なんか不公平じゃない?」
「俺が学校を近くしたわけじゃないぞ」
「分かってるけど、言いたくなるの」
彼は少し考えたあと、路線図の端を指さした。
「じゃあ、毎朝駅まで送るよ」
「自転車で?」
「自動車高校なんだから、そのうち車で」
「入学しただけで車買えるようにはならないからね」
主人公がすぐに突っ込むと、彼は笑った。
それでも、新しい家で彼と一緒に暮らせることへの楽しみは大きかった。
朝は私のほうが早く家を出て、夜は彼のほうが先に帰ってくる。
彼が夕食を作り、主人公が帰宅したら一緒に食べる。休みの日には買い物へ行き、主人公は医療の勉強をし、彼は自動車の部品を広げて課題に取り組む。
そんな生活を想像すると、片道一時間の通学も、少しだけ我慢できるような気がした。
「寝坊したら起こしてね」
主人公が言うと、彼は自信満々にうなずいた。
「任せろ。毎朝絶対に起こす」
「あなたも寝坊したら?」
「そのときは二人で遅刻だな」
「私は電車なんだから、笑い事じゃないよ!」
こうして主人公たちは、それぞれ別の学校へ通いながら、同じ家で新しい生活を始めることになった。
卒業式の翌日、クローゼットを開けると制服がなくなっていた。
部屋中を探しても見つからない。
「お母さん、私の制服知らない?」
そう尋ねると、母は意味ありげに笑った。
「こういうのが好きなんだね。ふふふふふ」
「何の話!?」
母が制服をどうしたのかは、教えてくれなかった。




