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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
転生した世界。皆が豊かで平和すぎる世の中だったのに私だけ彼氏がいない。

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21話 別人すぎる!

主人公は「記憶喪失」ということにしてから、少しずつクラスのみんなと打ち解けていった。


以前のように無視されることもなくなり、今では普通に話しかけてもらえる。


というか、最近は普通を通り越して、かなり雑に扱われるようになっていた。


そんなある日の昼休み。


主人公がパンをもぐもぐ食べていると、近くのクラスメイトたちが小学校時代の昔話で盛り上がっていた。


「そういえばさー」


「懐かしいね、それ!」


主人公は少し気になって、何気なく聞いてみる。


「ねぇ」


「ん?」


「記憶喪失になる前の私って、どんな人だったの?」


その瞬間。


教室が――


ザワッ。


「…………」


「え?」


なぜか全員が顔を見合わせる。


そして女子の一人が、恐る恐る聞いた。


「……聞く?」


「え?」


別の男子も真顔になる。


「本当に?」


「覚悟ある?」


「何その重大発表みたいな空気!?」


主人公は思わずパンを持ったままツッコんだ。


女子が深いため息をつく。


「もうね……」


「うん」


「お嬢様みたいにツーーーーン!」


手で鼻を高くするジェスチャーまでつける。


「そんなに!?」


すると男子が胸を張り、昔の主人公の真似を始めた。


「オホホホホ! 庶民とはお話しいたしませんわ!」


「いや絶対そんなこと言ってないでしょ!」


「言ってない」


「言ってないんかい!」


「でもオーラがそうだった」


「オーラで庶民を拒絶してた!」


「何その特殊能力!?」


教室が爆笑する。


さらに別の女子が続けた。


「冗談も全然通じなかったよね」


「そうそう!」


男子が当時を再現する。


「先生! 大変です!」


「どうした?」


「黒板じゃなくて窓に文字書いてます!」


昔の主人公。


真顔「…………」


「……全然面白くありません」


シーーーーン。


男子が震える。


「はい、ここで教室の気温が三度下がります」


「冷房いらず!」


「夏には便利!」


「私を空調設備みたいに言わないで!」


また教室が爆笑。


今度は別の男子が手を挙げる。


「俺なんて、廊下で肩ぶつかったことあるぞ」


「どうなったの?」


「こうなった」


昔の主人公。


「謝りなさい」


男子。


「ご、ごめん」


昔の主人公。


「声が小さいです」


「え」


「誠意が足りません」


「申し訳ありませんでした!」


「もっと」


「大変申し訳ございませんでした!」


主人公が目を丸くする。


「会社の謝罪会見!?」


「先生に怒られるより怖かった」


「校長先生より怖かった」


「警察より怖かった」


「最後盛りすぎでしょ!」


主人公は頭を抱えた。


「えぇ……私、そんなラスボスみたいな人だったの?」


すると。


「ラスボス」「大魔王」「裏ボス」「真のラスボス」「隠しボス」「追加DLCボス」


「増えた! どんだけボスいるの!?」


全員ほぼ一致だった。


主人公は机に突っ伏す。


「記憶なくてよかったかもしれない……」


女子が笑いながら言う。


「でもね、小学校五年生くらいまではすっごく人気あったんだよ」


主人公が顔を上げる。


「えっ?」


「美人だったし」


「今も美人だけど」


「男子からかなり人気あった」


主人公の顔が少し明るくなる。


「へぇ!」


「何人も好きだったらしいよ」


「おお!」


「でも――」


「でも?」


急に女子が遠い目をする。


「学年が上がるにつれて、みんな恋人ができ始めて……」


男子が肩をすくめる。


「お前は話しかけるだけで怒りそうだったから、誰も告白できなかった」


「そんな理由!?」


「近づくだけでダメージ食らうし」


「毒の沼みたいに言わないで!」


「恋愛ゲームなのに初期好感度マイナス百」


「低すぎる!」


「選択肢を一回間違えるとゲームオーバー」


「鬼ゲーじゃん!」


「攻略難易度★★★★★」


「最高難易度!?」


「攻略サイト必須」


「攻略サイトあっても無理」


「そこまで!?」


教室はまた大笑い。


すると女子が、今の主人公をじっと見る。


「でも今は全然違うよね」


「うんうん」


「話しかけやすい」


「冗談言っても怒らないし」


「多少いじっても大丈夫」


その言葉を聞いた男子が、何かを思いついた。


そーっと主人公の後ろへ回る。


そして――


頭の上に消しゴムを置いた。


「……」


主人公はしばらく気づかない。


クラスメイトたちは必死に笑いをこらえる。


「?」


主人公が頭に手をやる。


「なにこれ?」


消しゴムを見て笑う。


男子がガッツポーズ。


「成功!」


「何が成功なのよ!」


「前なら絶対無理だった!」


「前の私だったらどうなるの?」


その瞬間。


全員が姿勢を正した。


そして昔の主人公を一斉に再現する。


「誰が置いたんですの?」


「名乗り出なさい」


「今すぐです」


「三秒以内です」


「一」


「二」


「待って待って怖い怖い!」


「学級裁判を開始します」


「罪状、消しゴム頭上設置罪」


「判決!」


「有罪!」


「勝手に裁判進めないで!」


教室中が大爆笑。


主人公もお腹を抱えて笑っていた。


すると近くで聞いていた担任まで笑いながら口を挟む。


「それ、前の君が聞いたら絶対怒るやつだぞ」


主人公が担任を見る。


「先生まで参加してたんですか!?」


「いや、私は公平な第三者だ」


「さっきめちゃくちゃ笑ってましたよね!?」


「でも今の君なら笑ってくれるからな」


「確かに!」


「今なら消しゴム三個くらいまでいける!」


「増やすな!」


「じゃあ四個」


「交渉するな!」


また教室中に笑い声が響く。


主人公は笑いながら、自分の頭に乗せられた消しゴムを机に置いた。


記憶を失う前の自分がどんな人だったのか。


正直、聞けば聞くほど不安になる。


けれど――


少なくとも今は。


こうしてみんなと笑っていられる。


主人公は少しだけ嬉しくなった。


「……まあ、今のほうがいいか」


すると男子が即答する。


「圧倒的に」


女子も頷く。


「百倍いい」


「前は話しかけるだけで命懸けだったから」


「だから私は何者だったのよ!」


昼休みの教室に、また大きな笑い声が響いた。

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