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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
転生したら男でした。

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109話 彼女が主人公と付き合っている理由

主人公の彼女は、仲のいい友達とカフェでのんびりお茶をしていた。


友達が、ストローをくるくる回しながら彼女を見る。


「ねえ、あんたさ。あんなにかっこいい彼氏がいるのに、こんなに友達と遊んでていいの?」


「いいのいいの。彼氏は毎日、こども家庭庁のお姉さんに指導されてるから、ほとんど時間ないし」


「それ、寂しくない?」


「全然。むしろ大助かりよ」


彼女は満面の笑みを浮かべ、ケーキを一口食べた。


「たまーにデートするくらいが、ちょうどいいの。毎日会いたいとか言われたら面倒じゃない?」


「……あんた、本当に彼のこと好きなの?」


「当然、好意はあるわよ」


「その言い方、なんか怪しいんだけど」


彼女はカップを置くと、少し得意げに胸を張った。


「だって考えてみなさいよ。あんなにかっこいい彼氏と付き合って、一緒に街を歩くのよ?」


「うん」


「周りの女子がチラチラこっちを見るの」


「うん……」


「『えっ、あの人の彼女なの?』『いいなあ』みたいな顔で!」


「そこ見てるんだ……」


「しかも、私も彼と同じくらい身長高いでしょ?」


「まあ、高いね」


「だから二人で歩いてると、すっごく目立つのよ。『高身長カップルだ』って、みんなの注目を浴びるの」


彼女はニヤリと笑った。


「――あの瞬間の優越感! 最高よ!」


「最低な理由だった!」


友達は思わずテーブルを叩いた。


「なんだよ! 好きっていう純粋な感情じゃないの!?」


「だから好意はあるって言ってるでしょ」


「好意、ちっさ!」


「そもそもね」


彼女は急に真顔になった。


「誰が、ちょっといじるだけで喜ぶような男を本気で好きになるんですか」


「彼氏に対する評価が辛辣すぎる!」


「でも顔はいい。身長も高い」


「そこだけ!?」


「顔がよくて、背が高くて、みんなが欲しがる。それなのに私の彼氏」


彼女は再びニヤリと笑う。


「この『みんなが手に入れられない男を、私だけが持ってる』って状況が最高なのよ」


「うわぁ……」


友達は完全に引いていた。


だが、彼女は気にする様子もなく、さらに続ける。


「しかも私たち、身長だけじゃなくて体格もけっこう近いのよね」


「そうなの?」


「うん。だから将来が楽しみだわ」


友達は嫌な予感を覚えたように眉をひそめた。


「……結婚したら何するつもりなの?」


彼女はにっこり笑った。


「ないしょ」


「その笑顔、絶対ろくなこと考えてないだろ!」


「失礼ね。将来の楽しみよ」


「だから何を楽しみにしてるの!?」


「ないしょって言ってるでしょ」


「怖いんだよ!」


友達はしばらく彼女の顔を見つめたあと、ため息をついた。


「それ、恋愛っていうよりレアアイテム自慢じゃない?」


「失礼ね」


「違うの?」


彼女は少し考えた。


「……限定SSR彼氏?」


「もっとひどくなった!」


カフェの店内に、友達のツッコミが響いた。


しばらくして、友達は何か思いついたようにニヤニヤしながら彼女を見る。


「でもさ」


「なによ」


「こども家庭庁のお姉さんが、ほかの女子を全部蹴散らしてくれたのはいいけど……」


「うん」


「そのお姉さん本人に、彼氏を取られる可能性はないの?」


彼女の手が、一瞬だけ止まった。


「……ないない」


「今、一瞬止まったよね?」


「気のせいよ」


「しかも相手、美人なんでしょ?」


「美人ね」


「毎日会ってるんでしょ?」


「毎日のように呼び出されてるわね」


「一緒にいる時間、あんたより長くない?」


彼女は無言になった。


「…………」


「ほら! 危ないじゃん!」


「大丈夫よ」


彼女は強がるようにコーヒーを一口飲んだ。


「主人公、毎日の呼び出しに完全にうんざりしてるもの」


「なんで分かるの?」


「デートするたびに愚痴を聞かされるから」


彼女は主人公の口調を真似する。


「『また今日も呼ばれた』」


「『二時間も授業された』」


「『休日くらい自由にさせてほしい』」


「『なんでお姉さんの外出にまで付き合わなくちゃいけないんだー!』」


友達は吹き出した。


「めちゃくちゃ嫌がってるじゃん」


「でしょう?」


彼女は勝ち誇ったような顔になる。


「だから恋愛対象にはならないわよ。美人だろうがなんだろうが、毎日会うだけで疲れる相手なんだから」


「なるほどねえ」


ところが、友達はそこで意味ありげに笑った。


「でもさ」


「まだ何かあるの?」


「そのお姉さんが、もう少し主人公のことを思いやれる人だったら?」


彼女の笑顔が消えた。


「……どういう意味よ」


「呼び出しを減らしてさ」


「うん」


「主人公が疲れてたら休ませて」


「うん……」


「悩みも聞いてくれて」


「…………」


「しかも美人」


彼女は完全に黙り込んだ。


友達がとどめを刺す。


「それだったら、結構ヤバかったんじゃない?」


数秒の沈黙。


彼女はゆっくりとカップを置いた。


「……それは」


「それは?」


「かなり危なかったかもしれない」


「認めた!」


彼女は腕を組み、真剣な顔になる。


「だって毎日会えて、主人公のことを理解してくれて、優しくて、美人なんでしょう?」


「うん」


「そんなの勝てるわけないじゃない!」


「さっきまで余裕だったのに!」


「でも現実のお姉さんは、主人公が嫌がってても毎日呼び出してくれる!」


彼女は急に笑顔になった。


「ありがとう、こども家庭庁!」


「感謝するところそこ!?」


「ライバルを追い払って、自分まで嫌われてくれるなんて最高じゃない」


「すごい役回りだな……」


彼女は満足そうにケーキを食べる。


「美人なのに、主人公への思いやりが足りない。そこが最大の弱点よ」


「じゃあ逆に、そのお姉さんが急に優しくなったら?」


彼女のフォークがぴたりと止まった。


「…………」


「どうする?」


彼女は真顔で答えた。


「全力でデートの回数を増やす」


「急に彼女らしいことするんだな!」


「当たり前でしょう!」


彼女は少し焦った表情で言った。


「限定SSRを横取りされてたまるもんですか!」


「あんたって、本当に性格悪いわね」


「なにそれ、最高の褒め言葉。ありがとう」


「いや、別に褒めてないんだけどな」


そんな本音まで遠慮なく笑い話にできるのは、二人が長年付き合ってきた親友同士だからこそだった。

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