偽り物競争
「一位になった方、紙にはなんと書いてあったんですか?」
「髪色が桃色の生徒、と書いてありました。」
「桃色の髪色で私を思い出してくださるなんて……!」
あー、このやり取りもゲームで見た。
「桃色の髪って主人公しかいないから当たり前じゃん!」ってツッコミをいれた記憶があるわ……。
途中からの入学ではあるし、既に愛の魔法は持っているけれど、
ゲームルート通りってことなのね……。
でも、これだったら私は婚約破棄をされて、ウィリアム様は死なずに済むのでは……?
ならいいじゃない。そうよ。
元々婚約破棄をしたかったのだから、ウィリアム様に死んでほしくなかったのだから。
これで、いいの、よ。
その考えとは裏腹に胸が苦しくって、裏腹に涙が零れそう。
本当最近泣いてばかり。
いつでも婚約破棄をしていい、なんて言ったのは私なのに。
そんな時、頭上から声が降ってきた。
「おい、お前、顔上げろ。」
「へ?」
言われた通りに顔をあげると、息を切らしたダビがそこに立っていた。
思い切り腕をぐい、と引っ張り上げられる。
「来い。借り物競争だ。」
「え、私まだ足があまり動かない……。」
「ったく、仕方ねーな……。」
「ちょ、何をするの!」
「走れないなら持っていくしかねーだろ!」
ダビが私をお姫様抱っこのカタチで持ち上げて走り出す。
まってまって、これはまずいわ。
リタ様にだって、それに
「ウィリアム様に見られたらっ……。」
「うるさい、黙って運ばれてろ。」
「……。」
見事ダビが一位でゴール。
周りからかなり騒めいた声が聞こえてくる気がした。
ゴール付近には、さっきゴールしたばかりのウィリアム様も当然居て……。
「お、降ろしてっ。」
「お前、歩けるのか?」
「歩くくらいは、出来るわよ!」
むしろ視線が痛い。怖いくらい痛い。
今は足より視線だわ。
ため息交じりに降ろされた私は、ダビから一歩距離を置く。
「一位おめでとうございます!紙にはなんと?」
「あ、えーと、髪型が一本結びの生徒、と書いてあった。」
「私じゃなくてもよかったじゃない……。」
インタビュアーが去ったあと、ボソリと文句を言うと、
ダビが「お前しかいなかったんだ。」と、私に何か紙を渡してきた。
その紙は折りたたまれていて、開いてみると
「好きな人」
と書かれていた。
「えっ。」
「俺じゃ、ダメか?」
「何、ダビ、どういうこと……。」
「ずっと前から、好きだったんだよ。」
真っ直ぐな眼で見つめられて、私は動けなかった。




