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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
転生した世界。皆が豊かで平和すぎる世の中だったのに私だけ彼氏がいない。

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50話 この国の人口

主人公は、夕食を食べながら何となくテレビを見ていた。


『続いて、今年度の人口統計が発表されました』


画面に大きな数字が表示される。


国内人口 約4000万人


『今年も国内人口は約4000万人となり、前年から大きな増減はありませんでした』


主人公は箸を止めた。


「……今年も?」


さらにニュースは続く。


『世界人口についても、約30億人で前年とほぼ変わっていません』


「30億人……」


別に珍しいニュースではない。


主人公も学校では、この国の人口は約4000万人、世界人口は約30億人と習っていた。


だが、今日はなぜか妙に気になった。


「ちょっと待って……」


人は毎日生まれている。


当然、亡くなる人もいる。


事故や病気だってある。


それなのに――。


「毎年、ほとんど同じって……おかしくない?」


もちろん、出生数と死亡数が偶然近くなることはあるだろう。


しかしニュース画面には、


前年比 +1,842人


と表示されていた。


4000万人の国で、わずか1800人程度の変化。


世界人口の変化も数千人程度だった。


「いやいやいや……世界全体で数千人って、さすがにぴったりすぎない?」


急に気になった主人公は、自分の端末で過去の人口統計を検索してみた。


まず10年前。


国内人口 39,998,721人


「ほぼ4000万人……」


20年前。


40,001,583人


「また4000万人……」


30年前。


39,999,214人


「……」


40年前。


40,002,107人


50年前。


39,997,891人


主人公は画面をじっと見つめた。


「……怖っ」


50年間、多少の上下はある。


だが変動幅はせいぜい数千人。


4000万人という巨大な人口が、まるで何かに固定されているようだった。


さらに世界人口も調べる。


10年前。


3,000,004,281人


20年前。


2,999,997,551人


30年前。


3,000,001,903人


50年前。


2,999,996,812人


「世界まで……?」


主人公は思わず椅子にもたれた。


国だけなら、移民政策や出生政策などで説明できるのかもしれない。


だが世界人口まで、50年間ほぼ30億人。


そんな偶然があるのだろうか。


「じゃあ……60年前は?」


検索する。


データがありません。


「70年前……」


データがありません。


「100年前は?」


該当する統計資料はありません。


主人公は首をかしげた。


「歴史資料くらいあるでしょ……?」


人口統計だけではない。


昔の新聞。


昔の社会科資料。


古い映像。


片っ端から検索してみる。


しかし――。


50年以上前の資料が、ほとんど存在しなかった。


「……なんで?」


それより昔については、


『記録が十分に残っていない時代』


として簡単に説明されていた。


主人公は今まで、それを疑ったことすらなかった。


「いや……普通、50年前ってそんな大昔じゃないよね?」


偶然というには出来すぎている。


主人公は試しに検索欄へ入力した。


「人口 4000万人 なぜ増えない」


検索結果。


『人口は社会環境によって自然に均衡しています』


『長期的に安定した人口は豊かな社会の証拠です』


『人口変動について心配する必要はありません』


似たような説明ばかりだった。


「……なにこれ」


どのサイトを開いても、文章が妙に似ている。


言い回しまでほとんど同じ。


まるで、全部同じ人が書いたようだった。


主人公はさらに検索する。


「50年前以前 人口」


すると突然――。


画面が暗くなった。


「え?」


数秒後。


見慣れない表示が現れた。


この情報へのアクセス権限がありません。


「アクセス権限……?」


ただの人口統計なのに。


その直後だった。


ピコン。


端末に通知が届いた。


政府統計管理局


その文字を見た瞬間、主人公の背筋が少し冷たくなった。


「……え、なんで?」


通知を開く。


そこには、短い文章だけが表示されていた。


『長時間の統計情報検索が確認されました。人口統計について不明な点がある場合は、学校または行政機関にお問い合わせください。』


主人公はしばらく画面を見つめた。


「……これ、監視されてるってこと?」


検索しただけで、なぜ政府から連絡が来るのだろう。


主人公はゆっくりテレビへ視線を戻した。


ニュースでは何事もなかったかのように、天気予報が始まっていた。


『明日も全国的に穏やかな一日となるでしょう』


「穏やかって……」


今の自分の気分とは正反対だった。


主人公はもう一度、人口統計を見る。


4000万人。


30億人。


50年間ほぼ変化なし。


そして、50年前より古い記録はほとんど存在しない。


主人公は小さくつぶやいた。


「もしかして……人口が増えてないんじゃない」


画面の数字を見つめる。


「増えないように……誰かが調整してるんじゃ……?」


その瞬間。


ピコン。


端末に、もう一件通知が届いた。


主人公の肩がびくっと動いた。


「また……?」


今度は送信者の名前がなかった。


本文は一行だけだった。


『それ以上、調べないほうがいい。』


主人公は固まった。


「……誰?」


慌てて通知を開こうとする。


しかし数秒後、その文章は画面から消えた。


「えっ?」


通知履歴を確認する。


何もない。


「ちょっと待って……今、確かにあったよね?」


何度確認しても残っていない。


まるで最初から存在していなかったかのようだった。


主人公は端末を握ったまま、しばらく動けなかった。


テレビからは明るいアナウンサーの声が流れている。


『それでは、次のニュースです』


いつもと同じ平和な夜。


4000万人の国。


30億人の世界。


そして――。


誰も疑問に思わない、50年間ほとんど変わらない人口。


主人公だけが、その世界の異常さに気づき始めていた。

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