学園祭2
「連絡事項は以上。各自、今日一日がんばろう!」
「……。」
「アラベラ?」
「あ、は、はい!」
「どうした?」
「いえ、なんかちょっとぼーっとしちゃったみたいで。」
会長が心配そうにこちらを覗き込む。
なんかさっきまで夢をみていて、今起きたような感覚がある。
なんなんだろう?流石に連日の準備で疲れちゃったのかしら。
「無理はするなよ。」
「はい、ありがとうございます。」
遂に学園祭当日。
私の当日の仕事は主に見回り。
何かトラブルがないか、校内をひたすらウロウロをする仕事。
「少しなら遊んできてもいいからな。休憩もしっかりしろよ。」なんて会長に真顔で言われた。
あの顔で言われると冗談なのか本当なのか分からない。
そんなことを思いながら生徒会室を出ると、ミライ様が扉の前で待っていた。
「ミライ様、おはようございます。」
「アラベラ様、どこか怪我とかされていませんか?」
「うーん、あ、準備中に紙で手を切ってしまいましたね。」
ミライ様はため息をついた。
何かあったのかしら。
「手を出して下さい。治しますので。」
「いや、こんなかすり傷。」
「いいから。」
やや強引に手を引っ張られ、薄いピンクの光が私の怪我した部分を包み込む。
その光は私の手の中に吸い込まれて消えた。
「後で、図書室にも足を運んでくださいね。」
そう言うと、ミライ様は去っていった。
どうしたんだろう、いつもと少し様子が違うミライ様が私は心配になった。
「アラベラ。」
「はい?」
ミライ様が去っていく方向を見ていると、後ろから声をかけられた。
振り返ってみると、ブルーノ様だった。
「愛の魔法の者と、仲良くなったんだな。」
「ミライ様のことですか?ええ、まあ。」
「愛人にも優しくするのが本妻の余裕、みたいなものか?」
「ウィリアム様とミライ様のことは誤解です。」
「いや、しかし……。」
「ブルーノ様が私をお嫌いなのは仕方ないと思いますが、これ以上ウィリアム様やミライ様のあることないことを言うのはお止めください。」
「わ、私がアラベラを嫌いな訳がないだろう!嫌いだったらこんな……。」
「そう、なんですか。それは失礼しました。でも、これ以上、こういう話を私にしないでください。」
「す、すまなかった……。」
「では、見回りに行ってきます。」
頭を下げて、私は少し早歩きで廊下を歩いた。
そして、このやり取り、どこかでしたようなデジャヴ感に襲われた。
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見回りを初めて数時間。
特に問題は起きていなさそうだったので、私は図書室に足を運んでみた。
図書委員は王国七不思議、という話を読み聞かせすると聞いた。
本の読み聞かせなんて、誰が興味持つのかしら……?と思ったけれど、図書室には予想以上に人が沢山いた。
タイミングよく、ウィリアム様が本を朗読していた。
何故か、これも前にどこかで見たような……。
「そして悪魔は言った。『君が望む世界にしてあげよう。なぁに大丈夫。辛いのは最初だけだから。』」
これ、悪魔に魅入られてしまった男を、愛の魔法を持つ女の子が救うお話よね、確か。
最近どこかでこの話を聞いた気がする。
授業とかで習ったのかしら?
しばらくウィリアム様の朗読を楽しんでから、私は図書室をそっと出た。
すると、後ろからミライ様が声をかけてきた。
「ウィリアム様、もう少しで休憩入るので、待ってて。」
「あ、はい……。」
しばらくすると、ウィリアム様がにこやかに笑ってこちらにきた。
「ベラ、聴いてくれていたんだね。少し恥ずかしいな。」
「とても素敵な朗読でしたわ。」
「ありがとう。」
「あ、あの、お二人とも、ダンスのお約束はされました……?」
おずおずとミライ様は問いかける。
「い、いえ、特には……。」
「では、夜は是非お二人でダンスをなさってください。」
その様子を見たいからー!とか言い出すのかと思えば、そういうわけでもなく。
とても真面目な顔をしてミライ様は喋っていた。
「夜に誘おうと思っていたんだけど……、いいかな?ベラ。」
「え、ええ。勿論ですわ。」
「よかった!あ、でも、なるべく人の居ないところには行かないで下さい。」
「は、はい……。」
これも茶化してるわけではなく、かなり真面目な顔だったので、ウィリアム様と顔を見合わせて首を傾げた。
「じゃあ、また夜にお会いしましょう。」
「そうだね。」
私は二人に挨拶をすると、再び見回りを再開した。
その後の見回りも特に変わったことはなくて、昼の学園祭は無事に終わった。
ウィリアム様とダンス、楽しみだな。
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そして、夜。
魔法の光を囲んでのダンスをウィリアム様と。
なんて素敵で幸せな時間なんだろう。
案の定、注目の的ではあったけれど、それを気にせずに楽しく踊った。
「こんな風にベラと踊れるなんて、学園祭は楽しいね。」
「ええ、そうですね。」
踊りつかれたので、少し端で座って二人で話す。
こんな風にまた二人で話せる日が来るなんて、少し前は思いもしなかった。
「あれ、あそこで踊ってるのって。」
「リタ様とダビ!」
「楽しそうだね。」
「そうですね。」
ギクシャクしながらも踊る二人は、みていて微笑ましかった。
「ね、ウィリアムさ、、、」
隣にいるウィリアム様の方をみると、ウィリアム様がいなくなっていた。
後ろを向くと、横になって一切動かないウィリアム様と、得体の知れない何かがいた。
きゃあああ!と他の生徒の悲鳴が聞こえる。その場で踊っていた生徒たちが一斉に逃げ出した。
「アラベラ様!」
「アラベラ!」
リタ様とダビが私の元にきてくれたが、得体の知れない何かにはじき飛ばされた。
二人も、その場で動かなくなっていた。
これって、前に領地に現れたという魔物なんじゃないの……。
領地に現れたのは弱かったらしいけど、これは大きさ的にも弱そうには見えない。
三人とも気絶していると信じたい。
いくら魔物が強いからって、そんな簡単に人ってやられるわけ……ないわよね。
魔物は今度は私に近づいてきて、思い切り私の身体を掴んで叩きつけた。
痛……かったんだけど、その痛みは一瞬だった。
どこも、怪我をしていない。ラッキーだった。早く、はやく三人を何処かに……。
「ウェヌス・ウィクトリクス!」
私の背後から、声がした。
声と共に、光の玉が魔物に当たる。
魔物は少し苦しんでいた。
「ミライ様!」
「アラベラ様、いまのうちに。」
「ま、待って、三人が。」
「いいから!次は貴女が死ぬのよ?!」
最後の言葉が上手く聞き取れなくて、聞き取りたくなくて、私はミライ様に手を引っ張られながら足を賢明に動かした。
「ここまでくれば、大丈夫だから。」
「ねえ、三人は……。」
「残念ながら。」
「そん、な……。」
気絶しただけじゃないのかしら。
だって私はこの通り襲われたのに元気なんだし。
「だから、次こそ死なせないし、死なないで。」
そう私に言うと、ミライ様は私の頭を撫でて、少し悲しそうな顔をした。
『デバッグモード』
『ロード』




