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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
転生したら男でした。

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125話 悪代官

「うぃぃぃぃぃひひひひひ!」


主人公は、朝から笑いが止まらなかった。


片手には、苦労の末に手に入れた国家資格の合格証。


もう片方の手には、彼女と迎えた初めての記念日に撮った写真。


主人公は二つを交互に眺めながら、満面の笑みを浮かべていた。


「国家資格、取得!」


合格証を掲げる。


「彼女との初めての記念日、達成!」


写真を掲げる。


そして、両手を天井へ突き上げた。


「つまり! もう子ども家庭庁のおねいさんには、なーんの用もなーい!」


主人公は、その場で勢いよく一回転した。


「自由! 自由だ! 完全なる自由だあああ!」


勢いよく回ったせいで少し目が回り、主人公は机に手をついた。


それでも、笑顔は崩れない。


放課後から夜まで続く特別授業。


休日の突然の呼び出し。


お泊まり授業。


そのうえ、毎回おねいさんの手料理まで食わされる。


断れば試験に合格できないと匂わされ、三年間も振り回された日々。


そして、極めつけはクリスマスイブ。


高級ホテルに呼び出され、超高級コース料理を食べさせられた末に、


『私の旦那さんにならない?』


と告白されたのである。


主人公は証拠ファイルを抱え、子ども家庭庁へ乗り込んだ。


足取りは軽い。


あまりにも軽すぎて、途中からほとんどスキップになっていた。


「うぃぃぃぃひひひ! 待っておれ! 今までの恨み、晴らさせてもらうぞ!」


通行人が、何も見なかったことにして横を通り過ぎた。


庁舎へ到着すると、主人公は受付の前にファイルを置いた。


「責任者を呼んでください」


「ご用件は?」


「三年間分の恨みです」


「もう少し具体的にお願いします」


「長時間拘束と職権乱用と、クリスマスイブの結婚要求です」


受付の職員の笑顔が固まった。


数分後、主人公は会議室へ案内された。


テーブルの向こうには、子ども家庭庁の幹部職員がいた。


最初、彼の態度は疑わしげだった。


「担当職員は、必要な指導を行っただけでは?」


「交際や結婚の話も、あなたの誤解ではありませんか?」


主人公はニヤリと笑った。


「そう言うと思っていました」


ドン!


