心臓がもたない
学園でのいわゆる"入学式"が終わり、皆が各々のクラスに向かう。
私も同じように足を進めていたが、ふと外の景色に目を奪われて、端に立ち止まり眺める。
桜が、咲いている。
「ウェヌスと共に」は建物はヨーロッパっぽいし、登場人物も悪役令嬢のヴァネッサとセバスチャン以外に黒髪はいないのだけど。
桜が咲いてるスチル、あるのよねぇ……。
たくさんの桜が咲いている元で、ヒロインが王子のアルバートと出会うシーン……綺麗だったなぁ。
二次元であんなに綺麗だったのだから、あの場所は現実だったらもっと綺麗なんでしょうねぇ。
確か学園の裏庭だった気がするから、後で覗いて見ることにしよう。
前世から桜は好きだ。
そんなことを考えながら桜をみていると、後ろから「よお。」と声をかけられた。
「ダビ。」
「俺、同じクラスみたいだ。」
「そうみたいね。」
「ウィリアムは、隣のクラスだってさ。」
「そうなの。」
ダビと同じクラスなのは心強いし、ウィリアム様とクラスが違うのはホッとした。
これから婚約破棄をしようとしていて、婚約破棄後も毎日顔を合わせなければいけないのは、私だって辛い。
「ダビは、仲の良いウィリアム様と離れて寂しいんじゃないの?」
「別に年中連れ添ってる訳でもないしなぁ……。アラベラこそ、寂しいんじゃないのか?」
「そんなことはないわよ。」
ニヤッと笑うダビに慌てて否定をする。すると、ダビが少し青ざめた顔をしている。
「どうしたの、体調がどこか」
「ベラ。」
「はいぃ?!」
声をかけてきた人物は、私の手を掴みそのまま手の甲にちゅ、とキスをしてきた。
「うぃ、うぃうぃりあ、ウィリアム様……手……。」
「僕はベラと違うクラスで寂しいのに、つれないなぁ。」
そう言うと掴んだままの私の手に、またキスを落とした。キャパシティが超えている。
「あ、あの、お戯れはおやめになって……」
「こんなの挨拶じゃないか。なぁ?ダビ。」
「そこで俺に振るのやめてくれないかなぁ……。」
隣にはいるものの、遠い目をしてこちらをあまり見ようとしないダビ。逃げずに現実を見て。この状態をどうにかして……。
「でも合同授業も多いみたいだから、その時はよろしくね。勿論、それ以外でも。」
「ウィリアム様、でも同じクラスの方と仲良くされるのが優先ですよ!」
「そんなことはない、僕はいつでも君を優先するつもりだよ。」
「わ、私たちの婚約はまだ正式にはっ……。」
「直に正式なものになるよ。」
笑顔なのに、怖い。
「そ、そろそろクラスルームに向かいません?あまり遅いとクラスメイトの皆様にご迷惑をおかけしてしまいますので。」
「……そうだね。じゃあ行こうか。」
そう言うとウィリアム様は私の肩を抱いて足を進めた。いやいやいや。
「いや、だからそのクラスルームにっ。」
「僕らのクラスルームは隣だよ?一緒に行ったら駄目なのかな?」
「駄目ではないですけど、肩が……。」
そう言うと、ウィリアム様は肩を更に引き寄せて、耳元で喋りかけてきた。
「ひゃっ?!」
「そんなに僕に触れられるのは嫌?」
「そういうわけじゃなくてっ!色んな方に見られてますし、ダビもいますし!」
「おいウィリアム、そろそろ勘弁してやれよ。アラベラこのままだと赤くなりすぎてそのまま爆発するぞ。」
流石に見かねたダビが声をかける。声はかけるが、一定の距離は保ったまま。
「流石に急ぎすぎたかな……?ごめんね、ベラ。許してくれる?」
「……婚約破棄してくれるなら許します。」
「じゃあ許さなくていいよ。一生許さずに僕の元に居てくれればいい。」
飽きさせないから、ね。と言葉を足してウィリアム様は私の頬をそっと撫ぜる。
「……ダビ、クラスでベラに虫がつくようなことは。」
「お前みたいな怖いやつが、隣のクラスにいるのに手を出せるやつがいるかよ。」
「目の届かないところならあり得るでしょう。」
今のところ虫が飛んでる様子もないのに、ウィリアム様は過保護ですこと。
ダビはダビでなんか見当違いな返答をしているし。
そんな会話をしていたらクラスルームが見えてきたので、ウィリアム様にご挨拶をしてクラスルームに入る。
もしかして毎日こんな感じなの……?私の心臓が持たない……。
私が婚約破棄とか言い出したからムキになってるのかしら。それなら、自然消滅狙えばよかった……。選択肢間違えたなぁ。
ダビに「お前は人のことを考えろ。周りを巻き込むな。」とか怒られたけど、私は私で精一杯ですが???
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