133話 ギャンブル依存症
この国では、成人すればギャンブルをすることが認められていた。
成人年齢は十八歳。
パチンコ、パチスロ、競馬、競輪、ボートレース。さらにはカジノまで存在している。
ただし、依存症対策として厳しい制限も設けられていた。
その中で、妻がすっかりハマってしまったのが――パチンコだった。
仕事が休みの日になると、かなりの頻度で店へ通っている。
ある日、主人公が家に帰ると、珍しく妻がリビングにいた。
「……あれ?」
いつもなら、この時間はパチンコに行っているはずだ。
最近は妻が家にいない時間が増えていたので、主人公としては密かに喜んでいたのだが――今日は違った。
妻はソファに座り、明らかに不機嫌そうな顔をしている。
「どうしたんだ?」
主人公が聞くと、妻は悔しそうに答えた。
「あと一歩だったのよ!」
「何が?」
「もう少しで出そうだったのに、今月の利用制限に引っかかったの! もう打てないじゃない!」
「ああ……」
この国では、ギャンブルに使える金額は、本人が働いて得た収入の二十パーセントまでと法律で決められている。
依存症や借金を防ぐための制度だった。
「仕方ないだろ。国で決まってるんだから」
「でも、あと少しだったのよ! 絶対に出るところだったのに!」
「パチンコやってる人、みんなそう言うんじゃないの?」
主人公が呆れていると、妻が突然こちらを見た。
「そうだ。今週は、あんたのお金でやればいいのよ」
「やめてください!」
主人公は即座に頭を下げた。
「お願いします! 俺のお金だけは勘弁してください!」
「じゃあ、どうするの?」
妻が楽しそうに笑う。
嫌な予感しかしなかった。
主人公は少し考えた末、覚悟を決めて口を開いた。
「……女装でも何でもしますから」
「本当?」
妻の表情が一気に明るくなった。
「頼む。だから俺の金でパチンコだけはやめてくれ」
「そうねぇ……」
妻は腕を組み、しばらく考えるふりをしたあと、にっこり笑った。
「じゃあ、今週はそれでいきましょう!」
「え?」
「週末、服を見に行くわよ。あんたに似合いそうなの、いっぱい探しましょう」
「ちょっと待て!」
こうして主人公の財布は守られた。
その代償は、予想以上に大きかった。
週末になると、主人公は妻に連れ回され、次から次へとさまざまな服を試着させられた。
ワンピース、スカート、ブラウス。
着替えても着替えても、妻は満足しない。
「次はこれ」
「まだ着るの!?」
「当たり前でしょ。せっかくなんだから」
結局、一日中、散々いろいろな服を着せられることになった。
しかも、それだけでは終わらない。
夕方になり、主人公がようやく解放されると思ったところで、妻が笑顔で言った。
「じゃあ、この格好のままご飯食べに行きましょう」
「着替えさせてくれ!」
「嫌よ」
「お願いだから!」
主人公の必死の抵抗もむなしく――。
その日の夕食は、女装姿のまま外食することになったのだった。




