旅立ち
家族のみんなに見送られて、私は家から学園へと向かった。
「未来の旦那様と仲良くするんだよ!」
そんな声は聞こえなかったことにして。
王立ウェヌス学園。私が3年間通う学園。
「ウェヌスと共に」というタイトルでウェヌス王国のウェヌス学園て。乙女ゲームの制作チーム3徹のまま名前付けたりしてない?大丈夫?
ウェヌスとは愛と美の女神のこと。
前世だとヴィーナス、のが浸透してたっけ。
ウェヌス学園には魔法を使えるのであれば貴族でも平民でも入学が出来る。といっても魔法が使えるのは圧倒的に貴族が多い。だからヒロインは肩身の狭い思いをするんだけど……。
火、水、風、雷など魔法は様々な種類があるけど、一番貴重なのが愛の魔法。
愛の魔法……?何なの……?と私もプレイ当初思った。
要するに回復魔法のことだ。
何故、愛の魔法と呼ばれているかと言うと、その魔法は「真実の愛」を手に入れた者しか使うことが出来ないと言われているから。
勿論、素質もないと駄目なんだけどね!
じゃないとね、国中偽物の愛だらけになるってことだもんね!辛いね!
まあ当人同士が決めた結婚だけじゃないものね、私とかね。
ゲームキャラの中で愛の魔法を使えるのは(覚醒したのは)ヒロインだけなんだよね……。
しかも逆ハールートでは「真実の愛」を手に入れられないみたいで、覚醒はしない。そこになんとなく製作者のこだわりを感じたなぁ。
今私が生きてるこの時代でも愛の魔法が使える人の話は聞かないんだよね……。もしかしたら国家機密なのかしら?愛の魔法、貴重だから。
「アラベラ様、そろそろ学園に着きますよ。」
「そうみたいね。」
馬車に揺られながら、外を眺める。
学園には一人、お付きを連れていけるので私は勿論、ジゼルにお願いした。
平民には、王宮に仕えている人が一人付くのよね。
慣れない生活を支える、というのが表向きの理由だけど、実際は変な動きをしないか監視しているの。爵位を持った家の後継者とか沢山いるからね、念のためにね。
ヒロインはセバスチャンと名乗る口数少ない執事が付くんだけど、実は王子の腹違いの兄で……っていうのが分かるのがセバスチャンルート。
ウェヌスのお膝元の国でも王様は一途ではないんだなぁ……って遠い目になったわよね。
まあゲームの世界ですからね!
今の私にとっては現実だけど……。
そんなことを考えていたら馬車がゆっくりと止まった。
目的の場所に着いたみたいね。
馬車の中で軽く伸びをして、新しい場所へ入る覚悟を決めた。
ーこの3年間でウィリアム様にどうにか、私を見切って(婚約破棄をして)頂きましょう!
…….どうやって?ヒロインをいびる?
いや、ヒロインは孫の代に現れるんだってば。
というか、人をいびるとかキャラじゃないのよね……私。




