学園祭3
「連絡事項は以上。各自、今日一日がんばろう!」
「……。」
「アラベラ?」
「……。」
「アラベラ?具合でも悪いのか?」
「えっ?!」
「どうした?」
「あ、いえ、少し考え事をしていました。大丈夫です。」
会長が心配そうにこちらを覗き込む。
なんかさっきまで生徒会室じゃない場所に居たような気がして。
嫌だわ、今日が本番だと言うのに。
「無理はするなよ。」
「はい、ありがとうございます。」
遂に学園祭当日。
私の当日の仕事は主に見回り。
何かトラブルがないか、校内をひたすらウロウロをする仕事。
「少しなら遊んできてもいいからな。休憩もしっかりしろよ。」なんて会長に真顔で言われた。
あの顔で言われると冗談なのか本当なのか分からない。
そんなことを思いながら生徒会室を出ると、ミライ様が扉の前で待っていた。
少し、顔色が悪いみたい。
「ミライ様、大丈夫ですか……?」
「大丈夫なので、手を貸して下さい。」
口を開いたかと思えば、私の手を強引に引っ張り、薄いピンクの光が手を包む。
ああ、そういえば準備中に紙で手を切ってしまってたわね。
「よく、私が怪我したこと気付きましたね。」
「そりゃ三回目ですから。」
「私がミライ様に治して頂いたのは、初めてお会いした時だけだと思いますが……。」
「まあ、細かいことはいいんです。」
「後で、図書室に絶対に来てください。私とウィリアム様に声をかけてくださいね。」
そう言うと、ミライ様はフラフラと去っていった。
どうしたんだろう、保健室にお連れすればよかったかしら……。
「アラベラ。」
「はい?」
ミライ様が去っていく方向を見ていると、後ろから声をかけられた。
振り返ってみると、ブルーノ様だった。
「愛の魔法の者と、仲良くなったんだな。」
「ミライ様のことですか?ええ、まあ。」
「愛人にも優しくするのが本妻の余裕、みたいなものか?」
「……あれ?」
このやり取り、前にもしたような。
私がキョトンとしているので、ブルーノ様はブルーノ様で困った顔をされていた。
「前にも、こんな話をしませんでした?」
「ああ、夏休みに……。」
「いえこの場所で、つい最近。」
「そんな覚えはないが……。」
「じゃあ気のせいかもしれないですね……では、見回りに行ってきます。」
「あ、ああ。」
ブルーノ様に挨拶をしたあと、私は頭を傾げて廊下を歩いた。
なんかずっと夢の中にいるような、ふわふわとした感覚に襲われているのよね……。
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見回りを初めて数時間。
特に問題は起きていなさそうだったので、私はミライ様に言われた通り図書室に足を運んでみた。
図書室の前には相変わらず顔色の悪そうなミライ様と、ウィリアム様が立っていた。
「ベラ、お疲れ様。」
「お待ちしておりました。」
「よく私が来るの分かりましたね……?」
「乙女の勘みたいなものです。さ、ウィリアム様は休憩を貰ったので、お二人で学園祭堪能してきて下さい。」
「あの、ミライ様、保健室に言ったほうが……。」
「私は大丈夫なので。」
そう言いながら今にも倒れそうなミライ様。
見てるこっちが大丈夫じゃないんですが。
というか、この人こういう性格だから前世で過労死してるんじゃない……?
