6話 宇宙からの侵略者
休日の朝。
主人公は朝食を食べながら、ぼんやりとテレビを見ていた。
そのとき、突然番組が中断され、画面が緊急ニュースへと切り替わった。
「臨時ニュースをお伝えします」
キャスターの表情は、これまでになく真剣だった。
「太陽系外から地球へ接近している、十隻の巨大な宇宙船が確認されました」
画面には、宇宙空間の映像が映し出される。
漆黒の宇宙を、整然と隊列を組んで進む十隻の巨大宇宙船。
その一隻一隻が都市ほどの大きさを持ち、ゆっくりと地球へ向かっていた。
「現在、各国の宇宙機関が観測を続けていますが、その目的は判明していません」
続いて、世界各地の様子が映し出される。
天文台では研究者たちが慌ただしく動き回り、街では人々が携帯端末でニュースを確認しながら、不安そうに空を見上げていた。
主人公は思わず立ち上がった。
「十隻も……」
そのときだった。
窓から、小さな女の子が飛び込むように部屋へ入ってきた。
「やっぱり……始まった」
主人公は驚いて振り返る。
「知っているの?」
小さな女の子はテレビに映る宇宙船を見つめたまま、小さくうなずいた。
「うん」
その表情は、今まで見たことがないほど真剣だった。
「今まで戦ってきた敵は、全部この日のための前触れだったの」
主人公は息をのむ。
「じゃあ、あれが……」
「そう」
小さな女の子は静かに告げた。
「あの十隻の宇宙船を率いている存在こそ、本当の黒幕」
主人公は言葉を失った。
「それが……ラスボス?」
「うん」
小さな女の子はゆっくりとうなずく。
「ずっと前から地球を観察していたみたい。そして配下を送り込んで、地球の戦力や魔法戦士の力を調べていたの」
その間にも、テレビでは続報が流れていた。
「宇宙船はこのまま進路を変えなければ、数日後には地球圏へ到達する見込みです」
主人公は窓の外を見る。
青い空は、いつもと何も変わらない。
だが、そのはるか向こうから、十隻の巨大宇宙船が確実に近づいている。
その頃、仲間の四人も同じニュースを見ていた。
小さな女の子は、すぐに全員へ連絡を送る。
『ニュース見た?』
『すぐ集合しよう!』
『いよいよなんだね……』
小さな女の子は端末を握り締めた。
「みんなを集めよう」
そして主人公を見上げる。
「最後の戦いが近い。今度の相手は、今までとは比べものにならないよ」
それからしばらくして――。
ピンポーン。
主人公が玄関を開ける。
「来たよ!」
「お邪魔しまーす!」
「ニュース見た!?」
「作戦会議しよう!」
四人の仲間がぞろぞろと家の中へ入ってきた。
主人公は固まった。
「……え?」
誰からも連絡をもらった覚えはない。
「なんで私の家なの!?」
「集合場所ここでしょ?」
「初めて聞いたんだけど!?」
しかも四人とも、当然のように靴を脱いで上がり込んでいく。
「ちょっと! 勝手に冷蔵庫開けないで!」
「ジュースもらうねー」
「もう自分の家みたいに使ってる!」
「私の家を勝手に集合場所にしないで!」
主人公の叫びが家中にこだました。
そして数日後――。
世界中が固唾をのんで見守る中、十隻の巨大宇宙船がついに地球上空へ到達した。
その姿は、あまりにも巨大だった。
一隻だけでも都市を覆い隠せるほどの大きさがあり、宇宙船の影によって、昼間だというのに地上が薄暗くなる地域まで現れた。
テレビは世界同時中継を続けている。
「宇宙船が各大陸上空で停止しました」
「現在のところ、攻撃の兆候は確認されていません」
世界各国は緊張しながらも、まずは対話を試みた。
やがて、会談用の巨大スクリーンに異星人の代表が映し出される。
「我々は、友好関係を築き、交渉を行うために来た」
その言葉を聞き、世界中の人々がわずかに安堵した。
「戦争にならなくて済むかもしれない」
そんな空気が広がり始める。
しかし――その平穏は長く続かなかった。
当初、異星人たちは人類に対して友好的な態度を見せていた。
しばらく交流を重ね、互いに一定の信頼関係が築かれたかに思えた頃、異星人側から本格的な交渉が持ちかけられた。
だが、そこで提示されたのは、人類には到底受け入れられないほど無理難題な要求だった。
当然、人類側はその要求を拒否した。
そして交渉の席で――異星人の代表は、それまでの友好的な態度を一変させた。
「地球は、我々の要求を受け入れる意思がないようだ」
各国の代表たちは、すぐさま反論する。
「いくらなんでも、その要求を受け入れることはできません」
しばしの沈黙。
異星人の代表は、ゆっくりと席を立った。
その表情からは、もはや友好の意思など完全に消えていた。
「……ならば、実力で示そう」
そして、人類に最後通告を突きつけるように、冷たい声で告げた。
「これより、我々が地球の支配権を獲得する」
その瞬間――。
十隻の宇宙船の下部が、一斉に赤く発光した。
無数の光線が地上へ降り注ぐ。
世界各地の迎撃基地や防衛設備が次々と機能を失い、通信網も大混乱に陥った。
各国はただちに迎撃を開始する。
航空機や艦艇が出動し、あらゆる兵器による攻撃が宇宙船へ集中した。
しかし――。
宇宙船を包む防御フィールドは、びくともしなかった。
「防御フィールドを突破できません!」
管制室に緊張が走る。
一方、異星人たちは冷静だった。
「地球の技術では、我々の防御を突破することはできない」
さらに宇宙船から光線が放たれ、迎撃兵器や軍事設備が次々と無力化されていく。
やがて世界各地の指揮所に、重い沈黙が広がった。
「……通常戦力では対抗できない」
ニュースキャスターも声を震わせる。
「世界各国の防衛網は、大きな打撃を受けています」
「人類は今、これまで経験したことのない危機に直面しています」
その頃――。
主人公たち五人は、なぜかまた主人公の自宅に集まり、中継を見つめていた。
「……だから、なんで毎回うちなの?」
誰も答えない。
「せめて誰か答えてよ」
しかし、テレビから流れる状況はあまりにも深刻だった。
主人公もすぐに表情を引き締める。
「人類の力だけじゃ……止められない」
小さな女の子がうなずいた。
「だからこそ、あなたたち魔法戦士が選ばれたの」
四人の仲間たちは、それぞれのステッキを強く握り締める。
青の戦士が立ち上がった。
「今度は私たちの番だね」
赤の戦士もうなずく。
「この星を守るために」
緑の戦士も続く。
「人類の存亡を懸けた戦いになる」
黄色の戦士も力強く言った。
「みんなの命を守るために、私たちが命を懸ける」
「うん!」
四人の決意が一つになる。
熱い空気が部屋を包んだ。
主人公はゆっくりと立ち上がり、四人の仲間を見回す。
そして――。
「よし」
全員が主人公を見る。
主人公は力強くステッキを握った。
「私一人で行くわ」
「「「「ええええええええっ!?」」」」
ズコッ!
四人がそろって、その場にこけた。
あまりにも見事なタイミングだった。
人類存亡を懸けた最後の戦いを前にしているとは思えないほど、完璧なコントだった。




