55話 合格祝いのデート
国家資格に合格したお祝いのデートをすることになった。
朝からお母さんがどこか楽しそうだった。
「今日は特別な日なんだから、これを着て。」
差し出されたのは、この前買い物に行ったときに買った「私にはちょっと大人っぽすぎるかな」と思うような、上品な大胆なワンピースと下着だった。
「えっ、今日この服着るの?」
「いいの。今日はこれくらいがあなたにとってちょうどいいの。もう少し私はもうセクシーのが良かったけど」
「え、これでもかなりセクシーで大胆だけど。しかも恥ずかしいよ」
結構背中も見え胸元も強調された攻めた服だった。
母は笑っていた。
髪も丁寧に整えてもらい、いつもは日焼け止めくらいしかしない主人公に、軽くお化粧までしてくれる。
鏡を見ると、そこには少しだけ大人になったような自分が映っていた。
「……私じゃないみたい。」
「ちゃんと似合ってる。自信を持って。」
お母さんは満足そうにうなずいた。
約束の時間になり、彼が迎えに来る。
「わあ……。」
姿を見た瞬間、彼は少し言葉を失った。
「すごく……きれい。」
その一言で、顔が一気に熱くなる。
「そ、そんなに見ないで……。」
照れながら二人で歩き始める。
朝からお母さんに選んでもらった少し大人っぽいワンピースを着た。
彼は家まで迎えに来てくれた。
「お、お待たせ。」
彼はいつもより姿勢が良く、どこかぎこちない。
「どうしたの? なんか変だよ。」
「い、いや……別に。」
返事もどこか上の空。
(緊張してる……?)
普段なら冗談を言って笑わせてくる彼が、今日はやたらと静かだった。
歩いていると、不思議なことが起きる。
すれ違う人たちが、主人公ではなく着ている服を見て、にこにこ微笑んでいるのだ。
「かわいいね。」
「似合ってる。」
そんな声まで聞こえてくる。
「この服、そんなに変かな?」
主人公が首をかしげると、
「い、いや! すごく似合ってるよ!」
彼だけ妙に慌てて答えた。
「そんなに焦らなくても。」
主人公は笑ってツッコむ。
さらに歩いていると、小さな子どもを連れた若い夫婦が近づいてきた。
奥さんが主人公たちを見て笑顔になる。
「おめでとうございます。」
「え?」
続いて旦那さんも笑いながら、
「私たちも、こんな時がありました。」
奥さんは大きくうなずいた。
「お互い頑張ってくださいね。」
二人は手を振りながら去っていく。
主人公はきょとん。
「……何のおめでとう?」
彼は一瞬固まり、
「あ、あはは……さ、さあ?」
明らかに目が泳いでいる。
「絶対何か知ってるでしょ。」
「し、知らない知らない!」
「その演技、下手すぎ!」
思わずツッコミを入れると、彼は苦笑いするしかなかった。
街を歩くたびに、また誰かが笑顔で会釈をしてくる。
「頑張ってね。」
「お幸せに。」
そんな言葉をかけられるたびに、主人公はますます首をかしげる。
「ねえ、本当に今日は何の日なの?」
彼は深呼吸を一つして、
「……あとでちゃんと話すよ。」
そう言って、少しだけ照れくさそうに笑った。
主人公はその意味がまだ分からないまま、不思議な祝福に包まれながら、二人で歩き続けた。電車に乗り、街へ向かう。
「今日はどこに行くの?」
「着いてからのお楽しみ。」
そう言われたまま、大きなビルの前で降りた。
エレベーターに乗ると、表示はどんどん上へ。
「えっ……最上階?」
扉が開くと、大きな窓いっぱいに街の夜景が広がっていた。
窓際には白いテーブルクロスがかかった席。
「こちらへどうぞ。」
店員さんに案内されて席に着く。
主人公は思わず小声で彼に聞いた。
「ここ……すごく高そうなお店じゃない?」
彼は少し照れながら笑う。
「合格祝いだから。今日はちょっと奮発した。」
前菜が運ばれ、夜景を眺めながらゆっくり食事が始まる。
窓の外には街の灯りが宝石のように輝いていた。
「こんなお店、初めて……。」
フォークを持つ手が少しぎこちない私を見て、彼は笑う。
「そんなに緊張しなくても大丈夫。」
「だって、お店の人もみんなすごく上品なんだもん。」
二人で顔を見合わせると、思わず笑ってしまった。
料理が運ばれるたびに「おいしいね」と話しながら食事は進み、最後には「おめでとうございます」と書かれた豪華なケーキが運ばれてくる。
主人公は驚いて彼を見る。
「これも……?」
「サプライズ。」
思わず目を潤ませながら笑った。
「ありがとう。本当にうれしい。」
窓の向こうに広がる夜景を眺めながら、その日の思い出は、二人にとって忘れられない合格祝いになった




