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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
転生した世界。皆が豊かで平和すぎる世の中だったのに私だけ彼氏がいない。

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25話 転生したら予防医療は徹底されていた。

ある日、携帯に一件の通知が届いた。


画面には、大きく「定期健康診断のお知らせ」と表示されている。


日時と病院は、すでに指定されていた。ただし、都合が悪い場合は事前に連絡すれば、別の日に変更できるらしい。


「ずいぶん親切だな」


そう思いながら説明を読み進めていくと、最後の一文を見て目が止まった。


――国民は、年一回指定された健康診断を必ず受診しなければならない。


この国では、健康診断を受けることが法律で義務化されていた。


それだけではない。


歯科検診も三か月に一度受けなければならず、虫歯や歯周病の検査だけでなく、歯のクリーニングまで義務になっていた。


病気になってから治療するのではなく、徹底的な検査によって病気を未然に防ぐ。


それが、この国の医療制度の基本方針らしい。


「健康管理まで法律で決められているんだ……」


少し窮屈な気もしたが、費用はすべて国の補助金で賄われ、健康診断も歯科検診も無料だった。


さらに、検査によって病気が見つかり、治療や通院が必要になった場合でも、自己負担は医療費の一割だけだった。


前世と比べれば、驚くほど安い。


指定された日、主人公は病院へ向かった。


受付では携帯の通知画面を見せるだけで手続きが終わり、すぐに検査が始まった。


検査内容は、前世で受けていた人間ドックよりも、さらに詳しく身体の隅々まで調べるものだった。


身長や体重、血圧、視力、聴力。


採血や尿検査、心電図、胸部の撮影、腹部の検査まで、全身を細かく調べられた。


女性の場合は、それらに加えて乳房や子宮の検査も行われる。


「次は婦人科の検査です」


看護師に案内され、専用の診察室へ入った。


診察台の周囲には大きな仕切りがあり、下半身側と上半身側が完全に壁で分けられていた。


医師から患者の顔が見えなくなっており、患者も診察を担当する医師と顔を合わせなくて済むように配慮されているらしい。


「恥ずかしくないようにしてあるんだ……」


少し安心したものの、検査が始まると緊張で体に力が入った。


「力を抜いてください。すぐに終わりますよ」


仕切りの向こうから、医師の落ち着いた声が聞こえる。


けれど、器具が入った瞬間、下腹部に鈍い痛みが走った。


「いたっ……」


思わず小さな声が漏れた。


「少し痛みますね。もう少しだけです」


数分ほどで検査は終わったが、診察台を下りたあともしばらく違和感が残っていた。


健康診断を受けている最中、歓声と悲鳴が聞こえてきた。


「よっしゃ! 今年も基準内!」


「うそ……体脂肪率、0.4%オーバーしてる……」


「私は体重が軽すぎる! 去年より税金上がるじゃん!」


主人公は首をかしげた。


「健康診断だよな? なんでみんな通知表を見る受験生みたいになってるんだ?」


横にいた係員のお姉さんが、当然のように説明した。


「18歳以上になると、身長に応じて国が定めた体重と体脂肪率の基準があるの。その範囲から外れると、翌年度の所得税が加算されるのよ。みんなは『健康税』って呼んでるわ」


「健康税!?」


「はい。太りすぎても増税、痩せすぎても増税です」


「逃げ道がない!」


検査結果の画面には、大きく三つの区分が表示されていた。


適正範囲 追加税なし


注意範囲 税率加算


要改善範囲 さらに加算


主人公の前にいた男性は、結果を見た瞬間に両手を上げた。


「体脂肪率18.0%! ど真ん中だ!」


係員も拍手する。


「おめでとうございます。今年も追加負担なしです」


「健康診断で『おめでとうございます』って言われる理由が税金なの、おかしくない?」


一方、隣の女性は画面を見て固まっていた。


「……体重、基準より800グラム少ない」


「来年度は軽度加算ですね」


「800グラムで!?」


「規則です」


女性は慌てて荷物の中から飲み物を取り出した。


「今から水を1リットル飲んだら再測定できますか!?」


「できません」


「そんなぁ!」


さらに奥では別の男性が叫んでいた。


「昨日ラーメン食べなきゃよかったー!」


主人公は思わず突っ込む。


「いや、一日でそんなに変わらないだろ!」


健康診断会場では今日も、病気が見つからなかったことよりも、税金が増えなかったことを喜ぶ人々の声が響いていた。


すべての検査が終了すると、受付で結果について説明された。


「詳しい結果は、数日後に携帯へ送られます。再検査が必要な場合も、同じアプリから予約できます」


紙の診断書を取りに来る必要もない。


検査結果だけでなく、医師からの助言や、前年の数値との比較までスマホで確認できるらしい。


数日後、本当に結果が届いた。


幸い、大きな異常はなかった。


画面には、食事や運動についての簡単な助言と、次回の歯科検診の日程まで表示されていた。


学校では、この健康診断について妙な噂も流れていた。


「健康診断をちゃんと受けると、将来、子どもを授かりやすくなるんだって」


「本当なの?」


「病気や体の異常を早く見つけられるから、結果的にはそうなるらしいよ」


医学的な説明がいつの間にか広まり、健康診断を受ければ妊娠しやすくなる、という単純な噂に変わってしまったようだった。


本当かどうかは分からない。


けれど、国民全員が定期的に検査を受け、病気になる前に治療できる制度は、悪いものではないと思った。


少なくとも、前世のように費用を心配して病院へ行くのを我慢する必要はない。


ただし、三か月に一度の歯科検診だけは少し面倒だった。


携帯にはすでに、次の通知が届いていた。


――次回歯科検診まで、あと二週間です。


「忘れる暇すら与えてくれないんだ……」


主人公は苦笑しながら、通知を閉じた。


男性には別の検査があるらしい。

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