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転生したらみんなが恋人いる謎の世界だった。どうして私だけいないの。  作者: まやまや
転生したら男でした。

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108話 農業体験

選択科目は、二年生の始業式の日までに決めなければならなかった。


一年生のうちは、進路を決める参考にできるよう、さまざまな選択科目を体験できるようになっている。


そんな中、主人公はふと疑問に思った。


――農業って、いったい何をするんだろう?


これまで、農業の授業を選んだことはなかった。


そこで一年生最後の選択授業の日、主人公は試しに農業を選んでみることにした。


農業の実習場所は学校から少し離れたところにあるため、希望者には専用のバスが用意されていた。


授業は四時間目からだったので、主人公たちは昼前に学校を出発した。


バスに揺られること、およそ三十分。


昼ごろには実習場所へ到着した。


昼食は学校から弁当が支給されており、生徒たちは到着すると、まずそこで昼食を取ることになった。


主人公は弁当を受け取りながら、目の前に広がる農地を眺めた。


――思っていたより、本格的な場所だな。


こうして主人公の、初めての農業実習が始まった。


今回体験する作業は、キャベツの収穫と箱詰めだった。


まず、生徒たちは実際に農場を経営している農家の人から説明を受けることになった。


「今日は、収穫できる大きさまで育ったキャベツを切って、そのあと箱に詰めてもらいます」


農家の人は、実物のキャベツを使いながら収穫の仕方を説明していく。


どのくらいの大きさなら収穫していいのか。


外側の葉をどこまで残すのか。


刃物をどこに入れればいいのか。


さらに、収穫したあとは傷んだ葉を取り除き、大きさごとに分けて箱へ詰めるらしい。


一通り説明を受けたあと、主人公たちも実際に畑へ入った。


「おお……結構重いな」


主人公は、初めて収穫したキャベツを両手で持ち上げる。


見ているだけなら簡単そうだったが、何十個も続けて収穫するとなると、かなりの力仕事だった。


その後は、収穫したキャベツを運び、決められた数ずつ箱へ詰めていく。


主人公にとっては初めての経験ばかりで、それなりに面白かった。


だが、作業を続けているうちに、主人公はあることが気になり始めた。


――それにしても……人、多くないか?


畑のあちこちに作業員がいる。


キャベツを収穫している人。


収穫したキャベツを運んでいる人。


箱詰めをしている人。


トラックへ積み込んでいる人。


かなり広い農場とはいえ、それでも主人公が想像していたより、明らかに働いている人の数が多かった。


主人公は、近くにいた農家の人に尋ねてみた。


「ここって、いつもこんなに人がいるんですか?」


「ああ。この人たちのことか」


農家の人は、作業員たちを見ながら答えた。


「ほとんどは、国の補助を使って雇ってる人たちだよ」


「国の補助?」


「農業はどうしても人手が必要だからな。作業員を雇う場合、給料の大部分を国が補助してくれる制度があるんだ」


「へえ……」


主人公が感心していると、農家の人はさらに説明を続けた。


「しかも、かなり手厚いんだ。こちらから必要な人数を申請すれば、かなりの人数を確保できる。人件費のほとんどを国が負担してくれるから、俺たち農家の負担はかなり少なくて済むんだよ」


「そんなに出るんですか?」


「ああ。そのおかげで人手をたくさん使えるし、大量に収穫しても安い値段で出荷できる。俺たちも全部の作業を自分たちだけでやる必要はない。作業員に指示を出しながら農場全体を管理すればいいから、仕事もかなり楽だよ」


主人公は、改めて周囲を見回した。


確かに、これだけの人数を農家だけで雇おうとすれば、かなりの人件費になるはずだ。


しかし、国から手厚い補助が出るのであれば話は違う。


農家側も人を雇いやすくなり、大勢の作業員を使って収穫や出荷を行えるということらしい。


――農業って、もっと少ない人数でやってるものだと思ってた。


主人公が想像していた農業とは、ずいぶん違っていた。


そして主人公は、この国では農業そのものだけでなく、農業に人を集めるための制度もかなり充実していることを、初めて知ったのだった。


実習自体は、普段できないことを体験できて面白かった。


自分でキャベツを収穫し、それを箱に詰め、出荷の準備まで行う。


農業がどのような仕事なのか、ほんの少しではあるが、実際に体験することができた。


ただ――。


――面白かったけど、これをずっとやるのは大変そうだな。


主人公は腰を伸ばしながら、広い畑を眺めた。


何十個ものキャベツを収穫して運ぶだけでも、思っていた以上に体力を使った。


農業に興味がないわけではない。


しかし、自分の進路として考えると、どうにも向いている気がしなかった。


こうして一年生最後の選択授業を終え、主人公は春休みを迎えた。


そして、二年生の始業式の日。


この日までに、生徒たちはこれから受ける選択科目を正式に決めなければならなかった。


主人公は、端末に表示された選択科目の一覧を眺める。


社会、美術、体育、技術、家庭、農業、漁業――。


少し考えたあと、主人公が選んだのは、


「技術」


だった。


一年生の体験授業でも比較的人気があり、将来どの道へ進むにしても役に立ちそうな、無難な科目だった。


「まあ、これが一番いいかな」


主人公はそうつぶやき、技術の欄を選択する。


農業を実際に体験したからこそ、自分にはあまり向いていないことも分かった。


それもまた、一年生のうちにさまざまな科目を体験する意味なのだろう。


こうして主人公は、二年生からの選択科目として、人気の高い技術を選んだのだった。

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