学園祭1
「連絡事項は以上。各自、今日一日がんばろう!」
「はい!」
遂に学園祭当日。
私の当日の仕事は主に見回り。
何かトラブルがないか、校内をひたすらウロウロをする仕事。
「少しなら遊んできてもいいからな。」なんて会長に真顔で言われた。
あの顔で言われると冗談なのか本当なのか分からない。
そんなことを思いながら生徒会室を出ると、ミライ様に遭遇した。
「ミライ様、おはようございます。」
「アラベラ様、おはようございます!時間があったら後で図書委員の読み聞かせ、聴きに来てくださいね!」
「ええ、勿論。」
「とっておきのウィリアム様ご用意して、お待ちしております!」
バチンとウインクを飛ばし颯爽と去っていくミライ様。
とっておきのウィリアム様って……何?
「アラベラ。」
「はい?」
ミライ様が去っていく方向を見ていると、後ろから声をかけられた。
振り返ってみると、ブルーノ様だった。
「愛の魔法の者と、仲良くなったんだな。」
「ミライ様のことですか?ええ、まあ。」
「愛人にも優しくするのが本妻の余裕、みたいなものか?」
「ウィリアム様とミライ様のことは誤解です。」
「いや、しかし……。」
「ブルーノ様が私をお嫌いなのは仕方ないと思いますが、これ以上ウィリアム様やミライ様のあることないことを言うのはお止めください。」
「わ、私がアラベラを嫌いな訳がないだろう!嫌いだったらこんな……。」
「そう、なんですか。それは失礼しました。でも、これ以上、こういう話を私にしないでください。」
「す、すまなかった……。」
「では、見回りに行ってきます。」
頭を下げて、私は少し早歩きで廊下を歩いた。
口調がきつかったかもしれないけど、嘘でももうあんな話は聞きたくない。
ブルーノ様は私のことが嫌いじゃない、とおっしゃってたし、善意なのかもしれないけど……。
王太子殿下ってどこかズレているのね。
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見回りを初めて数時間。
特に問題は起きていなさそうだから、私は図書室に足を運んだ。
図書委員は王国七不思議、という話を読み聞かせすると聞いた。
本の読み聞かせなんて、誰が興味持つのかしら……?と思ったけれど、図書室には予想以上に人が沢山いた。
タイミングよく、ウィリアム様が本を朗読していた。
「そして悪魔は言った。『君が望む世界にしてあげよう。なぁに大丈夫。辛いのは最初だけだから。』」
何の話をしているのか、途中から入ったから分からないけれど、ウィリアム様の演技力が凄くて思わず聞き入ってしまった。
その横で、他の図書委員らしき人が、横で黒いモヤをだしている。魔法で出しているんだろうか。
「悪魔が彼に触れると、たちまち黒い煙が彼を囲い込む。」
なるほど、ただの朗読じゃなくて、話に合わせた演出を魔法でしているのね。
本当にその世界に入り込んでいるみたい。
……少し、怖いけど。
「それを見て悲しんだのは、彼を好きな女の子でした。彼女は、彼の一生懸命なところが好きだったのです。」
悪魔に魅入られてしまった男を、愛の魔法を持つ女の子が救うお話よね、確か。
そうそう、本編だと、実は……実は、なんだっけ?
あれ、なんか大事なことだった気がするんだけど、忘れちゃった。
ま、いいか。
しばらくウィリアム様の朗読を楽しんでから、私は図書室をそっと出た。
その後の見回りも特に変わったことはなくて、昼の学園祭は無事に終わった。
ウィリアム様と回りたいなーなんて思ったけど、声かけるタイミング逃しちゃったな。
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そして、夜。
魔法の光を囲んでダンス、なんとなく乗り気になれなくて、離れたところから眺めていた。
綺麗だな、って思っていたら後ろから物音がした。
「どなたか、そちらにいらっしゃるの?」
声をかけても、ガサゴソと音がするだけ。
気味が悪い。ここを立ち去ったほうがいい気がす……、
足を動かそうとした瞬間、私はその場に崩れ落ちた。
目の前に現れた恐ろしい、何かが私に襲い掛かってきていた。
ああこれが、領地に現れたとかいう、魔物。
もう間に合わないと思った私は、ぎゅっと目を瞑って、今からくるだろう衝撃に備えた。
……防御魔法くらい、覚えておけばよかったな。




