37話 テレビ放送 思っていたのと違いすぎる。はめられた。
午後6時。
「始まるわよ!」
母は夕食を少し早めに並べ、父はテレビの前に座ってリモコンを握っている。
主人公だけはソファの端で小さくなっていた。
「……今からでもチャンネル変えない?」
「ダメ。」
両親の返事がきれいに重なる。
「息ぴったりだね……。」
画面にニュース番組のオープニングが流れる。
政治、天気、スポーツと続き、キャスターが笑顔で次の話題を紹介した。
「続いては、こちらの特集です。」
テロップが大きく映る。
『街で話題! 美人でスタイルいいのに恋人がいない中校生』
「うわぁぁぁ!」
主人公はクッションに顔を埋めた。
「タイトルでもう帰りたい!」
画面には制服姿で歩く主人公。
続いて体育館、運動場、海辺で撮影した映像が次々と流れる。
ナレーションが入る。
「学校では明るく親しみやすい性格で人気者。しかし、恋人がいないことが学校中で話題になっているそうです。」
主人公が頭を抱える。
「なんでニュースで全国放送する内容なの!」
父は感心したように言う。
「編集うまいなぁ。」
「そこ感心するとこ!?」
学校でのインタビューも始まった。
「彼女ってどんな人ですか?」
クラスメイトA。
「優しいですし、面白い人ですよ。ツッコミうまいし」
主人公は、ほめるところツッコミかよってツッコミしてた。
しかし次の一言。
「でも恋人がいないのは本当に不思議ですね。すごく美人で胸大きくスタイルいいのに」
スタジオから笑い声が漏れる。
「えっ!」
続いてクラスメイトB。
「性格も悪くないですし。」
主人公はうなずく。
「そうそう。」
「なのに恋人がいないんですよ。」
スタジオ出演者が思わず吹き出す。
「不思議ですよね。」
「本人も『なんでだろう』って笑ってました。」
主人公はテレビに向かって身を乗り出す。
「そんなコメントしてない!」
さらに先生まで登場する。
「明るくて頑張り屋です。」
主人公は安心する。
「ありがとうございます!」
「もう少し積極的になれば、すぐご縁はあると思います。」
スタジオがまた笑いに包まれる。
主人公はソファに倒れ込んだ。
「先生まで乗っかるんですか!」
特集の最後。
ナレーションが流れる。
「多くの人から応援される主人公。素敵な出会いが訪れる日は来るのでしょうか。」
画面には夕日を見つめる主人公の映像。
主人公はツッコむ。
「この映像、何のドラマなの!」
番組は10分ほどで終わり、ニュースは次の話題へ。
リビングは静かになった。
父がぽつりと言う。
「全国デビュー、おめでとう。」
母も満面の笑み。
「よく映ってたわよ。」
主人公は深いため息をつく。
「……学校行きたくない。」
すると携帯が震え始めた。
メッセージが次々と届く。
「見たよ!」
「ニュース出てた!」
「明日学校で感想聞かせて!」
主人公は天井を見上げて苦笑した。
「……明日が一番大変な気がする。」




