解除スイッチ
待ちに待った放課後。
私はウィリアム様とミライ様に声をかけた。
「お話しがありますの。」
そう言って、裏庭へ連れてきた。
ギャラリーがいると、予想外のこととか起こりそうで嫌だった。
だから、なるべく人が居ないところに。
今から私は、ミライ様を叩く。
「私の婚約者に色目を使うのはおやめなさい!」
そう、これはヴァネッサの言葉。ニコラルートで発生するシーンよ。
その後ヒロインは、
「で、でも、私はこの方をお慕いしています!」
そう言ってニコラに抱き着くの。
ニコラは「もういい、ヴァネッサ、僕たちの関係を見直す時がきた。」
と、言うの。
そこでヴァネッサは「そんなことさせませんわ!」って言うんだけど、私は今回「分かりましたわ。」と素直に引く。
主人公が私をヴァネッサと誤認している?のだから、同じ言葉を言えばこの通りになるはず。
これで、いいのよ。
主人公ヒロインと結ばれれば、ウィリアム様が死ぬことなんてない。
少なくとも、未来の世界の攻略対象が死ぬルートは存在しなかった。
愛の魔法もあるんですもの。
ミライ様、どうぞウィリアム様を守ってね……。
ウィリアム様の顔を見ると、すこしだけ決意が揺らぎそうになるけど。
深呼吸をして、二人の方を向く。
「アラベラ様ぁ?それで、お話しというのはぁ……。」
きょとん?なんて擬音が付きそうな顔の首の傾げ方……。
落ち着いて、私は落ち着くのよ。
「え、えっと、ミライ様、わ、私の……。」
「?」
「私の、ウィリアムにくっついてんじゃないわよ!」
あっ!言葉完全に間違えた!はず、恥ずかしい……、あ、違、ここでビンタ、ビンタよ!
「え、えいっ!」
パッチーーーーーン
「えっ……。」
確かにビンタしたんだけど、私ごときの非力な力じゃ、ちょっと痛い?くらいかしら……って思ってたのに。
ミライ様、吹っ飛んだ。
ウィリアム様も一連の流れにポカン、としていた。
少しの静寂の後、私は事の重大さに気付いた。
「嘘?!ミライ様、私そこまでするつもりじゃ……。」
飛んで倒れたミライ様にかけよると、パチ、と目を開いて起き上がる。
「痛ぁ……もう、上手く飛べたのかなぁ……え?」
私と目が合うと、目を見開いて、手を口に当てる。
「え、うそ、うそうそうそ生アラベラ……えっめっちゃ可愛い綺麗ヤバイ……。」
「あの、あの……?」
「ヒッしかも後ろにウィリアムじゃん……やば、やばい……ウィリアラ尊い……。」
「あのぅ……?」
私に声をかけられたことにようやく気付いたミライ様は、顔を青ざめさせて、自分のリボンを勢いよく外した。
そしてそのまま、地面に向かって思いっきり頭をつけた。
「……今まで、大変申し訳ありませんでした!!」




