128話 高校生活
中学校を卒業すると、主人公と彼女は別々の高校へ進学した。
主人公が選んだのは、軍学校。
そして彼女が進んだのは、家庭学校だった。
軍学校では、普通科目に加えて、軍事作戦、戦術、救護、野外活動などを学ぶ。
その中でも特に厳しいのが体力訓練だった。
毎日のように走り込みや筋力トレーニングが行われ、入学して一か月もすると、主人公はすっかり疲れ切っていた。
「高校って、もっと青春する場所じゃなかったっけ……」
放課後、主人公は訓練場の隅でぐったりしながらつぶやいた。
だが、彼女の通う家庭学校も、決して楽な学校ではなかった。
料理、栄養、家計管理、育児、住居管理など、家庭生活に必要なことを専門的に学ぶため、課題も実習も多かった。
幸い、二人の学校はどちらも自宅から通える場所にあった。
そのため、前世のように進学をきっかけに家を出て、一緒に暮らすということにはならなかった。
学校が違うため、毎日会うことはできなくなったものの、だいたい一週間から二週間に一度は予定を合わせてデートをした。
そして、二人のデートはいつも似たような展開になった。
ある日、駅前で待ち合わせをしたときのこと。
彼女は主人公の姿を見るなり、じっと全身を眺めた。
「……少し体つき、変わった?」
「毎日訓練してるからな」
「へえ。軍学校って、本当に鍛えるんだ」
彼女は興味深そうに主人公の腕を軽くつついた。
「前より硬い」
「筋肉だからな」
「でも、顔は疲れてる」
「余計なところまで確認するな!」
彼女は楽しそうに笑った。
「軍人さん、今日は何キロ走ったの?」
「朝から十キロ」
「じゃあ、デートでも十キロ歩けるね」
「休ませろ!」
「軍人でしょ?」
「休日まで軍人扱いするな!」
そんなやり取りをしながら、二人は街を歩いた。
また別の日には、彼女が家庭学校の実習で作った料理の写真を見せてきた。
「今日、これ作った」
「おお、うまそう」
「将来、あなたに作ってあげる」
「それは楽しみだな」
「その代わり、あなたには家の警備をお願いするね」
「俺は警備員になるために軍学校へ行ってるんじゃない!」
「じゃあ、非常時担当」
「家庭内に軍事作戦を持ち込むな!」
またある日のこと。
彼女は一枚の写真を主人公の前に差し出した。
写真には、かわいらしい服を着た彼女が写っている。
「ねえ、これ。この服、私に似合ってるよね?」
主人公は写真をのぞき込んだ。
「うん。かわいいんじゃないか?」
その瞬間、彼女の口元がにやりと笑った。
「でしょ? 私もそう思った」
「なら、なんでわざわざ聞いたんだよ」
「でもね――」
彼女は写真を主人公の顔の横に並べ、しばらく見比べる。
「これ、あんたにも似合うと思う」
「なんでやねん!」
思わず主人公は突っ込んだ。
「絶対かわいいって」
「着ないからな!」
「まだ着てなんて言ってないけど?」
「その顔は絶対に着せようとしてる顔だろ!」
「ふふっ。さすが、長い付き合いね」
「そんなところで感心するな!」
彼女は毎回のように主人公をからかい、主人公はそのたびに突っ込む。
学校は別々になった。
勉強している内容も、目指しているものもまったく違う。
それでも、二人の関係だけは中学生のころとほとんど変わらなかった。
むしろ、毎日会えなくなったからこそ、一週間か二週間に一度のデートは、主人公にとって軍学校の厳しい生活を乗り切るための大きな楽しみになっていた。