「ウィリアム様、ミライ様を保健室まで運ぶの手伝って下さい。」
「そうだね、流石に僕も見ていて心配だから。」
「大丈夫ですって言ってるのに……。」
ウィリアム様がミライ様をおぶって、保健室まで向かう。
その様子を見た他の生徒がヒソヒソとこちらを見て話しているのが少し気に食わない。
体調悪い人を助けて何が悪いのよ。三角関係とかじゃないったら。
「見世物じゃありませんわ!!」
私が声を張り上げると、ヒソヒソと話していた生徒たちは気まずそうな顔をしていた。
「アラベラ様ごめんねぇ、本当ごめんねぇ……。」
顔を真っ青にしながらウィリアム様に背負われているミライ様は私に謝っていた。
自分のことだけ心配していればいいのに……。
保健室に着くと誰もいなかったので、すぐに空いてるベッドにミライ様を寝かしてもらった。
「あと今日中にキスしちゃってねぇ……。じゃないと死んじゃうんだからぁ……。」
その言葉に私はビクッとなる。
し、死ぬって、それってもしかして……ウィリアム様のこと……。
それってキスとどういう関係性が……。
「私も次は戻せる自信が……ないから……。」
最後に更に不思議なことをいいながら、ミライ様はそのまま眠ってしまった。
「ミライ嬢が今言ったことって、どういう……。」
「私にも分かりません……でも、何かお一人で抱えていることはよく分かりました。」
「そうだね。また後で様子を見に行こう。」
「はい。」
二人で保健室を出ると、兄様たちが外に居た。
「ミライ嬢倒れちゃったんだって?」
「大丈夫だった?」
「え、ええ。今はぐっすり眠っています。」
「そっか、ならよかった。」
「ベラはこれからどうするの?」
「えっと……その、ウィリアム様と少し回りたいのですが……駄目でしょうか……。」
言ってる途中で恥ずかしくなってきて、最後の辺りモゴモゴしてしまった。
兄様たちは顔を見合わせニヤリと笑い「「楽しんできなさい。」」と私の肩を叩いた。
「もしトラブルとかあったら頼みごとするけど、」
「何もなければ昼の文化祭終わるまで遊んでていいよ。」
「ありがとうございます、兄様たち……!」
「い、いえ、特には……。」
「では、夜は是非お二人でダンスをなさってください。」
その様子を見たいからー!とか言い出すのかと思えば、そういうわけでもなく。
とても真面目な顔をしてミライ様は喋っていた。
「夜に誘おうと思っていたんだけど……、いいかな?ベラ。」
「え、ええ。勿論ですわ。」
「よかった!あ、でも、なるべく人の居ないところには行かないで下さい。」
「は、はい……。」
これも茶化してるわけではなく、かなり真面目な顔だったので、ウィリアム様と顔を見合わせて首を傾げた。
「じゃあ、また夜にお会いしましょう。」
「そうだね。」
私は二人に挨拶をすると、再び見回りを再開した。
その後の見回りも特に変わったことはなくて、昼の学園祭は無事に終わった。
ウィリアム様とダンス、楽しみだな。
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そして、夜。
魔法の光を囲んでのダンスをウィリアム様と。
なんて素敵で幸せな時間なんだろう。
案の定、注目の的ではあったけれど、それを気にせずに楽しく踊った。
「こんな風にベラと踊れるなんて、学園祭は楽しいね。」
「ええ、そうですね。」
踊りつかれたので、少し端で座って二人で話す。
こんな風にまた二人で話せる日が来るなんて、少し前は思いもしなかった。
「あれ、あそこで踊ってるのって。」
「リタ様とダビ!」
「楽しそうだね。」
「そうですね。」
ギクシャクしながらも踊る二人は、みていて微笑ましかった。
「ね、ウィリアムさ、、、」
隣にいるウィリアム様の方をみると、ウィリアム様がいなくなっていた。
後ろを向くと、横になって一切動かないウィリアム様と、得体の知れない何かがいた。
きゃあああ!と他の生徒の悲鳴が聞こえる。その場で踊っていた生徒たちが一斉に逃げ出す。
「アラベラ様!」
「アラベラ!」
リタ様とダビが私の元にきてくれたが、得体の知れない何かにはじき飛ばされた。
二人も、その場で動かなくなっていた。
これって、前に領地に現れたという魔物なんじゃないの……。
領地に現れたのは弱かったらしいけど、これは大きさ的にも弱そうには見えない。
三人とも気絶していると信じたい。
いくら魔物が強いからって、そんな簡単に人ってやられるわけ……ないわよね。
魔物は今度は私に近づいてきて、思い切り私の身体を掴んで叩きつけた。
痛……かったんだけど、その痛みは一瞬だった。
どこも、怪我をしていない。ラッキーだった。早く、はやく三人を何処かに……。
「ウェヌス・ウィクトリクス!」
私の背後から、声がした。
声と共に、光の玉が魔物に当たる。
魔物は少し苦しんでいた。
「ミライ様!」
「アラベラ様、こちらに。」
「ま、待って、三人が。」
「いいから!次は貴女が死ぬのよ?!」
最後の言葉が上手く聞き取れなくて、聞き取りたくなくて、私はミライ様に手を引っ張られながら足を賢明に動かした。
「ここまでくれば、大丈夫だから。」
「ねえ、三人は……。」
「残念ながら。」
「そん、な……。」
気絶しただけじゃないのかしら。
だって私はこの通り襲われたのに元気なんだし。
「だから、次こそ死なせないし、死なないで。」
そう私に言うと、ミライ様は私の頭を撫でて、少し悲しそうな顔をした。
『デバッグモード』
『ロード』




