38話 テレビ放送後の反応
翌日、主人公が学校へ行くと、さっそく親しい友達が集まってきた。
「おはよう、昨日のテレビ見たぞ!」
「お前、めちゃくちゃ映ってたじゃん」
「というか、テレビで見ると余計に可愛く見えるな」
「やめろよ……」
主人公は朝からうんざりした顔をする。
仲のいい男子たちは、ここぞとばかりに昨日のテレビ放送を話題にしてきた。
「うちの母親まで『この子かわいいね』って言ってたぞ」
「知らないよ!」
「有名人じゃん。サインちょうだい」
「絶対いらないだろ!」
そんなやり取りをしながら廊下を歩いていると、一人の男子が主人公を見ながらため息をついた。
「はぁ……やっぱり可愛いよな。彼女さえいなければ、俺も告白してたのになぁ」
その一言が聞こえた瞬間――
「……へぇ?」
男子の彼女が、いつの間にか真後ろに立っていた。
「今、何て言った?」
「い、いや、その……」
「『彼女さえいなければ』?」
「違う! 言葉の綾!」
「私じゃ不満なの?」
「そんなことない!」
彼女はにっこり笑った。
「放課後、反省会ね♪」
男子の顔から血の気が引く。
「ま、待って! 話せば分か――」
そのまま腕をつかまれ、連れていかれてしまった。
主人公は呆然とその背中を見送る。
「……何だったんだ、今の」
隣にいた友達は、慣れた様子で肩をすくめた。
「余計なこと言うからだよ」
しかし、それでも懲りない男子はいる。
別の男子が主人公を見て、
「でも俺も、彼女さえいなければ――」
「はい」
すぐ後ろから、別の女子の声がした。
男子の動きが止まる。
「……いつからいたの?」
「『彼女さえいなければ』のあたりから」
「最初からじゃん!」
彼女は笑顔のまま尋ねる。
「私じゃ不満なの?」
「ち、違います!」
「そう。じゃあ放課後、話し合おうね」
「話し合いで済む顔じゃない!」
教室では、そんな男子たちのやり取りを見て、みんなが笑っていた。
一方で、主人公は少し不思議に感じていた。
テレビに出たのだから、学校中でもっと騒がれると思っていたのだ。
ところが、実際に話題にしてくるのは、ほとんどが普段から仲のいい友達だけだった。
特に女子たちは、主人公を見ても普段とほとんど変わらない。
主人公は小声で友達に尋ねた。
「女子はあんまりテレビのこと言ってこないな」
「あー……」
友達は少し困ったように笑った。
「たぶん、見てないわけじゃないよ」
「じゃあ、なんで?」
「嫉妬じゃない?」
「嫉妬?」
「昨日テレビに出て、可愛い可愛いって言われてたじゃん。しかも男子からも注目されてるし」
主人公はますます分からないという顔をする。
「だから?」
「女子からしたら、わざわざ本人の前で『テレビ見たよ! 可愛かった!』なんて言いたくないんじゃない?」
「そんなものなのか……?」
実際、少し離れたところでは女子たちが主人公をちらちら見ながら、小声で話していた。
「昨日のテレビ、見た?」
「見た」
「……かなり映ってたね」
「うん」
「可愛かった?」
一瞬、沈黙。
「……別に」
「私も別に」
そう言いながら、二人とも明らかに主人公のほうを気にしている。
友達がそれを見て苦笑した。
「ほらね」
「分かりやすすぎない?」
「本人に聞こえないところでは、たぶん結構話題になってるよ」
主人公はため息をついた。
どうやらテレビ出演で一気に学校中の人気者――というわけではないらしい。
親しい友達からは朝から散々いじられ、
男子からは妙に褒められ、
女子からは嫉妬されて、むしろ普段以上に素っ気なくされる。
主人公は机に突っ伏した。
「テレビに出ても、全然いいことないな……」
友達は笑いながら答えた。
「十分目立ってる時点で手遅れだよ」




