113話 この国の国家予算(2)
主人公は、そのまま勢いで国の収入まで調べてみた。
画面には、今年度の歳入が一覧で表示されている。
項目金額
所得税約8兆2,500億円
法人税約6兆7,400億円
防衛特別税など約2,000億円
相続税約1,000億円
酒税・たばこ税・関税・印紙税など約2兆1,500億円
税収合計約17兆4,000億円
国のその他収入約2兆9,000億円
国有地の地代・不動産収入約7兆円
歳入合計約27兆3,000億円
「……27兆3,000億円?」
主人公は思わず画面を二度見した。
今年度の歳出は、25兆7,000億円だったはずだ。
「えーっと……引き算すると……」
端末に計算させる。
表示された数字は――
1兆6,000億円の黒字。
「めちゃくちゃ余ってるじゃん!」
思わず声が出た。
前世では、国というものは毎年のように「財源が足りない」「税収が足りない」「増税が必要だ」と言っていた気がする。
ところが、この国は違う。
普通に歳入が歳出を上回っている。
「いや、強すぎるだろ。この国の財布……」
主人公は、改めて歳入の内訳を眺めた。
すると、一つだけ妙に目立つ項目がある。
国有地の地代・不動産収入――約7兆円。
「……7兆円?」
一瞬、意味が分からなかった。
「地代と不動産だけで?」
そこで主人公は、はっとした。
「あ、そうか。この国、土地が全部国のものだった」
この国では、住宅地も商業地も工業地も、土地そのものは基本的に国が所有している。
国民や企業は土地を購入するのではなく、国から借りて使用する仕組みになっている。
当然、借りている以上は地代を払う。
そして、その地代が毎年、国の収入として入ってくる。
「……国、大家さんじゃん」
しかも、ただの大家ではない。
全国規模の大家である。
都市の一等地も、郊外の住宅地も、工業地帯も、地方の土地も、すべて国が所有して貸し出している。
「そりゃ7兆円も入るわ……」
税金による収入が約17兆4,000億円。
そこへ、税金とは別に約7兆円もの地代収入が加わる。
「毎年7兆円の家賃収入みたいなものか……」
少し考えてから、主人公はつぶやいた。
「国、不動産王じゃん」
しかも、土地を売ってしまうわけではない。
国が土地を持ち続けている限り、毎年安定して地代が入ってくる。
これなら、消費税がなくても相当な収入を確保できる。
さらに、この国では高齢者向けの社会保障費もない。
そのうえ、毎年莫大な地代収入まである。
「なるほど……だから税金をそこまで高くしなくてもいいのか」
主人公は画面を眺めながら、ようやく納得した。
税金が安い。
消費税もない。
それでも国の財政は黒字。
そして国民には、子育て支援をはじめとしたさまざまな制度が用意されている。
「……もしかして」
主人公は、普段の街の様子を思い浮かべた。
外食を楽しむ家族。
休日に買い物へ出かける人たち。
広めの家に住み、趣味にも普通にお金を使っている国民たち。
前から不思議に思っていた。
この国の人たちは、どこか生活に余裕がある。
「そっか……」
主人公は小さく頷いた。
「税金が軽くて、国にもちゃんと収入があるから……みんな生活に余裕があるのか」
そう考えると、今まで不思議だったこの国の暮らしぶりにも、少し納得がいった。




