↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
その後の世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

163/164

163話 激怒した。

「…………は?」


主人公はもう一度検索結果を見る。


『慈悲深き神々が築いた平和な世界』


『邪悪なる魔王の侵攻』


『人類を救った最高神』


『魔王はなぜ世界を破壊したのか』


「いやいやいやいや……」


次々とサイトを開く。


どこを見ても同じだった。


――慈悲深き神々は、人類を守った。


――邪悪なる魔王が、突然世界を襲った。


――神々は人類のために命を懸けて戦った。


――最高神が魔王を倒し、人類を救った。


主人公はゆっくりタブレットを机へ置いた。


そして――。


「ふざけるなああああああああっ!!」


ドンッ!!


机を思い切り叩いた。


タブレットが跳ね上がる。


「誰が邪悪な魔王だ!!」


主人公は画面を指差した。


「お前らが神様って呼んでる連中――魔物だからな!!」


主人公だけは知っている。


当時の人類は知らなかった。


いや。


知らされていなかった。


神々と呼ばれていた存在の正体は、人類を守る慈悲深い存在などではない。


人類を支配していた魔物だった。


食料を与える。


争いを止める。


犯罪を取り締まる。


皆が結婚できるようにする。


税金を安くする。


豊かな生活が出来る。


誰もが安定して暮らせる社会を作る。


確かに、表面だけを見れば理想郷だった。


だが――。


それは人類のためではない。


魔物たちが、人間社会を完全に管理するために作り上げた世界だった。


主人公は再び検索結果を見る。


『神々によって守られていた人類』


「守っていた?」


別の記事を開く。


『神々の慈悲によって飢えのない社会が実現していた』


「慈悲?」


さらに別の記事。


『魔王によって破壊された幸福な世界』


主人公の額に青筋が浮かんだ。


「違うだろ!!」


主人公には記憶がある。


そこには、人類には決して知らされていない真実が隠されていた。


40〜50歳前後で、子どもが成人してた親。


素行が悪いと判断された子どもや、知能が低いと見なされた子ども。


中学校を卒業しても彼氏や彼女がいない者。


障害を持つ者。


重い病気を患っている者。


さらには、軽微な犯罪を犯した者まで――。


さまざまな理由をつけられ、人々は次々と「神の世界」へ連れていかれていた。


そして、神の世界へ送られた者たちは、一部の例外を除き、およそ1年後、殺されていた。


殺された人間の身体は解体され、肉が集められる。


その量は、あまりにも膨大だった。


神の世界の施設には、人間から切り取られた肉が巨大な塊となり、まるで山のように積み上げられていた。


そして、その肉は――。


神様――いや、魔物たちの食料だった。


人類には、その存在すら知らされていない施設。


そこで何が行われているのか。


俺は、自分の目で見てしまった。


だからこそ――破壊した。


確かに都市を攻撃した。


食料を奪った。


日用品も奪った。


車も飛行機も船も奪った。


人類の軍隊とも戦った。


だが――。


主人公にとって、それは人類を滅ぼすための戦争ではない。


魔物による支配を終わらせるための戦争だった。


「俺が誰のために戦ったと思ってるんだ!!」


部屋中に主人公の声が響いた。


「人類のためだぞ!!」


神々――。


いや、魔物たちは強かった。


主人公は何度も傷ついた。


何度も追い詰められた。


何度も死にそうになった。


それでも戦った。


神の世界へ攻め込んだ。


魔物たちを少しずつ倒していった。


そして最後には、魔物たちの頂点に立つボスまで現れた。


主人公と魔物のボスは死闘を繰り広げた。


その結果――。


ネット上では。


『最高神は、自らの命と引き換えに魔王を討ち取った』


ことになっていた。


主人公は画面を見つめる。


「…………」


自分の身体を見る。


手がある。


足もある。


呼吸もしている。


「俺、転生して生きてるんだけど」


転生しているとはいえ、本人であることには変わりない。


「勝手に殺すな!!」


さらに腹が立つことがあった。


魔物による支配が終わったあと、人類は自分たちで社会を作り始めた。


当然、最初からうまくいくはずがない。


資源を巡る争いも起きた。


戦争も起きた。


犯罪も増えた。


貧しくもなった。


飢饉も起きた。


国同士の対立も生まれた。


すると、後世の人間たちはこう考えた。


――神々がいた時代は平和だった。


――魔王が神々を滅ぼした。


――魔王のせいで貧しくなった。


――だから世界は不幸になった。


主人公は頭を抱えた。


「そこだけ比較するな!!」


確かに、魔物が支配していた時代は平和だった。


戦争もない。


犯罪も少ない。


飢える者もいない。


皆が豊かな生活をできる。


生活にも困まる人も一切いない。


だが――。


それは、自由のない平和だった。


人間の生き方を魔物が決める。


社会の形を魔物が決める。


未来さえ魔物が決める。


人間には、それに従うことしか許されていなかった。


主人公は検索画面を睨みつける。


「俺が命懸けで倒した連中を神様扱いして……!」


次の記事を指差す。


「人間を支配していた連中を救世主にして……!」


そして自分を指差した。


「人類を助けるために戦った俺を、世界を滅ぼした魔王にするのかよ!!」


検索結果の中に、こんな記事があった。


『魔王の恐怖を永遠に忘れてはならない』


主人公の頬が引きつった。


「…………」


記事を開く。


最後には大きく書かれていた。


――人類は、魔王の恐怖を永遠に語り継がなければならない。


数秒の沈黙。


そして――。


「語り継ぐなああああああああっ!!」


主人公は再び机を叩いた。


「俺が誰のために戦ったと思ってるんだ!!」


荒い息を吐きながら、主人公は窓の外を見る。


そこには、魔物の支配から解放された人類の世界が広がっていた。


完璧な世界ではない。


争いもある。


犯罪もある。


貧しい者もいる。


失敗する者もいる。


間違った選択をする者もいる。


問題だらけだった。


それでも――。


主人公は静かに呟く。


「……少なくとも、自分たちで選べる世界にはなっただろ」


魔物に与えられた幸福ではない。


失敗する自由がある。


間違える自由がある。


自分で生き方を決める自由がある。


それでも人間自身が、自分たちの未来を決められる世界だった。


「人類を、魔物に支配された不自由な世界から解放してやったのに……」


主人公は再びタブレットを見る。


検索結果の一番上には、こう表示されている。


『人類史上最大の大悪党――魔王』


主人公のこめかみに再び青筋が浮かんだ。


「それで俺が魔王なのか?」


画面を指差す。


「ふざけんなああああああああっ!!」


こうして主人公は――。


数百年後の世界でネット検索をした結果、


自分が人類史上最大の悪人として世界中に知られていることを知り、


さらに激怒したのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。