20話 特別授業
朝から、男子生徒たちは妙にそわそわしていた。
授業中も落ち着きがなく、時計ばかり見ている。
休み時間になると、教室の後ろで男子たちが集まって、ひそひそ話を始めた。
「今日、初めての特別授業だよな」
「優しい先生が担当になるといいな」
「俺は優しいより、厳しめ感じの人がいい」
「技術がうまい先生がいいな。怖い先生だったら最悪だぞ。毎回怒られるし」
男子たちは、まるで遠足前の小学生みたいに盛り上がっていた。
主人公は近くにいた男子に聞いてみた。
「特別授業って、何を勉強するの?」
すると、男子は露骨に目をそらした。
「い、いろいろだよ」
「いろいろって何?」
「将来に必要なこと」
「数学も将来に必要だけど?」
「そういう将来じゃない!」
「どういう将来なのよ!」
質問するたびに男子の顔が赤くなっていく。
ますます怪しい。
昼休みが終わると、担任が教室に入ってきた。
「午後から、女子は全員下校してください。男子は教室に残るように」
「はーい」
女子たちは鞄を持ち始めた。
主人公だけは状況が理解できず、席に座ったまま周囲を見回した。
「本当に女子は帰っていいんですか?」
「ええ。女子には関係のない授業です」
「そんなにはっきり仲間外れにされる授業ある!?」
担任は何も答えず、男子たちの方を見た。
「なんで男子だけ?女子は関係ないの?」
隣を歩いていた女子に尋ねると、彼女は当然のようにうなずいた。
「男子だけの特別授業だからね、一対一で授業し最低月二回あるらしい。しかも熟練度次第では補習もあり国家試験に合格するまで挑むって彼から聞いてるわ」
「何をするの?」
「知らない。男子は授業の内容を女子に話しちゃいけない決まりなの」
「秘密なの!?」
「そう秘密の授業だよ、男子は国家試験に絶対に合格しないといけないわよ」
校門から出ようとした、そのときだった。
反対側から、大勢の女性たちが校内へ入ってきた。
若い女性が多かった。
しかも、一人や二人ではない。十人以上いる。
主人公は思わず立ち止まった。
「えっ、何、この女性たち」
女性たちは受付で名札を受け取り、次々と校舎へ入っていく。
その名札には、そろって同じ文字が書かれていた。
『特別授業・外部講師』
「全員、先生なの!?」
近くにいた女子が笑った。
「今日は初めての一年生の授業だから、比較的人数が多いんじゃない?」
「男子5人につき先生一人みたいな勢いなんだけど!」
校舎の二階を見ると、窓際に男子たちが並んでいた。
さっきまでやさしい先生がいいと騒いでいた男子たちが、今では全員、緊張した顔で外を見下ろしている。
校内放送が流れる。
『これより特別授業を開始します。関係者以外は速やかに下校してください』
「だから何の授業なのよ!」
主人公の叫びだけが、校門前にむなしく響いた。




