15話 ごみの管理も徹底されていた
ある日、主人公が食べ残したものを「燃えるごみ」と書かれたごみ箱へ捨てようとすると、母に止められた。
「ちょっと、それはそこじゃないわよ」
「え?」
「食べ物は生ごみだから、こっちに捨てなさい。ちゃんと分別しないと、罰金が来るわよ」
母に言われ、主人公は慌てて隣にある生ごみ用のごみ箱へ入れ直した。
どうやら、この世界では生ごみまできちんと分別しなければならないらしい。
商品に使われている容器についても、使い終わったあとは購入した店や回収を行っている店舗へ返却する仕組みになっていた。
容器代はあらかじめ商品の価格に含まれており、返却すると、その一部が自動的に返金される。
さらに、商品や容器にはそれぞれ分別用のマークが記載されていた。ごみとして捨てる場合には、そのマークに対応した回収場所へ入れなければならない。
そして、その分別状況は行政によって管理されていた。
もし間違った場所へごみを捨ててしまえば、登録されているメールアドレスへ注意の連絡が届く。
もちろん、一度や二度間違えただけで、すぐに罰せられるわけではない。
しかし、何度注意されても改善しなかった場合には、罰金が科されることになっていた。
しかも、その罰金は登録されている銀行口座から自動的に引き落とされる。
「でも、どうやって誰が捨てたのか分かるんだろう?」
主人公が疑問に思って尋ねると、母は何でもないことのように答えた。
「ごみ捨て場にはカメラが設置されているから、すぐに分かるのよ」
「そこまで管理されてるのか……」
かなり厳しい仕組みに思えた。
だが、その代わり、ごみを捨てる場所そのものには、あまり制限がなかった。
きちんと分別さえしていれば、決められた地域のごみ捨て場だけでなく、コンビニや駅、商業施設などに設置された公共の回収場所へ捨てることもできる。
ある日、主人公は母と買い物に出かけた帰り、コンビニの前に並んでいる大きな分別用のごみ箱を見つけた。
ちょうど手には、飲み終わった飲料の容器と、食べ終わった菓子の容器が残っている。
「これ、ここに捨ててもいいの?」
「もちろんよ。マークを見て、同じマークのところに入れればいいわ」
主人公は容器に描かれたマークを確認し、対応する回収口へ入れた。
そこで、ふと疑問に思った。
「でも、ここに捨てるのって、お金かからないの?」
「かからないわよ」
母は不思議そうな顔をする。
「普通の生活ごみなら、きちんと分別して回収場所に捨てる限り無料よ」
「無料なんだ……」
「そうよ。家のごみ捨て場でも、コンビニでも、駅でも同じ。ごみを捨てるために、そのたびにお金を払う必要なんてないわ」
主人公は少し驚いた。
これだけ厳しくごみを管理しているのだから、てっきり捨てる際にも料金を取られるものだと思っていたのだ。
「分別には厳しいのに、捨てるのは無料なんだな」
「お金を取ったら、捨てるのを嫌がる人が出てくるでしょう? だったら、ちゃんと分別してくれた人には、簡単に捨ててもらったほうがいいのよ」
「なるほど……」
確かに、そのほうが合理的だった。
飲み物の容器などは、対応した回収機に入れるだけで、自動的に容器代の一部が返金される仕組みになっている。
つまり、お金を取られるどころか、種類によっては返金まで受けられるのだ。
特に便利なのがコンビニだった。
街のいたるところにあり、出先で出たごみをすぐに捨てることができる。
そのほかにも、駅や商業施設など、さまざまな場所に分別用のごみ箱が設置されているため、外出先で出たごみをわざわざ家まで持ち帰る必要はほとんどなかった。
分別については厳しく管理する。
その一方で、ごみを捨てること自体は無料にし、誰でも正しく分別して簡単に捨てられる環境を整える。
そして、再利用できる容器については、返却すればお金まで戻ってくる。
この世界では、そんな仕組みが当たり前になっていた。




