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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
転生したら男でした。

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115話 弟の小学校卒業試験(2)

弟の携帯が青く光った瞬間、家族全員が黙り込んだ。


画面には、短い文章が表示されていた。


『神の世界への入場が決まりました。指定された日時に、最寄りの神社へお越しください』


「いやだ!」


弟は携帯を床に投げ捨てた。


しかし、携帯は床に落ちても光り続けた。


画面には、新しい通知が表示されていた。


『神の世界にお迎えする準備がが完了しました』


『対象者は、明日午前九時までに指定された神社へ集合してください』


『家族による同行は、神社入口まで認められます』


弟は首を横に振った。


「行かない……。僕、行かないよ!」


父が携帯を拾い上げた。何度も電源ボタンを押したが、画面は消えなかった。


「壊せばいいんだ!」


弟が叫んだ。


「携帯を壊せば、迎えは来ないんでしょう!?」


父は何も答えられなかった。


携帯を壊しても意味がない。


手のひらに埋め込まれたチップによって、弟の居場所はすでに知られている。


母は弟を強く抱きしめた。


「ごめんなさい……。もっと早く勉強を見てあげればよかった」


「お母さんのせいじゃない」


弟は泣きながら言った。


「僕の頭が悪かったから……」


「違う!」


主人公は思わず叫んだ。


試験に落ちただけで、家族と引き離される。


そんな制度が正しいはずはなかった。


「弟は悪くない。誰も悪くないよ」


主人公は弟の手を握った。


「だったら、どうして僕が行かなきゃいけないの?」


その問いに、誰も答えられなかった。


やがて、弟の携帯から機械的な音声が流れた。


『対象者の逃亡および隠匿は、家族全員への重大な違反行為となります』


母の顔から血の気が引いた。


父は拳を握りしめ、うつむいた。


弟は私の腕にしがみついた。


「お姉ちゃん……」


「うん」


「神の世界って、本当にいいところなの?」


幼い弟の問いに、私はすぐには答えられなかった。


学校では、神の世界は苦しみも悲しみもない楽園だと教えられている。


私は弟を抱きしめた。


「……絶対に、忘れないから」


それしか言えなかった。


弟の携帯は、家族の泣き声を照らすように、いつまでも青く光り続けていた。母はその場に崩れ落ちた。


「いや……どうして……。あれほど勉強したのに……」


父も何も言わず、拳を強く握っていた。


弟だけは、まだ状況を理解できていないようだった。


「神の世界って、本当に楽しいところなんだよね?」


「……そうだよ」


母は涙を隠しながら答えた。


「おいしいものがたくさんあって、毎日遊べて、学校にも行かなくていいの」


「じゃあ、そんなに悪くないかも」


弟は無理に笑った。


主人公は神の世界を知っていた。


豪華な食事。広い部屋。プールや遊園地。漫画や映画も好きなだけ楽しめる。


魔物たちは優しく世話をし、人間を大切な客のように扱う。


おおよそ一年が過ぎたとき、主人公は死んでしまった。


弟がどうなるのかは、想像はついていた。


それでも、助ける方法はなかった。


この世界では、すべての人間の手のひらに位置情報を発信するチップが埋め込まれている。


山奥に隠しても、地下に逃げても、すぐに発見される。


チップを取り除けば、買い物も交通機関の利用もできなくなる。


それどころか、異常を感知した警備隊がやってくる。

家族全員で逃げれば、全員が処分される。


弟一人を隠しても、弟だけでなく、かくまった家族まで神の世界へ送られる。


だから、送り出すしかなかった。


指定された日。


家族は空白地帯の近くにある神社へ向かった。


境内には、弟と同じように青い通知を受けた人々が集まっていた。


泣き叫ぶ子ども。


必死に笑顔を作る親。


何も知らず、旅行へ行くようにはしゃいでいる者もいた。


神社の奥には、黒い服を着た職員たちが立っていた。


「それでは、対象者の方はこちらへお進みください」


弟が振り返る。


「お兄ちゃん」


「何だ?」


「僕がいなくなっても、僕の部屋、勝手に片づけないでね」


「……分かった」


「ゲームも消さないでよ。帰ってきたら続きをやるから」


主人公は答えられなかった。


一年後、弟が帰ってくることはない。


それでも、神の世界を教えることはできなかった。


弟は母と父に抱きついたあと、最後に主人公の前へ来た。


「高校に行っても頑張ってね」


「ああ」


「僕も神の世界で頑張るから」


「……ああ」


弟は笑顔で手を振り、職員に連れられて神社の奥へ消えていった。


主人公は、その姿が見えなくなっても、しばらく動けなかった。


助けられなかった。


何もできなかった。


家に戻ると、弟の部屋だけが、昨日までと同じ状態で残っていた。


机の上には試験勉強に使ったノートが積まれている。


何度も書き直した計算式。


赤いペンで丸をつけられた問題。


家庭教師からもらった励ましの言葉。


あれほど努力しても、不合格になれば神の世界に行く。


この世界では、人間の命は試験の点数で決まる。


主人公は弟の椅子に座り、机の上に置かれたノートを開いた。


最後のページには、大きな字で書かれていた。


『絶対に合格して、家族とずっと暮らす』


主人公はノートを閉じた。


涙は出なかった。


代わりに、胸の奥で冷たい怒りが膨らんでいた。


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