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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
転生したら男でした。

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116話 新たな決意

 弟が、神の世界へ行ってしまった。


 主人公には、どうすることもできなかった。


 連れていかれる弟を止める力もなければ、神の世界へ追いかける方法すら知らない。


 ただ一つだけ、主人公には前世の記憶から分かっていることがあった。


 神の世界へ送られた人間は、最初の一年ほど、楽園のような場所で暮らす。


 食事に困ることはない。


 遊ぶ場所もあり、映画も見られる。


 何不自由ない生活を送ることができる。


 だが――その先に待っているのは、死だった。


「……一年か」


 主人公は、自分の部屋で小さくつぶやいた。


 弟に残された時間が、本当に一年なのかは分からない。


 前世の記憶が、この世界でも完全に同じとは限らない。


 それでも、おそらく弟はいずれ死んでしまう。


 だからといって、今の主人公に弟を助ける方法はなかった。


 一年という時間があったとしても、神の世界へ行く方法すら分からない今の自分では、何もできないだろう。


 悔しかった。


 けれど、そこで諦めるつもりはなかった。


 神の世界とは、いったい何なのか。


 どこにあり、誰が管理し、連れていかれた人間たちは最後にどうなるのか。


 この国では、誰もその全容を知らない。


 ならば――自分で調べるしかない。


 弟を救うことが間に合わなかったとしても、これから先、両親まで神の世界へ送られる可能性はある。


 そのとき、今と同じように何もできない自分ではいたくなかった。


 そのために主人公が選んだ道が――軍だった。


 中学三年生の春。


 学校では、進路希望調査が行われた。


 主人公は端末に表示された進路一覧を眺め、迷うことなく一つを選択する。


《第一希望 軍学校》


 送信。


 翌日の放課後。


 主人公は担任から呼び出された。


「……本当に軍を希望するのか?」


「はい」


 担任は端末の画面を見直した。


「入力ミスじゃないんだな?」


「違います」


「君の成績なら、医療系でも技術系でも進める。もっと安全な進路はいくらでもあるぞ」


「分かっています」


「それでも軍へ行くのか?」


「はい」


 主人公は迷わず答えた。


 担任はしばらく黙ったあと、大きく息を吐いた。


「……分かった。ただし、ご両親とはきちんと話し合いなさい」


 当然、その日のうちに学校から両親へ連絡が入った。


 主人公が家へ帰ると、父と母がリビングで待っていた。


 母は、明らかに動揺していた。


「軍隊に行くって、本当なの?」


「うん」


「どうして……」


 母の声が震える。


「弟がいなくなったばかりなのよ」


 主人公は何も言えなかった。


「もう一人まで失いたくないの」


 父も、珍しく強い口調で言った。


「軍なんて駄目だ。別の進路を選びなさい」


「でも、この国は戦争してないよ」


「それでも軍は軍だ」


「今は争いのない時代だよ。危険な任務だって、ほとんどない」


「絶対に安全だと言い切れるのか?」


「……」


 主人公は答えられなかった。


 もちろん、そんな保証などない。


 それでも、引くつもりはなかった。


「軍に入ったからって、すぐ戦場へ行くわけじゃない。今の世界には戦争もないし、基本は訓練や警備だよ」


 父は首を横に振った。


「それでも反対だ」


 母も主人公の手を握る。


「お願い。普通の学校へ行って」


 主人公は胸が痛んだ。


 弟を失ったばかりなのだ。


 両親が恐れるのも当然だった。


 けれど――。


 このまま何もしなければ、神の世界について何一つ分からないままだ。


 これから家族の誰かが連れていかれたとしても、また見送ることしかできない。


 そんなことだけは、絶対に嫌だった。


「……ごめん」


 主人公は静かに言った。


「それでも、軍へ行きたい」


 もちろん、本当の理由は言えなかった。


 神の世界の正体を調べるため。


 そしていつか――。


 弟が連れていかれたその場所へ、自分自身の力でたどり着くため。


 その日から、主人公の進む道は決まった。

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