33話 弟のテスト勉強
弟は、母に教えてもらいながら、一生懸命に勉強していた。
机の上にはタブレットが一台置かれ、画面には教科書や問題集が表示されている。どうやら、もうすぐ学年末テストがあるらしい。
弟は専用のペンを握り、タブレットの画面に計算式や答えを直接書き込んでいた。
答えを書き終えると、すぐに画面上で自動採点が行われる。正解なら丸が表示され、不正解なら間違えた部分が赤く示され、簡単な解説まで表示された。
弟は間違えるたびに、書いた部分を指で消し、解説を確認しながらもう一度計算し直している。
横から画面をのぞいて、私は驚いた。
そこに表示されていたのは、前世でいえば中学生レベルの内容だった。弟の年齢で習うには、明らかに難しすぎる。
「こんな問題まで解くの?」
主人公が尋ねると、弟はタブレットの画面を見つめたまま、真剣な顔でうなずいた。
すると母が、優しい声で言った。
「ちゃんと勉強しないと駄目よ。テストに落ちたら、神の世界で勉強することになるの」
「神の世界?」
「そう。そこへ行けば生活には困らないけど、お父さんやお母さんとは離れ離れになってしまうのよ」
母は笑顔だったが、弟のペンを握る手はわずかに震えていた。
「だから、絶対に合格しようね」
「うん……僕、頑張る」
弟は再びタブレットへ向き直り、次の問題に答えを書き込んだ。
一瞬の間を置いて、画面に赤い印が表示される。
弟は悔しそうに唇をかみ、解説を読みながら、もう一度計算式を書き始めた。
主人公は何も言えなかった。
この世界で言う「神の世界」が、本当に楽園のような場所なのか。
それとも――二度と家族のもとへ帰れない、別の何かなのか。
母の笑顔を見ていると、聞くことができなかった。




