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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
転生したら男でした。

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135/164

135話 神の領域を上空から探る。

主人公は空軍に入隊すると、パイロットを志望した。


理由は、ただ一つ。


少しでも高い場所から、神の領域の全容を探るためだった。


地上から近づくのは難しい。


神の領域の周囲には巨大な壁が築かれており、一般人はもちろん、軍人であっても許可なく接近することはできない。


だが、航空機なら話は別だった。


もちろん、神の領域そのものの上空は飛行禁止区域に指定されている。


しかし、その周辺空域までなら、訓練飛行や警戒任務で接近することができる。


主人公は、そこに目をつけた。


「だったら……パイロットになるしかない」


そう決めた。


しかし、実際に入隊してみると、主人公は少し驚いた。


今の軍隊は、長い平和の中にあった。


戦争もない。


大規模な紛争もない。


軍が実戦に投入された記録も、何十年も前のものばかりだった。


そのためか、訓練に参加している兵士たちにも、どこかのんびりとした空気が漂っていた。


「今日の訓練、早く終わらないかな」


「終わったら食堂行こうぜ」


「明日は休みだろ?」


「あそこの男の子、女の子みたいでかわいいな」


「…………」


そんな会話が、あちこちから聞こえてくる。


しかも、通常の勤務時間は一日八時間。


大規模な演習でもない限り、ほとんど定時に帰宅することができた。


もちろん当番はあり、ローテーションで夜勤に入ることもある。


それでも、前世の感覚でいえば、かなりのホワイトな職場だった。


主人公は軍隊というものに、泊まり込みの訓練や厳しい勤務が続く、もっと過酷な場所というイメージを抱いていた。


それだけに、少し拍子抜けしてしまった。


もちろん、全員が不真面目というわけではない。


訓練そのものは、きちんと行われていた。


それでも主人公には、どうしても緊張感が足りないように思えた。


教官ですら、


「まあ、今の時代に本当に空中戦なんて起きないだろうけどな」


と、冗談交じりに話すほどだった。


だが、主人公だけは違った。


主人公には、どうしても成し遂げなければならない目的があった。


神の領域。


そこに何があるのか。


なぜ人間がそこへ送られるのか。


そして、前世で自分が見たものは、いったい何だったのか。


それを確かめなければならない。


だからこそ、主人公は訓練にも一切手を抜かなかった。


航空力学。


気象学。


航法。


通信。


航空機の構造。


緊急時の対応。


主人公は、寝る時間を削ってまで勉強した。


飛行訓練にも、教官が驚くほど真剣に取り組んだ。


「もっと高度を維持しろ!」


「はい!」


「旋回が遅い!」


「もう一度お願いします!」


「おまえ、本当に熱心だな。それに、かわいい顔して根性もある」


失敗すれば原因を記録し、家へ戻ってから何度も復習した。


その様子を見た周囲からは、


「お前、そんなに本気でパイロットになりたいのか?」


と、呆れられることもあった。


主人公は、いつも笑ってごまかした。


「まあね」


本当の理由など、話せるはずがなかった。


そもそも、ここまで本気で軍のパイロットを目指している者は、主人公くらいだった。


純粋に飛行機が好きな者の多くは、待遇がよく、自由度も高い民間航空会社を目指す。


わざわざ軍用機の操縦士になろうとする者は、それほど多くなかった。


そんな中で、主人公だけが異様なほど熱心に訓練を続けていた。


やがて主人公は、厳しい訓練課程を突破し、ついに軍用機のパイロットとなった。


そして数か月後。


ついに、待ち望んでいた機会がやってきた。


神の領域周辺を飛行する訓練任務である。


出発前のブリーフィングで、教官が大型画面に地図を表示した。


「この赤い区域には、絶対に入るな」


赤く示されているのは、神の領域だった。


「飛行禁止区域だ。理由は知っているな?」


隊員たちが一斉に答える。


「はい!」


主人公も、周囲に合わせて返事をした。


しかし、その目は地図に釘付けになっていた。


やがて、訓練飛行が始まった。


軍用機は基地を離れ、徐々に高度を上げていく。


雲を抜ける。


眼下には都市が広がり、その先には道路や森、川が見える。


そして――。


遠くに、巨大な壁が見えてきた。


主人公の心臓が大きく鳴る。


「……あれか」


無線に拾われないほどの小さな声で、そうつぶやいた。


近づくにつれて、その異様な姿がはっきりと見えてくる。


巨大な壁。


しかも、一枚ではない。


主人公は目を細めた。


「二重……?」


外側に巨大な壁。


そして、そのさらに内側にも、もう一つの壁がある。


神の領域は、二重の壁によって囲まれていた。


主人公は飛行を続けながら、可能な限り周囲の地形を頭に焼き付けていく。


山。


川。


谷。


そして、海岸線。


どれも見覚えがあった。


「やっぱり……」


前世で見た地形と、ほとんど同じだった。


都市そのものは大きく変化している。


道路も建物も、前世とはまるで違う。


だが、自然の地形はほとんど変わっていない。


つまり――。


前世の地図を利用できる可能性がある。


主人公の頭の中で、少しずつ情報がつながり始めた。


そして、何より気になったのが、二重の壁だった。


外壁と内壁の間には、かなり広い空間が存在している。


しかし、内壁の向こう側は、現在の飛行経路からではほとんど確認できなかった。


主人公は考える。


――外側は警戒区域。


――そして、内側が……。


「人間の収容区域……?」


前世で神の世界へ送られた人々。


彼らが暮らしていた場所。


おそらく、それが内壁の向こう側にある。


主人公は、確信に近いものを感じていた。


もっと見たい。


あと少し近づけば、何か分かるかもしれない。


だが、その瞬間――。


無線が入った。


『進路注意。飛行禁止区域まで残り十五キロ』


「了解」


主人公は悔しさを押し殺し、決められた航路に従って機体を旋回させた。


ここで規則を破れば、二度とこの空域を飛ばせてもらえなくなるかもしれない。


焦ってはいけない。


今は、少しずつ情報を集めることが最優先だ。


機体が神の領域から離れていく。


主人公は最後にもう一度だけ、その方向へ目を向けた。


二重の巨大な壁。


その向こうに、前世から続く謎が眠っている。


「いつか必ず……中を確認する」


この日の飛行で、主人公は初めて神の領域の構造を、自分の目で確認することができた。


そして、帰還後。


主人公は誰にも知られないよう、自分の端末に記憶した地形を書き起こしていった。


外壁。


内壁。


山。


川。


飛行禁止区域。


軍の監視地点。


一つ一つ、記憶を頼りに記録していく。


まだ分かったことは、ごくわずかだった。


それでも――。


前世では何も知らないまま送り込まれた神の領域に、今度は自分の意思で近づくことができた。


本当に少しずつではある。


だが主人公は、確実に神の領域の秘密へ近づき始めていた。


そして同時に――。


いつか神の領域へ踏み込む、その日のために。


主人公は密かに、神の領域へ至るための地図を作り始めていた。

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