54話 特別な日に向けてのショッピング
彼から「国家試験に合格したよ!」と連絡があった。
そのことをお母さんに話すと、お母さんは両手をたたいて大喜び。
「よかったね! これはお祝いしなきゃ!」
そう言うと、お母さんはすぐに立ち上がった。
「今日は買い物よ! 特別な日に向けて、新しい服を選びに行くわ!」
「特別な日?」
「いいから、いいから!」
勢いに押されるまま、二人でショッピングモールへ。
店員さんが次々とワンピースを持ってきてくれる。
「こちらはいかがですか?」
「えっ、これ可愛い!」
「こっちも似合いそうね!」
試着を何着も繰り返した末、少し背伸びをした大人っぽい大胆な上品なワンピースと、新しい下着を選ぶことになった。
タブレットで会計の合計が表示された。
店員さんが笑顔で金額を伝えた瞬間、お母さんの笑顔が一瞬だけ固まる。
「……。」
「お、お母さん?」
「……いいの。今日は特別だから。」
そう言って笑顔を作るものの、会計金額を見つめる目はどこか遠くを見ていた。
家へ帰る途中、気になって聞いてみた。
「ねえ、お母さん。」
「なあに?」
「さっきから言ってる『特別な日』って、何の日なの?」
お母さんは満面の笑み。
「ふふふ、その日になったら分かるわ。」
「またそれ!」
「楽しみにしてて。」
「だから何を!?」
「秘密♪」
「秘密でこんな高い買い物する人いる!?」
「いるわよ。」
「目の前にいた!」
お母さんは上機嫌で鼻歌を歌いながら歩いていく。
主人公は大きな紙袋を抱えながら首をかしげる。
「特別な日って……誕生日でもないし、クリスマスでもないし……何なんだろう?」
その問いに答える人は誰もいなかった。
ただ、お母さんだけが意味ありげにニコニコしていた。




