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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
転生したら男でした。

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111話 子ども家庭庁のおねいさんとデート

主人公は、休日になると子ども家庭庁のおねいさんに半ば強引に連れ出されていた。


今日も朝から迎えに来られ、この地方で最も大きな町の中心部まで来ている。


最初のころは、


「休日まで授業なの?」


と思っていたのだが、最近は少し様子が違っていた。


ショッピングをしたり。


カフェに入ったり。


レストランで食事をしたり。


しかも、代金はほとんどおねいさん持ちだった。


「好きなの頼んでいいわよ」


「また?」


「いいの、いいの」


最近では、服や靴まで買ってもらっている。


今日も店を出た主人公の手には、大きな紙袋が二つ。


「……なんか最近、いろいろ買ってくれすぎじゃない?」


「そう?」


「そうだよ」


主人公は隣を歩くおねいさんを見る。


休日に二人で街へ出かけて、服を選んでもらって、食事をごちそうになっている。


どう考えても――。


「これ、ほとんどデートじゃない?」


「あら」


おねいさんは楽しそうに笑った。


「そう見える?」


「否定してよ!」


そんなことを話しながら商店街を歩いていた、そのときだった。


「ふざけんな!」


突然、大きな怒鳴り声が聞こえた。


主人公が振り向く。


少し離れた場所で、二人の男が向かい合って怒鳴り合っていた。


「そっちが先にぶつかってきただろ!」


「お前が前見てなかったんだろうが!」


周囲の人たちが一斉に距離を取る。


主人公も足を止めた。


「喧嘩……?」


最初は、ただの口論だった。


しかし――。


「この野郎!」


片方の男が相手の胸ぐらをつかんだ。


次の瞬間。


ドンッ!


拳が飛んだ。


「うわっ!」


殴られた男も、すぐに殴り返す。


あっという間に、完全な殴り合いになった。


「ちょ、ちょっと……」


主人公が驚いていると、遠くから警笛の音が聞こえてきた。


警察だった。


しかも、到着は異様なほど早かった。


「やめなさい!」


数人の警察官が二人の間に割って入り、引き離す。


男たちはまだ怒鳴っていたが、すぐに拘束され、そのまま警察車両へと連れていかれた。


騒ぎは、ほんの数分で終わった。


主人公はその様子を見ながら言った。


「まあ、警察は来るよね……。殴り合いまでしたし」


すると、隣にいたおねいさんが少し悲しそうな顔をした。


「……あの二人、かわいそうね」


「え?」


「たぶん二人とも、神の世界で反省することになるわ」


主人公の表情が固まった。


「…………はい?」


「暴力沙汰を起こしちゃったもの」


「いやいやいや」


主人公は慌てておねいさんの方を向く。


「神の世界って、あの神の世界?」


「ほかにないでしょう?」


「待って待って!」


主人公は、走り去っていく警察車両を指さした。


「ただの喧嘩だよ!?」


おねいさんは不思議そうに首をかしげる。


「殴り合いの喧嘩よ?」


「そうだけど!」


「人を殴ったのよ?」


「そうだけどさ!」


主人公の声がだんだん大きくなっていく。


「普通は事情を聞いて、場合によっては逮捕されて、それから裁判とか罰金とか……そういう段階があるでしょ!?」


「もちろん調査はするわよ」


「じゃあ――」


「でも、本当に二人とも殴り合っていたのなら、たぶん神の世界ね」


「重すぎるよ!」


主人公は思わず叫んだ。


周囲の人たちがちらりとこちらを見る。


主人公は慌てて声を落とした。


「……たかが喧嘩で?」


すると、おねいさんの表情が少しだけ真剣になった。


「『たかが』じゃないわ」


「え?」


「この国では、人に暴力を振るうことは、とても重大なことなの」


主人公は黙った。


おねいさんは再び歩き始める。


「だから、この国では喧嘩なんてほとんど起きないのよ」


主人公も、その後ろをついていく。


確かに、この世界へ来てから、主人公は一度も殴り合いの喧嘩を見たことがなかった。


学校でも。


駅でも。


繁華街でも。


酒を飲んでいる人が大勢いる場所でさえ。


――みんな、異様なほどおとなしい。


主人公は今まで、それを単純に「治安がいい世界だから」だと思っていた。


だが――。


(……違う)


背中に冷たいものが走った。


(治安がいいんじゃない)


暴力を振るえば――神の世界へ送られる。


しかも主人公は、過去の経験から知っていた。


神の世界へ送られた人間が、その一年後にどうなるのかを。


――殺される。


だから、誰も争わない。


主人公は、さっきまで平和に見えていた街を見回した。


家族連れ。


恋人たち。


買い物を楽しむ人々。


誰もが笑っている。


楽しそうに歩いている。


それなのに主人公には、先ほどまでとはまったく違う景色に見えた。


「……この世界」


主人公が小さくつぶやく。


「平和なんじゃなくて……」


おねいさんが振り返った。


「なに?」


主人公は一瞬黙り――。


「……なんでもない」


そう答えた。


その後もしばらく、主人公は無言のまま歩き続けた。


腕には、おねいさんが買ってくれた服の入った紙袋。


ついさっきまでなら、それを見て少し嬉しい気持ちになっていたはずだった。


だが今は――。


主人公の頭から、警察車両に連れていかれた二人の姿が離れなかった。

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