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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
転生した世界。皆が豊かで平和すぎる世の中だったのに私だけ彼氏がいない。

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22話 三大義務が違う世界 〜社会の授業〜

今日は、週に一度だけある必須科目の社会の授業の日だった。


この国では、社会はそれほど重要視されていないらしく、授業は週に一回だけ。試験もないらしい。


もっと詳しく学びたい生徒は、選択科目として社会を取ればいいらしい。


先生いわく、


「全員が覚えるのは、生活するうえで必要な最低限だけです」


とのことだった。


主人公はその説明を聞いて、少し安心していた。


――社会なら前世の知識でなんとかなるかも。


そう思っていた。


授業が始まって五分後。


先生が教室を見回した。


「では、簡単な問題です」


主人公は余裕の表情でタブレットを置く。


先生が続ける。


「この国の国民の三大義務を答えてください。では――そこの彼氏いない人」


「誰が『そこの彼氏いない人』ですか!もっと他に呼び方ありますよね!?」


主人公が即座に立ち上がった。


クラスのあちこちから声が飛ぶ。


「ちゃんと反応した!」


「自覚あるんだ!」


「出席番号より分かりやすい!」


「分かりやすくない!」


主人公は机を叩きながら抗議する。


「普通に名前か『そこの人』でいいじゃないですか!」


先生は涼しい顔。


「でも、あなたしか該当しませんから」


教室がドッと沸いた。


先生は黒板代わりの電子ボードを指す。


「はいはい。それでは三大義務をどうぞ」


主人公は自信満々に答えた。


「納税の義務、勤労の義務、教育の義務です!」


完璧。


少なくとも主人公の記憶では完璧だった。


ところが――。


シーン……。


教室が静まり返った。


主人公は周囲を見る。


みんなが、


「何言ってるの、この人?」


という顔でこちらを見ていた。


「……え?」


先生も無言。


「先生?」


「……」


「私、答えましたよ?」


先生は小さくため息をついた。


「はい。見事に間違いです」


「えぇっ!?」


主人公は勢いよく立ち上がった。


「そんなはずありません! 三大義務といえば納税、勤労、教育ですよ!」


先生は何も言わず、電子ボードに大きな文字を書いた。


『国民の三大義務』


その下に――。


『納税』


『勤労』


そして。


『子作り』


主人公は固まった。


三秒ほど停止する。


そして叫んだ。


「子作りぃ!?」


教室が大爆笑に包まれた。


「何その反応!」


「初めて聞いたみたい!」


「そこ一番大事じゃん!」


主人公は電子ボードを指さす。


「いやいやいや! 三つ目だけ方向性おかしくない!?」


先生は首を傾げた。


「どこがですか?」


「どこがって!?」


主人公はもう一度文字を見る。


納税。


勤労。


子作り。


「一個だけ急に家庭事情に踏み込んでません!?」


クラスメイトが笑いながら言う。


「普通でしょ?」


「常識だよ?」


「小学生の社会の時間に習ったじゃん」


「えぇ……」


主人公は慌ててタブレットを開いた。


社会科の教科書を検索する。


『国民の三大義務』


すぐにページが表示された。


そこには堂々と書かれていた。


――国民の三大義務。


一、納税。


二、勤労。


三、子作り。


主人公は画面を二度見した。


主人公は先生を見る。


「教育は!?」


「教育は大切ですよ」


「ですよね!」


「ですが三大義務には含まれません」


「外された!?」


先生は淡々と説明する。


「この国では、国を維持するために納税、勤労、子作りが国民の基本的な義務とされています」


主人公は頭を抱えた。


「最後だけインパクト強すぎて前二つが頭に入ってこない!」


すると後ろの男子が言った。


「でも覚えやすいじゃん」


「覚えやすさで憲法決めないで!」


先生は主人公を見て、ニヤリと笑った。


「まあ、三大義務も知らないようでは、彼氏ができないのも納得ですね」


「そこにつなげる!?」


また教室が爆笑する。


「先生、社会の授業ですよ!」


「恋愛相談じゃないですよ!」


「進路指導にはまだ早い!」


主人公も負けずに言い返す。


「三大義務を一問間違えただけで彼氏できない判定は飛躍しすぎです!」


先生は肩をすくめた。


「冗談ですよ」


「目が笑ってません!」


「でも試験には出します」


「急に真面目!」


先生は電子ボードを指した。


「納税」


クラス全員。


「納税!」


「勤労」


「勤労!」


「子作り」


「子作り!」


主人公だけ叫ぶ。


「復唱させるなー!」


その瞬間、授業終了のチャイムが鳴った。


主人公はぐったりしながら机に突っ伏す。


「社会……怖い……」


しかし地獄は終わっていなかった。


廊下に出た瞬間、クラスメイトがやってくる。


「問題です。国民の三大義務は?」


「やめて」


「一つ目!」


「納税……」


「二つ目!」


「勤労……」


「三つ目!」


主人公は顔を真っ赤にして叫んだ。


「子作り!」


周囲から拍手が起こった。


「正解!」


「成長した!」


「これで彼氏できるね!」


「できないわ!」


主人公は頭を抱える。


「もう三大義務の復唱やめてー!」


その日の社会の授業で主人公が覚えたこと。


この国の三大義務は、


納税。


勤労。


子作り。


そしてもう一つ。


――社会の授業で一度変な回答をすると、しばらくクラスメイトのおもちゃになる。


主人公にとっては、むしろそっちのほうが深刻だった。

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