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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
魔法少女戦士をやらされた。こんなのやりたくないよ。

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5話 テストと世界滅亡

「ピーンポーン!」


テスト勉強中の主人公の部屋に、突然チャイムの音が響いた。


今度は窓がコンコンと叩かれた。


「……窓?」


主人公がカーテンを開けると、小さな女の子が窓の外で肩を上下させていた。


窓を開けるなり、女の子が叫ぶ。


「お願い! 魔物が現れたの! 今すぐ出撃して!」


しかし主人公は、参考書から目も離さず答えた。


「ごめん。今、テスト期間だから。三日後に数学と英語のテストがあるの」


「えぇぇ!? 世界が大変なのに!?」


「世界史なら今やってる」


「そういう世界じゃないよ!」


小さな女の子は半泣きになりながら飛び去っていった。


――二日後。


玄関を開けると、ボロボロになった赤の魔法少女が、壁にもたれかかるように立っていた。


「はぁ……はぁ……頼む……。あと一人いれば勝てるんだ……」


その後ろから、黄色の戦士が顔を出す。


「一緒に来てくれ……」


主人公は申し訳なさそうに頭を下げた。


「ごめん。明日、数学と英語」


「数学と英語ぉぉぉ!?」


「今回は長文読解が出るらしい」


「こっちは魔物を読解してるんだけど!」


――さらに二日後。


テスト二日目が終わった、その夜だった。


今度は青の魔法戦士が、主人公の家の前で膝をついていた。


「私……もう三日寝てないんだ……」


主人公も死んだような目で答える。


「私は徹夜二日目」


参考書を抱え直しながら付け加えた。


「私も限界」


「意味が違う!!」


――そして、テスト期間中の休日の朝。


休日明けには、最後のテストが一日だけ残っていた。


ここ数日の睡眠不足を取り戻すようにゆっくり眠った主人公は、食パンをかじりながら、ぼんやりとニュースを見ていた。


『速報です。オーストラリアとの通信が一週間以上途絶えています』


『現地の衛星映像も正常に確認できておらず、政府は原因不明として調査を進めています』


主人公は食パンにジャムを塗りながら首をかしげる。


「へぇ……珍しいな」


その瞬間。


テレビの横から、あの小さな女の子がふらふらと姿を現した。


「……オーストラリア」


「え?」


「昨日、最後まで戦ってた青の戦士が負けた」


「……」


「だから今、オーストラリアは完全に魔物の支配下」


主人公は食パンを持ったまま固まった。


「……え?」


「だから最初に呼びに来たじゃん!」


「いやいやいやいや!」


主人公は勢いよく立ち上がった。


「もっと『今日提出の課題があります』くらいのテンションだったじゃん!」


「世界滅亡案件なら最初に言ってよ!」


小さな女の子も涙目で叫ぶ。


「『魔物が出た』って言ったじゃん!」


「毎週出てくる感じだったじゃん!」


「毎週じゃないよ!!」


そのとき、テレビから続報が流れた。


『続いて、ニュージーランドとも通信が途絶えたことが確認されました』


「……」


主人公は無言で食パンを皿に置いた。


そして、ゆっくりと参考書を閉じる。


「……今から行けば間に合う?」


小さな女の子は、少し考えてから答えた。


「遅い」


主人公は天を仰いだ。


「赤点どころじゃなかった……」


こうして主人公は、小さな女の子の力でオーストラリアへワープした。


そこへ――。


黒い煙とともに、巨大な敵の王が現れた。


『ようやく来たか、最後の戦士よ!』


巨大な影が空を覆う。


『我は暗黒皇帝! この地の基地を破壊し、お前の仲間をことごとく打ち倒した者だ!』


主人公は暗黒皇帝を見上げた。


「……あなた一人で?」


『そのとおり!』


主人公はわずかに身構える。


「みんなをここまでボロボロにしたなら、相当強いんだろうね」


捕らえられていた戦士たちが必死に叫ぶ。


「油断するな!」


「恐ろしい敵だ!」


「私たちは一週間戦っても勝てなかった!」


主人公は片手を前へ突き出した。


「じゃあ、全力でいくね」


少し考えてから付け加える。


「ちょうど、新しく覚えた必殺技も試したかったし」


『来い!』


「必殺――スターライト・インパクト!」


主人公の手から、光が放たれた。


以前はひょろひょろとしか飛ばなかった技だ。


しかし、最近の練習の成果で、ようやくまっすぐ飛ぶようになっていた。


光は暗黒皇帝の胸に命中する。


ポンッ。


『な――』


暗黒皇帝は空の彼方へ吹き飛んだ。


そのままキラーン、と星になった。


ついでに背後にあった敵の要塞も、周囲を埋め尽くしていた怪物の軍団も、まとめて消滅した。


戦闘時間――約三秒。


「……」


主人公はしばらく空を見上げていた。


そして、ぽつり。


「……弱くない?」


救出された戦士たちは全員、黙って目をそらした。


主人公が振り返る。


「これと一週間戦ってたの?」


一人の戦士が咳払いする。


「……敵の攻撃方法が特殊だったんだ」


「どんな攻撃?」


「普通に殴ってきた」


「普通じゃん」


別の戦士が慌てて割って入る。


「数が多かったんだ!」


主人公は、何もいなくなった周囲を見回した。


「今、まとめて全部倒せたけど」


「我々は一体ずつ相手をする主義なんだ!」


「その主義、今すぐ捨てたほうがいいよ?」


すると小さな女の子が、主人公の耳元でこっそりささやいた。


「この人たち、実はそんなに強くないんだよ」


主人公は思わず振り返った。


「先に言ってよ!」


戦士たちが一斉に反論する。


「弱くない!」


主人公は冷静に尋ねた。


「では、基地まで壊された理由は?」


「基地の耐久性に問題があった!」


「みんなが捕まった理由は?」


「鎖が思ったより硬かった!」


「敵を倒せなかった理由は?」


「ちょうど全員、調子が悪かった!」


「一週間ずっと?」


「……」


戦士たちは再び目をそらした。


幸い、住民たちは戦闘が本格化する前に避難施設へ逃げており、全員無事だった。


通信施設や一部のインフラは破壊されていたものの、最も大きな被害を受けたのは軍事基地だった。


こうして、一週間以上にわたって続いていたオーストラリアの危機は――主人公が到着してから、わずか数秒で解決した。


ただし。


「帰れるの、明日になるから」


小さな女の子にそう言われ、主人公は固まった。


「……え?」


「ワープの力、使い切っちゃった。回復するまで一日かかる」


「ちょっと待って」


主人公は自分の手荷物を見る。


スマホ。


財布。


以上。


「……勉強道具、何も持ってきてない」


「うん」


「明日、テスト最終日なんだけど」


「世界は救ったよ?」


「学校はそれで点数くれないの!」


主人公はその場に崩れ落ちた。


「終わった……」


暗黒皇帝との戦闘時間、約三秒。


世界を救うために必要だった時間も、約三秒。


しかし――。


テスト勉強の損失時間、1日と少し。


主人公にとっては、そちらのほうがはるかに深刻だった。

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