全ては裏庭のせい side:B
ブルーノ視点です。
オリエンテーション後、声をかけてくる女子生徒が多くて疲弊した。別のクラスからも、学年の違う生徒からも。
なんとなく下心が見える。
私はまだ婚約者を決めていないから、「あわよくば」と思うのかもしれない。
あまりよろしくはないが、一人になりたかったので、入学前に父上から教わった場所に逃げ込むことにした。
裏庭。
地図には記されてはおらず、偶然通りかかるにしてもかなり困難な場所。
そのため、裏庭の存在を知っている人は限られているらしい。
当時婚約者だった母上との逢瀬の場所として使っていた、と聞いた。
裏庭に着くと、薄いピンクの花が一面に広がっていた。
そして、先客がいることに気付いた。
手を広げて花の風を全身で受け止めている一人の女子生徒。
どこか少し感傷的な横顔にドキリとしたのはこの花のせいか?
「君は……妖精か?」
「はい?」
声をかけるにしても、もっといいかけ方があっただろう。
何だ、妖精って……。
制服を着ている相手にこの国の王子は何を言っているんだ、と思われそうだ。
しかし、このアラベラと名乗る女子生徒は、
「殿下こそ、妖精のようです。綺麗な赤色の髪と桜がよく似合っております。」
と返してくれた。
この赤色の髪。父上とも母上とも違う髪色は、母上の不貞を疑われる色で、皆、触れるのを躊躇う色だった。
顔立ちは父上に似ているし、そんな噂をする方がどうかしているのだが、それでも、触れてくれる人はそう居なかった。
そんな髪を、この花と似合う、と微笑んでくれる彼女はそんなことを知らないだろうが、とても、嬉しかった。
思わず、初対面なのに婚約者はいるか、と聞くと、少し答えづらそうに、苦笑をしながら肯定した。
……婚約者と上手くいっていないのだろうか?
それにしても、残念だし、新鮮でもあった。
婚約者が居る者でも、私にいない、と嘘をつく者も少なくない。私が望めばその婚約者は"いない"ものにするのだろう。
もし、婚約者が彼女にとって、望まぬものであるならば。彼女が私に頼ってさえくれれば。
「婚約について困ったことがあれば、言って欲しい。」
私の使えるもの全てで、救おう。
初対面なのに、ここまで気にしてしまうのは、かつての父上と母上の逢瀬を重ねた場所だから?それとも……。
「アラベラ、また近いうちに会おう。」
これ以上話していたら、更にとんでもないことを言いそうな気がして、私は裏庭を去った。