机の上に、分厚いファイルを置く。


さらに携帯を取り出し、保存していたメールを表示した。


『タクシーが迎えに行くから、いい服を着てきてね』


『私の旦那さんにならない?』


会議室が静まり返った。


幹部が眼鏡を外し、資料をめくる手を止めた。


「……これは、本人から送られたものですか?」


「送信元も日時も残っています」


「授業時間の記録は?」


「毎日あります」


「深夜まで行われた日も?」


「こちらのページです。付箋まで貼ってあります」


完璧だった。


逃げ道は一つもなかった。


主人公は椅子にもたれかかり、満面の笑みを浮かべた。


「うぃひひひひ……」


「会議室でその笑い方はお控えください」


「すみません。喜びが抑えられなくて」


幹部は一度退室し、しばらく協議した。


戻ってきた幹部は、先ほどとは別人のように姿勢を正えていた。


「今回の件について、組織として正式に調査いたします」


幹部職員が深く頭を下げた。


「また、長時間の拘束および担当職員の不適切な言動について、正式にお詫び申し上げます」


主人公は、ゆっくりとうなずいた。


「謝罪、確かに受け取りました」


幹部が出てきて


主人公の顔が、ぱあっと輝いた。


「やったああああああ!」


両手を高く上げる。


「認めてもらえた! 正式に謝罪してもらえた! 長かった戦いが、ついに終わったぞ!」


「庁舎内では静かにお願いします」


「はい! すみません! でも、とても嬉しいです!」


主人公は椅子に座り直した。


しかし、嬉しさを隠しきれず、椅子の上で左右に揺れていた。


「うぃぃぃぃひひひ……」


「笑い声も抑えてください」


「はい!」


返事だけは非常に立派だった。


その日の夜。


子ども家庭庁のおねいさんから、主人公の携帯へ電話がかかってきた。


一件。


二件。


五件。


十件。


二十件。


携帯は机の上で、ブルブルブルブルと震え続けた。


主人公は画面を見つめ、嬉しそうに彼女を呼んだ。


「見てくれ! またかかってきた!」


「出ないの?」


「出ない!」


「話を聞かなくていいの?」


「聞かない!」


「ずいぶん楽しそうだね」


「もちろんだ!」


主人公は紙とペンを用意し、着信回数を正の字で数え始めた。


「二十一件目!」


また鳴る。


「二十二件目!」


さらに鳴る。


「新記録更新!」


「何の記録なの?」


彼女は首をかしげた。


しかし主人公は、電話には一度も出なかった。


メッセージも次々に届いた。


『話を聞いて』『誤解があるの』『どうしてこんなことをしたの?』『電話に出て』『お願い』


色々も届いたがメッセージも開かなかった。


留守番電話も聞かない。


携帯が鳴るたびに、ジュースを飲みながら嬉しそうに眺めるだけだった。


「今まで散々呼び出されてきたからな。今度はこちらが応じない番だ!」


そして主人公は、満面の笑みで着信拒否のボタンを押した。


ピッ。


「うぃぃぃぃひひひ! なんという押し心地!」


「普通のボタンだよ」


「今日だけは勝利のボタンだ!」


後日。


子ども家庭庁のおねいさんは、誰もやりたがらない大変な部署に配置転換された。


その知らせを聞いた主人公は、しばらく無言で立ち尽くした。


彼女が心配そうに顔をのぞき込む。


「どうしたの?」


「……配置転換になったのか」


「そうみたいだね」


次の瞬間、主人公は国家資格の合格証を掲げた。


「私はすでに合格者! そして、おねいさんは大変な部署に異動!」


部屋中を歩き回る。


「立場が逆転した! 完全に逆転したぞ!」


その夜、主人公と彼女は、二人だけの祝勝パーティーを開いた。


机の上には、ケーキ、ジュース、ピザ、唐揚げ、ポテト。


さらに主人公が自作した紙の旗まで飾られていた。


旗には、大きく、


『国家資格取得・記念日達成・謝罪獲得記念パーティー』


と書かれている。


「記念日が多すぎない?」


彼女が笑いながら言った。


「めでたいことは、まとめて祝えばよい!」


主人公は三角帽子をかぶり、クラッカーを手にした。


「それでは、我が完全勝利を祝して!」


「私たちの記念日のお祝いもね」


「もちろん!」


二人はグラスを持ち上げた。


「乾杯!」


クラッカーが鳴り、紙吹雪が部屋中に舞った。


主人公はケーキを一口食べ、幸せそうに頬を押さえた。


「甘い! 勝利のケーキは、いつもの三倍甘い!」


「同じケーキだよ」


「気分の問題だ!」


主人公は彼女と写真を撮り、国家資格の合格証も一緒に写した。


さらに、謝罪を受けた記念として、もう一枚撮影した。


「今度は着信拒否した記念写真も撮ろう!」


「それは撮らなくていいよ」


「では、完全勝利記念!」


主人公はカメラに向かって、これ以上ないほど嬉しそうな笑顔を浮かべた。


「うぃぃぃぃぃひひひひひ!」


「笑ってる顔が悪役みたい」


「今日はそれでよい!わははははは」


主人公は彼女と並んでケーキを食べながら、国家資格の合格証を何度も眺めた。


資格を手に入れた。


初めての記念日を迎えた。


正式な謝罪も受けた。


電話もすべて無視した。


そして今、彼女と祝勝パーティーをしている。


主人公は幸せそうにグラスを掲げた。


「これにて、長年の戦いは終了!」


そして、満面の笑みで高らかに叫んだ。


「うぃぃぃぃぃひひひひひ! 完全勝利じゃあ!」


その直後、勢いよく振り上げた手が飾りに当たり、紙の旗が主人公の頭の上に落ちてきた。


彼女は大笑いした。


主人公も旗をかぶったまま笑った。


こうして二人の祝勝パーティーは、夜遅くまで賑やかに続いたのだった。

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