ウェヌスと共に
次の日。
部屋で朝ご飯を食べ終えて、一息をついていると、ノックと共にドアが開く音がした。
「アラベラ様ぁ!おはようございますぅ!」
「ミ、ミライ様?!」
「今日はぁ、私とお話ししたいんですよねぇ?」
ミライ様、元に戻ってしまった……?!
青ざめた顔をしていると、ミライ様がニヤリと笑う。
「なんちゃって。ビックリしました?」
「ビックリしますわ……!!!!」
一緒にいたジゼルもポカン、としていた。
「心臓に悪いことしないでください。」
「ごめんなさい。ここまでミライは嫌われていたんですね。」
「え、いやぁ、その……。」
「まあ、仕方ないです。さ、私は何処に行けばいいですか?」
サバサバとした受け答えに戻ったミライ様は、やっぱり話しやすい。
「じゃあ、図書室の……」
「ああ!あそこですね、分かりました。」
すぐに察してくれたミライ様は、タタタと駆け足で外に出る。
「あ、私ミライ様とお話ししてくるわね……。」
「はい、お気をつけて。」
ジゼルは少し心配そうな顔をしていたけれど、私は大丈夫よ、とピースサインをして部屋を出た。
久しぶりの勉強エリア。
ここなら密談しても周りから聞かれる心配は一切ない。
「アラベラ様もこちらのこと、ご存じだったんですね。」
「ええ、初めて来たときに利用したんです。」
「初めてでここを見つけるなんて、お目が高い。」
ニヤリと笑うミライ様は、とても楽しそうだった。
「そうねぇ、どこから話そうかなぁ……。」
私も記憶が戻ったばかりで、ちゃんと整理は出来てないのよね、とミライ様は言った。
いきなり言葉がフランクになったのだけれど、不思議と嫌悪感はなくて、むしろ心地が良かった。
「まず私がここにいるのが気になるよね。簡単に言えば、タイムスリップしてきた。」
「タイムスリップ……!この世界に、時空の魔法があることを知らなかったです。」
「うーん、あるんだけど、ないんだよね……私が特殊、というか。」
頭をポリポリとかきながら苦笑するミライ様。
やっぱり、主人公だけが許される能力なのかしら……。
でもゲームにそんなルートがあったっけ……。
「ということは、ミライ様は正規のルートをクリアして、二週目でなんらかの力でこちらに……?」
「いんや、多分この世界にn週目みたいな概念はないよ。私は一週目。」
「えっ……では、何故、結のリボンを……?愛の魔法の相手は……?それに、ゲームルートで過去に飛ぶストーリーってどうやって解除を……。」
あまりに驚いて、矢継ぎ早に質問をしてしまった。
そんな私にミライ様は、「ああ、先に言わなきゃいけないことがあったんだった。」と苦笑しながら言った。
「私ね、過労死したって言ったじゃない?」
「え、ええ?」
「ゲーム会社で働いててね、小さい会社だから色んなことやったよ。慣れないことばっかりで、最期まで慣れなかった。」
「そうだったんですね……。」
「外注できるお金もそんなにないから、乙女ゲームに詳しくない、安価で発注できる作家に都度シナリオを頼んでた。話が矛盾してるところもあって頭を抱えたわ。それをどうにかしたり。」
「え……。」
「乙女ゲームに悪役令嬢なんて殆ど出てこないのに!ラノベじゃないんだから、ってSNSにも書かれたわよ。」
ミライ様の話は止まらない。
最初、何の話を聞かされるんだと思ったけど、これって……。
「しかも、悪役令嬢の祖母が獄中死するってそんなの乙女ゲームに必要あった?!私はね、アラベラにも救済が必要だと思ったの。」
「あの、そのゲームって……。」
「えぇ、ウェヌスと共に、よ。」
ミライ様は私に礼をして、微笑んだ。
「前世でプレイしてくれて、どうもありがとう。私はこのゲームの製作者の一人よ。」




