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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
その後の世界

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162/164

162話 その後の歴史

主人公は、この世界の歴史について調べることにした。


自分が死んでから、いったい何があったのか。


何百年もの間に、世界はどのように変わったのか。


主人公はタブレットを開き、検索欄に文字を入力した。


『魔王 歴史』


検索ボタンを押す。


すると、一瞬で大量の検索結果が表示された。


『人類史上最大の災厄――魔王とは』


『神々と魔王の最終戦争』


『世界を救った最高神』


『なぜ神々は滅びたのか』


『学校で学ぶ世界史――魔王戦争』


「ずいぶん有名なんだな……」


主人公は、一番上に表示された歴史解説サイトを開いた。


そこには、大きな見出しが表示されていた。


――この世界には、かつて神々が存在していた。


神々は人類を見守り、その加護のもと、人々は平和に暮らしていた。


犯罪はほとんどない。


国同士の争いもない。


飢える者もいない。


食料は安い。


税金も安い。


誰もが結婚でき、町には多くの子どもたちの声があふれていた。


生活は豊かで、誰もが明日の暮らしを心配することなく、穏やかに暮らしていた。


人々は、そんな世界が永遠に続くものだと思っていた。


――あの日までは。


「……なんだこれ」


主人公は画面を下へスクロールした。


『魔王の出現』


ある日、突然、一人の魔王が現れた。


画面には、当時の資料をもとに再現されたというイラストが表示されている。


長い髪。


派手なフリル。


巨大なリボン。


ひらひらしたスカート。


そして、ハート形の飾りが付いたキラキラのステッキ。


どう見ても――。


過去の主人公だった。


その画像の下には、説明文まで書かれていた。


『男性でありながら少女のような奇抜な服装をしており、その異様な姿は当時の人々に強い恐怖と嫌悪を与えたとされる』


主人公の眉がぴくりと動く。


「……余計なお世話だ」


さらにスクロールする。


『魔王による人類への攻撃』


魔王は突如として世界各地への攻撃を開始した。


都市を破壊した。


食料を奪った。


日用品を奪った。


車を奪った。


飛行機を奪った。


船を奪った。


魔王に対抗するため、人類は軍隊を出動させた。


戦車。


戦闘機。


ミサイル。


ありとあらゆる兵器が投入された。


しかし――。


そのすべてをもってしても、魔王にはほとんど通用しなかった。


そして神々もまた、人類を守るために立ち上がった。


だが、神々の攻撃ですら、魔王にはわずかな傷しか与えられなかったという。


やがて魔王は、人類の都市だけでは飽き足らず、神々が暮らす神の世界へと侵攻した。


主人公の指が止まった。


「神の世界……」


懐かしい言葉だった。


だが、サイトの説明は続いている。


神々は総力を挙げて魔王を迎え撃った。


空を埋め尽くすほどの光。


大地を震わせる神術。


海を割るほどの攻撃。


それでも魔王は止まらなかった。


一柱。


また一柱。


神々は次々と倒れていった。


そして、ついに――。


神々は全滅した。


人類は絶望した。


守ってくれる存在は、もういない。


世界は魔王に支配される。


誰もがそう考えた。


そのとき――。


長い旅に出ていた、神々の頂点に立つ最高神が帰還した。


「……あいつか。魔物たちのボスか」


主人公は画面を睨んだ。


最高神は荒れ果てた世界を目にして激怒した。


そして魔王との最後の戦いが始まった。


その戦いは、世界の形さえ変えるほど激しいものだったとされている。


町が消えた。


大地が裂けた。


山が崩れた。


空が赤く染まった。


そして最後に――。


最高神の一撃が、魔王を貫いた。


魔王は倒れた。


人類は救われた。


しかし、最高神もまた、魔王から受けた傷によって力尽きた。


こうして世界から、すべての神々が姿を消した。


主人公は無言で画面をスクロールし続けた。


次の項目には、こう書かれていた。


『神々を失った世界』


神々が消滅したあと、それまで神々によって管理されていた世界の仕組みは急速に崩れていった。


資源の公平な分配は行われなくなった。


豊かな国は資源を囲い込んだ。


貧しい地域では食料が不足した。


水を巡る争いも起きた。


やがて小さな争いは、大規模な戦争へと発展した。


犯罪も増えた。


物資が不足し、食料さえ十分に行き渡らなくなった。


その一方で、富は一部の人間に集中していった。


次第に、人々の暮らしは貧しくなっていった。


飢える者が現れた。


故郷を失う者も現れた。


そして、昨日まで隣人だった者同士が、わずかな食料を巡って争うことさえあった。


人類はそこで初めて理解した。


――自分たちが当たり前だと思っていた平和は、神々によって守られていたものだった。


さらに下には、現在の学校教育についても書かれていた。


『現在でも、この歴史は世界中の学校で小学生の必修科目として教えられている』


かつて、この世界には神々がいた。


人類は平和に暮らしていた。


突然現れた魔王が、その平和を破壊した。


神々は人類を守るために戦い、全滅した。


最後には最高神が自らの命と引き換えに魔王を倒した。


そしてページの最後には、大きな文字でこう書かれていた。


――我々は、魔王によって滅亡寸前まで追い詰められた。


――我々は、神々の尊い犠牲によって生き延びた。


――我々は、神々の加護を失い、不幸な時代を迎えた。


――平和とは、決して当たり前に存在するものではない。


その下には、さらに太字で表示されていた。


『神々のいた平和な世界を、決して忘れてはならない』


そして――。


『魔王は、人類史上最大の大悪党であり、その罪は永遠に許されることはない』


主人公は画面を見たまま動かなくなった。


「…………」


念のため、別のサイトも開いた。


ほとんど同じことが書いてある。


百科事典。


政府の歴史資料。


学校教育用サイト。


動画サイトの歴史解説。


どれを見ても内容は同じだった。


――神々は善。


――魔王は悪。


――最高神が世界を救った。


主人公の手が、小刻みに震え始めた。

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